不思議な夢

ある日見た、不思議な夢。
いつものように、猫と遊んでいる夢だった。
けれど、その中の一匹の猫は、
見たことの無い姿をしていた。
黒いモヤがかかったような、姿形が
はっきりしない存在。
わたしはその子を他の子と同じく、
愛おしそうに撫でているのだ。

不気味な姿のはっきりしない存在だけれど、
わたしはその子を「猫」だと認識した。
他の子たちよりも明らかに小さく、
生まれてからそんなに経っていない子猫。
どんな姿をしているかも分からないのに、
その子が可愛く見えてしょうがない。
可愛がっているのは自分なのに、
なんともいえない不思議な気分だ。
その子の名前を呼んでいるのに、
声を発しているのはわたしなのに、
自分の声だけが聞こえない。
この子猫は、なんて呼ばれているのだろう。
なぜ、猫だと分かるのだろう。
なぜ、こんなにも可愛がっているのだろう。

日常のようだけれど、いつもとは少し違う
日常の風景。

その謎は、すぐに解決した。

出会いは突然のこと。
知り合いが猫を拾ったのだ。
その子を見た瞬間、なぜか分かった。
この子は、うちの子になるのだと。

わたしの予想を決定づけたのは、
子猫の行動。
わたしの姿を見たその瞬間、
元気に鳴き始めたのだ。
わたしの指を吸い、わたしの腕に登り、
妹と母の服をおしっこで濡らした子猫。
知り合いもその行動を見て、
子猫をわたしたちに任せた。

綺麗な声で元気に鳴くその子猫を、
わたしたちは「奏(かなで)」と名付けた。

ミルクをあげ、トイレの練習をさせ、
お世話をしていた時は初めて子育ての
大変さを知った。

奏がある程度大きくなり、1歳を迎えたある日。
それはいつもと変わらない、日常の風景。

あの日見た夢と全く同じ時間、天気だった。
奏がわたしに体を擦り寄せ、いつものように
綺麗な声で鳴くのだ。

その瞬間、夢のことを思い出した。
他の猫たちがいる場所も、私が着ている服も、
奏の行動も、全てあの夢と同じ。
あの時の不思議な夢は、奏が我が家に
来ることを指していたのだ。

あの時わたしが愛おしそうに撫でていた
不思議な存在は、奏だったのだ。

奏が我が家に来ることは、本当に
運命だったのかもしれない。
たとえただの夢だとしても、わたしは
そう信じたい。

今日も、奏は元気に遊び、
綺麗な声で鳴いている。

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