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イギリスで3度のロックダウンとワクチン接種に思う

こんにちは!
2月下旬になり、私の住むイギリス、オックスフォードでもだいぶ日が長くなってきました。今年の冬はロックダウンの影響もあり、永遠に続くかのような暗く寒い冬という感じでしたが、今週に入って気温が和らぎ、少しだけ春らしい光が注いでいます。

世界がコロナ禍に入ってもうすぐ1年になります。今回は、振り返りの備忘録として、私が経験したイギリスの「コロナ禍」「ロックダウン」について書いてみようと思います。


イギリスで3度のロックダウンを経験して

日本の報道などで「ロックダウン」などと聞くと、とても物々しい響きなのではないかと思います。でも現地で生活していると、だんだん慣れも出てきて、以外とそれが前提の日常になっています。ただ、みなさんご存知の通り、今回のパンデミックは、置かれた環境によって、その影響に大きな個人差があると思います。住む国、年齢、職業、家族構成、住まい、地域、ありとあらゆる要素があり、各々の状況によって経験されているコロナ禍は全く違うと思います。ここでは、あくまで私個人の体験ということで読み進めていただければ幸いです。

1回目のロックダウン

感染者数がじわじわと増える中、ロックダウン前、最後にロンドンに行ったのは昨年3月上旬。今では考えられない光景ですが、地下鉄の車両の中でひしめき合い、長いエスカレータを降下する人の波を見て、戦慄を覚えた記憶があります。その頃は、勤務しているオフィスに行くのもだんだん恐くなっていました。そんな中、3月下旬にイギリスが最初のロックダウンに突入します。前夜に、突然ジョンソン首相の会見がテレビで流れ、それを見ながら「これから何が起こるんだろう?」と戦々恐々としたものです。今思えば、最初のロックダウンが一番不安で、気持ち的には一番キツかった気がします。連日のように報道される感染者数、死者数、品薄になるスーパーや、急によそよそしくなった人々。何より、突然奪われた自由に、誰もが混乱し、苛立ち、不安に襲われていました。私も在宅勤務になり、保育園も閉鎖になったので、未就学児と過ごす日々になりました。6月に保育園が再開されるまで約3ヶ月間、24時間子供と過ごす日々。この頃の私は、仕事も含め自分のことはほとんど何も手につきませんでした。それでも、職場の上司の多大な理解のおかげで、なんとか乗り切ることができました。仕事が思うように進まないことを「申し訳ない」と送ったメールに、「非常事態なんだから。むしろ、今は子供と過ごせる時間を神様からもらったと思って、それを優先して楽しんで。」という返信がきて、涙が出ました (今はまたその上司の寛大さにあやかって、大学院で学びつつ仕事を続けさせてもらっています。)

2回目のロックダウン


6月から9月くらいにかけて、規制がだいぶ緩和され、レストランやカフェが再開し、また皆が気軽に外で会うことができるようになりました。まだウィルスは消えてなくなったわけじゃなかったけれど、元の生活が戻ったような日が続きました。しかし10月頃から再度じわじわと感染者数が増え出します。イギリス人にとって大事な家族行事「クリスマスを皆で集まって過ごすために」と、また11月初旬から一時的なロックダウンに入りました。しかし、この時点ではまだそれほど危機感はなかったように思います。ちょうどその頃、ワクチン開発成功の報道があったことで、みんな希望を持ち始めていました。しかし、12月に入って状況は一変。新変異種の登場です。ただ、イギリスでは12月8日に世界に先駆けてワクチン接種が開始されたこともあり、希望と同時にみなの気持ちに大きな緩みが出たのでしょう。「せめてクリスマスは」と家族で過ごした人たちも多く、それが1月の悲劇へと繋がってしまいます。ちなみに、10月から全面オンラインで開始した私の大学院ですが、実は当初、11月から週一回は対面キャンパスで授業を行う、という計画があったのです。しかし、2回目のロックダウンに入った時点で、政府のガイドラインに従いその計画も立ち消えになってしまいました。

