ミュージカル「モダン・ミリー」観劇感想
こんにちは、雪乃です。今日はシアタークリエでミュージカル「モダン・ミリー」を観てきました!
モダンな女性に憧れカンザスからニューヨークに出てきた主人公ミリーと彼女を取り巻く人々のラブコメディ。ザッツ・ブロードウェイ!という超王道ミュージカル・コメディで、ジャズの要素が強い楽曲は明るく楽しくダンスも多く、とにかく最初から最後まで華やかなハッピーオーラ全開で、全身でミュージカルの良さを堪能できる作品でした。
本作で良かったのはやはり生バンド!オーケストラピットが舞台上に設置されているのでバンドメンバーが演奏している姿を見ることもできるし、何より音が下からではなく正面から来るので、真っ正面から躍動感あふれる音を浴びる感覚がとても楽しかったです。芝居と演奏が視覚的にも重なることで、より一層「音楽が物語を駆動していく」ミュージカルの良さが存分に生かされていました。
「モダン・ミリー」で主に使われているのがタップダンス。特にタイプライターを叩く音を座ったままのタップダンスで表現するのが面白かったです。ミリーのタイピングの速さをタップダンスのテンポの速さで表現するの、分かりやすいし何より観ていて面白かった!
朝夏まなとさん、というかまぁ様は私が初めて観た宝塚の舞台でトップスターだった方。退団公演の「神々の土地/クラシカル ビジュー」の宝塚大劇場公演のチケットが取れたため、初めて行ったムラ。そこでトップだったのがまぁ様でした。凜々しい軍服姿からショーで大羽根を背負ったあの輝きが忘れられず、退団直後の主演作である「オン・ユア・フィート!」も「モダン・ミリー」と同じシアタークリエに観に行ったんですよね。あの時のグロリア・エステファン役も大好きですが、唯一無二の明るさがミリーにぴったり!タップも歌も素晴らしかったです。玉の輿を夢見て就職先の社長にアプローチをしながらも、偶然町で出会ったジミーに惹かれていく過程はロマンチックながらもパワフルでエネルギッシュ。自分で人生を選択していくミリーだからこそたどり着く恋の結末は祝福に満ちていて、観ているだけで幸せになれるものでした。
夢咲ねねさんが演じるドロシーは佇まいも声もとにかくキラキラしていて、コミカルなシーンもキュート。ドロシーは当初「身寄りは無い謎のお金持ち」として登場するのですが、様々なシーンで見せる所作や佇まいの上品さがしっかりとラストにも繋がってくるのが良かった~~。グレイドンとのデュエットダンスの夢夢しさというか、2人だけの世界に持って行く見せ方がとにかく綺麗でした。
ミリーがニューヨークで偶然出会う青年ジミーを演じるは田代万里生さん。以前拝見したのは「マリー・アントワネット」のフェルセン役でした。
「第一印象が最悪な相手と恋に落ちる」という王道な設定でしたが、そこもカッコよく説得力を持って立体的な恋を表現できるのが田代ジミーのすごさ。声はもう安定の美声、そして圧倒的歌唱力がもう最高の一言。耳が幸せでした。
ミリーの就職先の会社の社長のグレイドンを演じるのは廣瀬友祐さん。「1789」のフェルゼン役や「るろうに剣心(松竹・梅芸版)」の斉藤一役などシリアスなお役でした拝見したことがなかったのですが、コメディ作品もめちゃくちゃ良いですね?!グレイドン、マジでずーーっと面白かったです。舞台映えする長身やスタイリッシュなスーツの着こなしなど、まさしく二枚目社長といったビジュアルとのギャップがすごかったです。深く包容力のある歌声も素敵でした。
あとキャストが出てから気がついたのですが、奇跡的に「マリー・アントワネット」と「1789」のフェルセンが揃ってるんですよね。なんならオランプもいるし。Wフェルセン、お二方とも最高でした。
