見出し画像

救急車まちがって呼んじゃった話

二十代の頃
まちがって救急車を呼んでしまった事がある。
いや、救急車を呼んだのは意図して呼んだ。
だが必要がないのに呼んでしまったのである。

事の発端は
ある日学校帰りに
ふと気づくと端で
おじいさんがしゃがみこんでて
大丈夫かと話しかけた事に始まる。

なんだかしんどそうに
膝を抱えて座っていたので
気になって話しかけてみたのだ。

話しかけてよかった、
なんとおじいさん、
呂律(ろれつ)がまわっていなかった。

これはあれである!
救急講習で学んだやつである!
手足の痺れや呂律がまわらないときは
1も2もなく救急車を呼ぶように
教わった!
いわゆる脳梗塞の症状だ、
やばい!と思って
もちろんすぐに救急車を呼んだ。

うなだれるおじいちゃんの手をにぎり
「大丈夫、脳梗塞は
発見が早ければ
助かる病気です。」
とわたしは懸命に励ました。

だがわたしの願い届かず
おじいさんは震えだしてしまった。

おじいちゃん…!!!

わたしは祈るような気持ちで 
手を更に強くにぎり
背中をさすっていたら
なにごとかを
必死に訴えようとしている姿をみてとり

今際のきわの言葉かもしれない。。

そう感じ、必死な気持ちで
何とかおじいさんの言葉を
聞き取ろうとした。

そしておじいさんの言葉を理解した瞬間
わたしは雷に射ぬかれた。

「わしゃ、、、
受け口たから
い、いつもこんなしゃべり方なんしゃ、、、」

う、受け口。

うそでしょ。。?

え、わたし救急車呼んじゃったけど??

わたしただの受け口で
滑舌わるいだけの人に
救急車呼んじゃった。。。?

そこから先は頭が真っ白である。

(救急車の止めかた、わからない!)

どうしよ平八郎の乱!!
もとい!
どうしよう!!

挙動不審になるわたしをよそに
時は流れ
あっという間になんと救急車到着。

隊員さんに色々聞かれるも
なんと答えたらいいか分からない。

そうこうしている間に
なんとおじいさんも
救急車に乗せられていってしまった。

じじい、なんで断らないんだ!!

完全な八つ当たりと共に
立ち尽くし救急車を見送るわたし。
さっきまで聖母の心で
おじいさんを助けようとしていた筈なのに
その時は一転、


「たのむ、じじい、どっか悪いところが
あってくれ!!!」

と心の中で呪詛を吐いていた。

一体、その後どんなことになってしまったのか
私には知るよしもないのである。

※二十年前の純然たる善意からの行為です。
どうぞお目こぼしを。。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?