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「百鬼夜行プロメッサ」感想

2023年10月13日(金)〜2023年10月15日(日)に全5公演が行われた、劇団物語研究所の第5回公演「百鬼夜行プロメッサ」の千穐楽公演に参加しました。

第4回公演「ガラクタ姫とアポストロフ」に続き、アクタリウムのみかりん(福尾美佳さん)が出演されるということだったので、早い段階からチケットを取っておりました。

劇団物語研究所の公演には、多くのギミックがあり、それが同劇団の最大の魅力と言ってもいいかもしれません。
通常の観覧席以外に「参加席」「ライト参加席」というものがあり、お客さんも演劇に参加するというものになっております。
私は前回公演もですが通常の観覧席で参加しました。
自身が演劇に参加するという体験は唯一無二のものですし、とても魅力的なものではありますが、映画にしろ演劇にしろ、俯瞰の視点でストーリーをしっかりと追いたいなという部分が大きく、敢えて観覧席で参加しました。

まず、エントランスから、物語の世界観に誘ってくれる演出が嬉しいです。
物販カウンターのことを「社務所」と呼んだりですね。
劇場内に入ると、大きな鳥居と1人の妖怪が迎えてくれます。
その後の開演前の諸注意や前説も、キャストの方々が物語の役で行ってくださり、開演前から気分を物語の中に誘ってくれます。

開演すると主人公・武良がどういう人なのかが描写されていきます。
朽嵬祈(きゅうげき)神社の巫女に狸の妖怪・ポン…ヴォンダッと狐の妖怪・斎狐が登場してオープニングへ。
このオープニングが凄かった!
全キャストが舞台狭しと舞い踊る、どことなくアニメ的なハッタリの効いた派手さもあります。

オープニングが終わると、朽嵬祈神社の妖怪パート。
みかりん演じる枕返し(蕎麦殻)がいよいよ登場。
いいなぁ……我が家にも枕返し来ないかなぁ……。

その後も美夜子パート、武良パート、巫女パートと、場面が変わりながら物語が進行していきます。
参加席の方々が参加する妖術のパートや玉入れ……御霊流しに、客席全員が手振りで参加する盆踊りなどもあり、物語研究所の公演らしさが出てきます。
その中で行方不明になった陰陽師・深月と、封印された化物・千斬の存在が語られます。
枕返しがヴォンダッをバシバシ叩くシーン。羽毛枕で一撃→蕎麦殻枕で一撃→羽毛枕返しの平手打ち→蕎麦殻枕返しのグーパンチの流れは「枕使わずに直接攻撃w」と笑ってしまいました。
(グーパンチについてはみかりんから、千穐楽で最後だからということで、グーパンチを提案して採用されたとのことでした)

ストーリーが進むと、武良や燕、ヴォンダッに斎狐、枕返しと猫又が、参加席、ライト参加席の人たちを連れて客席外のロビーへ。
そう、分岐です。
今回は客席によって観れる場面が変わるという分岐の仕方だったのです。
観覧席の私は、宗石、美夜子、呑鬼の場面に。
ロビーで展開されている台詞が漏れ聞こえてきます。
この仕掛けは複数回観劇したくなる仕掛けです。
(物販で販売されていた台本で、武良側の場面を読みましたが、中々にキーとなる展開になっていた模様)
こちら側でも物語の核心に迫ることが描写されていきます。

そしていよいよクライマックス、千斬をみんなでなんとかしようという展開も、武良が千斬が仕込んでいた罠にかかり、燕と呑鬼に分断されていた千斬が復活してしまうという展開に。
ここからの大石さんと久木田さんの掛け合い、千斬となった燕、呑鬼を2人で演じるのです。
千斬の圧倒的な力の前に万策尽きたかに思われた時に現れたのが、朽嵬祈神社の巫女です。
封印の踊りを会場全体で踊り、千斬を封じることに成功するのです。

ここからが私がこの百プロで1番のシーンだと感じたところです。
千斬を封じたことで陰陽師・深月の意識が戻るのですが、この深月を大石さんと久木田さんが、完全ユニゾンで演じるのです。
2人の呼吸が合っていないと成立しない、とても難しい演出だと思います。
撮り直しが出来ない、その場限りの舞台で、これはとてもチャレンジングだなと。
バトルシーンの殺陣も派手で見応えがありましたが、自分にとってはこのシーンが1番です。

そしてフィナーレ。
巫女の好みがヴォンダッで、斎狐に対してすごく塩なのは笑いました。
最後は笑顔でエンディング。
観終わって多幸感を感じる作品でした。

主人公・武良を演じる政田圭敬さんの演技がとても気持ちよくて、武良の元気で向こう見ずで危なっかしい、そんな感じがありありと伝わってきて、どんどん物語に引き込まれていきました。
もちろん、他の人物もキャラが立っていて、それに拍車をかけてくれました。

また、劇場の至る所から役者が登場する演出は、自分が物語の中にいるという気持ちを高めてくれます。
至る所で演技が行われているので、目が足りない!といった感じでした。
だからこそ、複数回公演があったら、次は別のところから観てみようとか、別の視点で観てみようとか、そういう楽しみ方が出来るんですよね。
これこそが、演劇の魅力であり醍醐味ですね。

カーテンコールは拍手が鳴り止まずにトリプルカーテンコールまで。
新型コロナウイルス感染症流行による無期限延期から、3年を経ての公演。
それを当時のキャストのままで上演にたどり着けたのは、この作品に携わるみなさんの情熱の賜物だと思います。

私は演劇を観ることから遠ざかっていましたが、劇団物語研究所の第4回公演「ガラクタ姫とアポストロフ」で、みかりんが主演を務めるということから、それをきっかけに、久方ぶりにまた演劇を観るようになりました。
みかりんがきっかけではありますが、舞台をまた観たいと思わせてくれたのは、劇団物語研究所の作品の魅力のおかげだと思っています。

最後に「百鬼夜行プロメッサ」というとても語感が良いタイトル。
観劇後に調べるとプロメッサ(promessa)とはイタリア語で「約束」という意味らしいです。
なるほど。あの物語に「百鬼夜行プロメッサ」というタイトル。全てはこのタイトルに帰結するのだなと。

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