有名歌手のマジー・ヴァン・ホスミアを演じたのは土居裕子さん。音楽座の代表作にして国産ミュージカルの金字塔たる「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」の伝説の初代お佳代です。「シャボン玉」を初演から観ている母から土居さんのすごさを聞かされて育った私が初めて土居さんの生歌を聴いたのが2015年のブロードウェイミュージカルライブ。「リトル・プリンス」の「シャイニングスター」があまりにも素晴らしくて泣いた記憶がありました。その後、東宝版「シャボン玉」のピア役を演じられたのですが、カーテンコールで「ドリーム」を歌ってくださって……!観ていないどころか生まれてもいない時代の音楽座版の初演の記憶がなぜかよみがえってきたような気さえしました。
で、話を「モダン・ミリー」に戻しますと。「世界でひとつのニューヨーク」は、たった1曲で世界的な歌手であるマジーのキャリアが立ち上がってくる圧巻のナンバー。とにかく歌声の透明感が素晴らしいことこの上ない。「玉の輿」を目指していたミリーに大切なことを教える役割を担っていることも含め、積み重ねてきた人生が見えてくるお芝居にも魅了されました。
ミリーとドロシーが滞在するホテルの主人であるミセス・ミアーズを演じたのは一路真輝さん。「オン・ユア・フィート!」ではまぁ様の母親役で共演されていました。
抜群の貫禄と歌唱力と存在感。身代金目当てにドロシーを誘拐するのですが、それでもどこか憎みきれない、独特の哀愁というか、おかしさのある哀しみを滲ませたミセス・ミアーズが魅力的でした。主演女優になる夢を捨てきれないミアーズが夢をつかめなかった理由について「才能が無かったからではなく近道をしようとしたから」と、かつてコーラスガール仲間だったマジーから指摘されてしまうところも含めて、すごく人間らしいキャラクターでした。
「アルジャーノンに花束を」でのお芝居が素晴らしかった大山真志さんは、ミアーズのホテルで働くチン・ホー役でご出演されています。ドロシーに一目惚れし、ミアーズに命じられて彼女の誘拐計画に加担するも、結果的にドロシーを救うことになって、ドロシーは彼との間に真実の愛を見つける。
同じホテルで働くバン・フー役の安部康律さんと共に、自然と愛嬌あるキャラクターが立ち上がってくる2人。ラジオで英語を学んでいたことが効いてくる脚本も秀逸。この2人が終始生き生きと描かれていて、ラストの大団円はこの2人あってのものだと思いました。
グレイドンの会社で働くミス・フラナリーを演じた入絵加奈子さん。「ミス・サイゴン」の日本初演でキム役を演じたことは知っていましたが、実際に舞台で拝見するのは今回が初めてでした。頼もしい、強い、面白い!な三拍子(?)揃ったフラナリー。ミリーに会いに来たジミーとのやりとりがとにかく面白かったです。
古き良きブロードウェイ・ミュージカルの息吹を感じさせつつ、テンポ良く洗練された小林香先生の演出は懐かしくも新しく、そして分かりやすい。ミュージカルの訳詞を多数手がける竜真知子先生の訳詞も楽しく、また「シスター・アクト」の来日公演を観たことにより、一層「日本語で海外のミュージカルが観られること」のありがたさを噛みしめる公演でした。
これぞ王道のミュージカル!という要素を詰め込んだ「モダン・ミリー」。舞台は1922年、おおよそ100年前の物語ではありましたがテーマが普遍的で、何よりキャストの生み出すキャラクターの立体感が、100年後の現代にも通じる「モダン」な物語を成立させていました。そして何よりも純粋に「楽しかったね~」みたいな感情で劇場を後にできる、これこそ「モダン・ミリー」の魅力だと思います。
とにかく楽しかった!!という感想で本日の記事を締めたいと思います。本日もお付き合いいただきありがとうございました。