3回目のロックダウン

クリスマスの翌日から、イングランドも3回目の厳しいロックダウンに突入しました。今回は、1回目にならって、生活必需品のお店以外は、全て閉鎖。1月から学校も閉鎖となりました。イギリスでは全国でワクチン接種がスタートしていたものの、一時期は、毎日の感染者数が6万人を超え、コロナによる入院患者が全国で3万人を超えるという事態になり、絶望的な報道が連日のように続きました。ここにきて、私の周りにも「コロナ陽性だった」という人たちが出てきて、感染の凄まじい勢いを身近に感じることになりました。しかし、一番最初のロックダウンに比べると、みんな相当心の準備ができていたのも確かです。私も最初ほどの動揺はなく、気をつけながら粛々と生活するしかない、と覚悟ができていました。この頃までには「スーパーしか行くところがない日々」にだいぶ慣れていました。スーパーにないものはオンラインで購入できるので、特に問題はありません。むしろ、どこかに行く用事や、誰かと会う約束、各種週末のお出かけイベントなどがない静かな日々の中で、自分の生活や学習目標に集中することができ、有難い面もありました。そして3回目のロックダウンでは保育園が閉鎖にならなかったことが幸いでした。しかしそんな中、子供が保育園で発熱してしまい「コロナ検査で陰性証明されるまで登園禁止」になるという苦い経験を2回もしました(園内で1件でもコロナ陽性者が出れば、保育園全体を2週間閉鎖しなければならない)。しかし、イギリスではコロナウィルスのPCR検査を無料でオンラインで予約し、近所の検査センターで簡単にできます。予約は即日でも取れて、結果も72時間以内にメールで知らされるため、幸い事なきを得ました。ただ検査結果が出るまでは、家族全員が自主隔離です。その間に、いたずらをしていた子供が怪我をしてしまい、救急外来に連れて行かねばならず。。。という笑えないオチもありました。しかし、コロナ禍で医療機関が逼迫していていると言われていたものの、子供の怪我への対応はとても丁寧でした。私自身まさに感染者数ピークの時期に、自分の不注意で手に火傷をしてしまい、かかりつけ医(GP)に電話をすると、「すぐに患部の写真を送って」と言われ、それを見て5分で折り返しの電話をしてくれました。そして「すぐにクリニックにいらっしゃい」と予約をとってくれ、その日のうちに手当をしてもらえました。

「ロックダウン」などと聞くと、人々がどんどん感染し、家に閉じこもって戦々恐々と青ざめて生活しているようなイメージがあるかもしれません。でも、あくまで私個人の感想ですが、子供が学校に行けて、日常の生活必需品と医療が受けられるのであれば、ロックダウンとはいえ、意外に生活に不自由はないと感じています。相変わらず、私の在宅勤務も続いており、大学院の後期の授業も引き続きオンラインで進められています。今では、近所の人たちが、マグカップを片手に通りをはさんでおしゃべりしている姿や、お年寄りの一人暮らしの家のドアノブに、スーパーの袋がぶら下がっている光景が当たり前になっています。

Roadmap

今週月曜日(2021年2月22日)、イギリスのジョンソン首相が、現在3回目のロックダウンにあるイングランド地方における規制の「緩和計画」を発表しました。これはイギリスでは「Roadmap」と呼ばれ、今後6月までの間に、段階的に規制を解除していく方針が示されたものです。具体的には、4段階に分けられています。まず第1段階が3月8日に学校再開からスタート。それから5週間ごとに次の段階へ進み、最終的には6月下旬までに、社会・経済活動をほぼ正常化することを目指す計画です。それと平行して、現在イギリス全土で、大規模なワクチン接種が急速に進められています。2月下旬の現在、全人口の1/4近くの成人が、第一回のワクチン接種を完了しているそうです。今のところ医療従事者、重症化リスクの高い方、65歳以上、介護施設の入居者や職員など、まだ対象は限られています。しかし、イギリス政府は7月末までに全成人へワクチン接種(少なくとも1回接種)を行う予定だそうです。

ワクチンがもたらしているもの

私の周りでも、あんなに天気の話が大好きだったイギリス人が、今はまず挨拶代わりに「もうワクチン接種したか?」を一番の話題にしています。私の住む場所は医療従事者の方が多いので、けっこう若い人たちでも、1回目のワクチン接種を済ませている人が少なくありません。ワクチンを接種した人は、明らかにリラックスしている感じが伝わります。最近では「コロナ禍が終わったら一番に何がしたいか?」などという話題もチラホラ見聞きするようになってきました。先日も、スーパーで二人のご高齢者がマスクをしているとは言え、肩をつつきあって高らかに笑って話している光景を見て、反射的に一瞬ギョっとしてしまったのですが、「あぁワクチン接種したんだなぁ」とすぐにわかり、何となく微笑ましい気分になりました。


一般人の私には、いつワクチンの順番が回ってくるのかわかりませんが、緩和計画も含め、あまり期待しすぎず、静かに待ちたいと思っています。個人的には、まだまだ何が起こるかわからないぞ!と思っています。また、皆が期待するほど「通常の生活に戻る」ということに胸が踊ることもありません。「通常の生活」が何だったか?もうあまり覚えていないというのもありますし、コロナ禍でもたらされた良かったことは、続いてほしいとも感じます。でもこの1年でわかったことは、「普通」「日常」というのは、あくまでその時代や状況の中で「一時的に当たり前と思われている状況」なのであって、普遍なことも、戻らなければいけない日常などというものも、無いのだということです。これからも、目の前に起こったことに対して、変えられないことは受け入れた上で、何が自分や家族にとって最善なのか、落ち着いて前に進んでいきたいと思います。

以上、私なりの簡単な3度のロックダウンの覚え書きでした。


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