『冬の終り』Song by 松任谷由実

もう少しで卒業シーズン。
卒業がテーマの歌は数知れず。

そしてユーミンの卒業ソングといえば『春よ、来い』が取り上げられる事が多いですね。

1994年、NHK朝ドラ『春よ、来い』の主題歌としてヒットしました。

でも、私としては1992年の『冬の終り』の方が好きです。

フジテレビドラマ「その時、ハートは盗まれた」の主題歌でした。内田有紀さんと一色紗英さんの女の子同士のドキドキ学園もの?だった気がします。
私はまだ小学生だったので、一応見てはいた気がしますが、多分そんなに真剣に見入ってなかったのかも。
『冬の終り』が主題歌ということも忘れていました。

数年後、兄が持っていたアルバムでこの曲を聴いて、好きになったのは中学三年の時のこと。

歌詞が…あまりにも…どんぴしゃ過ぎて…

まるでユーミンが私の事を書いてくれたんじゃないかと、あり得ないのに錯覚するくらい。

ドラマの主題歌だったので、本来は女の子同士の歌詞なのかもしれませんが、男女の話としても充分読める歌詞。さすがです。

まず出だしの部分で心をつかまれる。

"帰り支度の教室で ふいに手紙を渡された
いつから 口もきかない私達 
もう長いあいだ"

"試験休みが明けたなら あやまりたいと思ってた
あれから 顔を合わせることもなく
卒業してしまった"

あぁ、もうここだけでぶわっといろんな情景が浮かぶ。想像を掻き立てられる。まるで映画の冒頭部分ではないか。

ドラマの内容を覚えてないからこそ、私はこの歌詞を自分にすっかり投影してしまった。

中学三年の時、帰り支度の教室で、友達を経由して手紙を渡された。別れの手紙だった。すでに話も出来なくなっていた私達。

本当はちゃんと向き合って話をしたかった。
でも、その前に背を向けあってしまった私達は、そのまま、お互いの顔さえも見ることもなく、卒業してしまった。

そして、他の歌詞も共感だらけなんですが、
最後にくる歌詞

"何を綴っても うそになりそうで
返事を出せず月日は流れ
なぜかしら どこからか ふと蘇る"

この部分は、また数年後になって共感したんですが、しかも私目線ではなく、相手目線として。

私、高校に入ってから、相手に手紙を出したんです。

背を向けたまま卒業してしまったけれど、あなたがいたおかげで私はたくさん救われたこと。あなたと過ごした日々は本当に宝物だということ。ありがとうとごめんね。そして、私はやっぱりあなたが大好きなんだと思う。

というようなことを書いたと思う。下書きが残っているわけではないので、何を書いたかは完全には覚えていない。

でも多分、何か相手に答えを求めるような書き方をしていないことは覚えている。
あとになって反省したから。

あんな手紙もらっても、返事の書きようもないよなと。

そう、相手から返事は来なかった。

だから私はしばらく、
「そりゃそうだよな。私のことなんてもう忘れたいよな。ていうかもう忘れてるよな。関わりたくないよな。あんな手紙迷惑だよな。気持ち悪いよな。すぐ破って捨てられたよな。」なんて、手紙を出したことを超絶後悔していた。

「もう一度付き合ってほしい」とか、「話がしたいから会いたい」とかなら、「無理!」ってはっきり返事出来るだろうに、過去の思い出を綴り、感謝され、やっぱり大好きだと思う、と言われても…

「で?」
「どうしてほしいの?」

って感じだよなと。

私も忘れようと思った。

手紙を出したことも。

すべて忘れてしまえと思った。

でも、相手と同じ高校に行っていて、中学時代も私の恋の相談相手だった友達から聞かされた。

「手紙が来たって言ってた。どうしようって言ってきたから、ちゃんと返事書きなよって言っておいたんだけど」

とりあえず、すぐに破って捨てられてはいなかった。どうしたらいいか、少しでも悩んでくれていた。

そして、あいつのことだから、きっと、返事を書こうとしたけど、なんて書いていいかわからなくて、そのまま出せずじまいになってしまったんだ。

そうだ。私はあいつのことならよく知ってるじゃないか。

もう一度やり直す気はない。高校も離れて、きっとまたうまくいかないだろうから。でも、付き合ってくれとも言われてないのに、付き合えないっていうのもな…と、そんな事を考えていたのではないかと想像する。

そして私は思うんだ。
きっとあいつはいまだに手紙を持っていてくれてるんじゃないか。

私の希望的妄想でしかないけれど。
実家の押入れの段ボールの中の奥のほうに。

私はいまだに持っているから。
あいつからもらったもの。
手紙も、ガラクタみたいなものも、全部。

私とあいつは似た者同士だから。

ラストの歌詞はこう続いて終わります。

"あの頃の私達
同じだけ楽しかった"

この「同じだけ」というのは、

ずっと、

傷つけたり、
迷ってたり、
淋しかったり、
悩んでたり、
不安だったり、

そんな歌詞が出てくるんですが、

それらと同じだけ、楽しいこともたくさんあったということ。

最後は、結局楽しかった思い出が勝つんですよね。

辛かったり悲しかったりで、泣いたこともあったけど、苦しくなったこともあったけど、後悔だらけなんだけど、やっぱり、ただただ二人でくだらないことでふざけあって、笑い合ってた日々が、すべてを上回る。

そういう歌。だと思う。

悲しい別れの歌とか、でも前向きになろうねとかいうわけでもなく。

ただただ、楽しかったねっていう歌。

楽しかったことだけは、忘れないでっていう歌。

そこにだけは、なんの後悔もないから。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?