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「性別「モナリザ」の君へ」、1巻レビュー

しばらく、難しいお話しが続いていたので、漫画のレビューを、の件です。

 さて、まずは、性分化疾患(インターセックス、DSDs)を真っ正面から扱った、六花チヨ先生の、「IS」(注:どっかの、インフィニット・ストラトス、じゃないですよ!)とか、「ジェンダー・コード」とかをレビューしようかと思ったのですが、それでは普通(?)なので、2018年から発刊されており、最近ようやく8巻でひとまずの完結をした、

性別「モナリザ」の君へ

(吉村旋先生)

を、1巻から順次レビューしてみようかと。あ、ネタバレありなので、見たくない方は飛ばしてください。

画像は、楽天kobo版(電子書籍版)の同書籍より、タブレットで表示しているところを写真撮影して引用しています。

(気に入った書籍は、実際の本と、電子書籍版と、両方買うスタンスで、実際の本は本棚にあり、本棚まで取りに行くのが面倒だったので、電子書籍を写す方法で)

このマンガの舞台では、人間は12歳までは無性別で過ごし、12歳を迎える頃、自分自身がどちらの性別になりたいか、その天秤が触れた方に次第に身体が変化していき、やがて男か女になります。

しかし、このマンガの主人公は、その「普通」がないまま、何も変わること無く、18度目の春を迎えた人です。つまり、無性別の身体のまま、18歳を迎えた。普通は12歳で性別が男性か女性かわかれるところ、まだ無性別なわけです。

では、このマンガの、「モナリザ」はどこから来たか、それは、

絵画「モナ・リザ」が、実は、半身は男性像を、半身は女性像を指しているのでは、ということから、来ているようです。

 なお、性分化疾患(インターセックス、DSDs)を、両性具有と間違えている方が、現実にも結構いらっしゃいますが、医学的に両性具有は成り立ち得ない(双子が完全にくっついて出生、とかの特殊事例を除いて)ので、実際のところは、「両性具有」どころか、「両性具無」なわけですが、「両性具有」は「幸福なる統一体」なら、「両性具無」な私とかはどうなるのかというツッコミをよく入れるわけですが、本主人公も同様のツッコミを入れていて、

と、ちゃんと出てきます。ホント、両性ともの性機能がない、「両性具無」は、何一つ持たない者は、何になるんでしょうか。

 で、このあと、主人公の古くからの友人2人で、1人は男性に性別が分かれ、1人は女性に性別が分かれた人から、それぞれ告白される、という流れとなります。

 このあたり、ジェンダー的にも、「性別」というものについても、深く考えさせられる描写が続きます。

 うち、男性の友人は、とある理由があって、告白を急いだようなのですが、それは本書を読んで頂ければ。

 で、2人から告白された主人公は、その後、男性・女性ホルモンが両方とも、少しながら上昇するという、いままで見られなかった現象が起きるようです。

 それに対する、「無性別科」(という診療科があるのがすごい世界ですが)の医師で、古くからの友人2人のうちの1人の兄に当たる人が、

と、「成人の身体がどれほど変化するのか、未知の領域ではあるから断言はできないけどね」と言ってます。

これこれこれこれ!!

これ、私も、治療を開始するにあたって、もうある程度身体ができあがっているので、どれだけ性器とか性機能が発達するかわからないけどね、と言われ、最近、結局のオチとして、10年以上男性ホルモン補充療法や、性腺刺激ホルモン補充療法をしてきたけど、性器とか性機能が発達しなかったのは、もうある程度身体ができあがっていたので、身体が反応しなかった可能性も大きいね、となった、まさしくそれです。

あと、このマンガの1巻で、これこれこれこれ!!となったのは、この部分。

 このあたり、要検証ではあるのですが、私の場合は、性分化疾患(インターセックス、DSDs)に伴ってかどうかはわかりませんが(性分化疾患でも普通に「性的欲求」が見られることも多い)、私も「性的欲求」(端的に言うと、性欲的なもの)は一切無く、いままで自分でナニもしたこと無いですが、なにか?と医師の前で普通に言って、精液検査してみるかと言われたときに、今までナニをしたこともなく、当然精液が出てきたことも無いのに、どうやってするの?と逆に医師をビックリさせているのですが。

 で、その「性的欲求」が無いのに伴い、同様に私も、「恋愛感情が芽生えてはおらず、それへの理解もあまり持ち合わせてはいない」のです。これも、現実世界では一対一では無いことは往々にしてあるようですが(私には理解困難なゾーンなのですが)、そうなのです。これを、SOGI(性的指向・性自認)の1つ、セクシャリティ(性的指向)としての「アセクシャル」(海外ではasexuality)と表現できるかなと思うのですが、このあたり、また私自身「アセクシャル」かつ、日本でも最古に近いくらいくらいのアセクシャル公表者なので、別にトピックにして書きたいと思います、そのうち。

 この「アセクシャル」(asexuality)では、今は、「恋愛指向」と「性的指向」を分けて考えることが多く、このマンガの主人公のように、恋愛についてもわからず(指向無し)、性的な方向性も無い場合、そして私も同様なのですが、その場合を、「恋愛指向」→「アロマンティック」、「性的指向」→「アセクシャル」として、あわせて「アロマンティック・アセクシャル」(昔の日本では「狭義のアセクシャル」とされていたことも)と表現するのですが、「ロマンティック・アセクシャル」(恋愛はするけど、性的指向は無い)人(昔の日本では、「広義のアセクシャル」とされていたことも)も結構いらっしゃるので、このあたり、性的指向が無いから(性欲が無いから)→恋愛もしない、とはなかなか一対一にはならないみたい。

 で、この主人公や、私のようなケースの場合、やっぱり、「性的欲求が無い」→「恋愛感情が無い」→「友情以上の感情がわからない」となってしまい、さらにこの世界のややこしいところは、恋愛感情の方向性によって食器(フォークかナイフか=男性か女性になるか)も選べるというのがあり、それはこの世界ならではだなぁと。

 で、1巻の最後で、衝撃の事実。この、12歳で性別がわかれる世界で、適切な年齢を経過しても性分化が(性徴:性長)起こらないのを、「準モナリザ症候群」と呼ぶそうで、かつ、その症候群の患者は、20歳を超えて生存した者はいない、と。

 どうも、性分化疾患(「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」)のゆきです、改め、準モナリザ症候群のゆきです、のほうがかっこよくない??

 あと、私、20歳のさらに倍を生きてますが、いまだに生きてますので、これはフィクションなので、全国の性分化疾患(インターセックス、DSDs)の皆様は、ご安心ください。必ず20歳までに死ぬのは、このマンガの世界だけですので。

 で、毎回、背表紙の言葉が好きなのですが、1巻の背表紙の言葉もなかなか。

とのことです。これが8巻になると、読む前から泣けるような文章になります。

と言うわけで、マンガ「性別「モナリザ」の君へ」1巻のレビューでした。また書いていきたいと思います。

※書籍はすべて「楽天kobo版 性別「モナリザ」の君へ」(電子書籍版)を、別のカメラで撮影するという強引な方法で引用しています。

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