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トレンカのかかとの穴をあて布で縫うおばあちゃん

ホームで電車を待っている時。
目の前にスマホ片手に立っているおしゃれ系女性のズボンの後ろのポケットから何やらビラビラ舞っているのが気になって近づいてみた。

ブランドタグのようなものだろうか。
おしゃれ系の書体でかつ英語でそれなりにかっこいい。
こんなイメージ↓

あえてのビラビラなのか、スマホや定期を取り出した時にたまたま出ちゃって恥ずかしいビラビラなのか判別がつかない。

「ちょいとお姉さん、出てますよ」

といって「あら、ありがとうございます」とお礼を言われるならいいが

「はあ?何言ってるのこのおばちゃん?」

見たいな目で見られたらこっちが恥ずかしい。
ということで、言うべきか言わざるべきか悶々としていると、電車がホームに滑り込んできて、おしゃれお姉さんはスマホから片時も目を離さず、涼しい車内へと入っていった。

ビラビラが気になりすぎて、お姉さんを追う。
お尻ばっかり追いかけていると変態と思われるかもしれないため、時折視線を外す。

もしあのビラビラが恥ずかしいバージョンだったら、おせっかいおばちゃんが言うに決まっている。

が、車内にいる人は寝てるか、スマホを見てるかどちらか。
ビラビラお姉さんも座ってしまったため、誰もビラビラに気づかない。そして、お姉さんはビラビラさせながら颯爽と降りてしまわれた。

ビラビラは今のトレンドなのか、誰か教えてほしい。

若い時というのはトレンドに敏感で、洋服も毎年買いたくなるため、よくデパートや百貨店に足を運びショップ店員さんの着こなしやファッション雑誌を立ち読みしたりして、トレンドを追っていたが、テレワークでおしゃれ着を着る機会もないし、そもそも買い物いにいくのも面倒なお年頃になり、何が似合うのかもよくわからないため、オーソドックスなデザインの服をお気に入りのブランドで買って何年も着まわしている。

そんなことを懐かしく思い返していた時に在りし日のおばあちゃんを思い出した。

とここで、物忘れ勃発。
あれ、レギンスじゃないな・・・わたしが言いたいのは。
と、もうなくては生きていけないグーグル先生に
「レギンス かかと 穴あき」

と検索したら出てきた答え

「トレンカ」

さすがでございます。トレンカの話をしたかったのよ~とグーグル先生にお礼を言う。

ミニスカートやショートパンツ、ワンピースのお供に、さらに日焼け予防に、また黒効果で足ほっそり効果もあったレギンス。
トレンカよりも足の甲まで覆ってくれるからか足長効果もあった。
さほど美脚ではないゆきんこにとっては、ショートパンツやミニスカートを堂々とはけるアイテムとして重宝していた。

そういえば、海やプールなどのリゾート地でしかトレンカ見なくなったなというのはおいておいて。

実家に帰省時も、東京から帰省したおしゃれ女子を演出するべくトレンカスタイルで帰省。

するとおばあちゃんが目ざとく

「穴があいたストッキングなんてはいて、恥ずかしいべ。金ねえならばあちゃんが買ってやる」

ときた。

そのころはちょっととんがってたので

「はあ?何言ってるの?」とスルーしたら、その余波がおかあさんにいってしまい

「ゆきんこさ、ちゃんとしたかっこさせてやれ」
といわれてしまったらしい。娘のせいで嫁姑問題勃発である。

お母さんはトレンカではなくレギンス派だったが、トレンカも知っていたため、普通に洗濯をしてくれた。

洗濯をとりこむのはばあちゃんの仕事。
もちろんたたむのもお手の物。

キレイにたたまれたレギンスをなんとも思わず、わたしの部屋に届け、さて、こちらは夜の飲み会に行くべく着替えるかなと、洗濯したてのレギンスに指をいれ、うんしょうんしょと巻き上げ、履きやすくする。

すると、うん?なんか生地の質感が違うぞと広げてみると・・・

なんじゃこりゃ~(←松田優作状態)

なんとあろうことか、かかとの部分に丁寧にあて布までしてキレイに穴を埋めてくれてるじゃないか。

「おかあさ~~~~~~ん」

とバタバタと台所にいき、黒いあて布がキレイにあてがわれたレギンスをみて、噴出した。

すると、おばあちゃんがしたり顔で登場。

「おめえ、またもったいねがって買わね~と思ったがらぬってやったど」

これを余計なことと言わずしてなんという。

きっちりがっつり丈夫に縫っているもんだから、あて布を外した後、穴だらけ。
しかもあろうことか持ってきた3枚ともあて布をつけちゃったもんだから、手に負えない。

お母さんのレギンスを着るべきか、生足で悩殺するか・・・
迷った末、笑いを取りに行くことにした。

かくして、あて布つきのレギンスは予想通り笑いを誘い、なごやかに宴会は終了。

恥ずかしいったらありゃしないと思ったものの、友人たちの笑顔も見られたし、それより何よりあて布が丈夫でふかふかしてたからとにかく歩きやすいのだ。

とはいえ、20代の多感な時期の女子が東京であて布つきのレギンスをはくわけにもいかず、実家に置いて帰ってきた。

もう20年も前のレギンスで、しかも、「もう捨てて!」と言い放った幻のレギンス。
物持ちがいいお母さんならあるかな~と電話してみたら

「ああ、そんな事件もあったわね。あんた捨ててっていったから捨てたわよ。おばあちゃんものすごい悲しそうだったけど」

もう顔見て謝れないけど、ばあちゃんのやさしさに気づかずごめん。
とビラビラ女子を見ながら、自分がおばあちゃんの域に達しつつあることを自覚する。

今日も読んでくれてダンケシェーン(ドイツ語)

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