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宗教2世の私が、30代半ばの頃、自分の人生を取り戻す覚悟をした話 - 主に公的支援や相談先のことについて -第1回 宗教2世(3世)って何?

※この文章は、特定の宗教を誹謗中傷するために書かれたものではありません。生まれた環境、家庭の事情、親権者との関係などの理由により、信教の自由を保障されていないことで悩んでいる方や、宗教的虐待(スピリチュアル・アビュース)に苦しんでいる方に向けて、私の個人的な体験が何かのお役に立てばと思い、公開しております。

1. 宗教2世(3世)とはなにか?

 最近、ニュースなどでも「宗教2世(3世)」という言葉を聞くことが増えましたよね。今、40代の私が学生時代だった20年以上前には、こんな話題がNHKの全国放送などで大きく取り上げられるようになるとは、想像もつきませんでした。なぜなら、私たち「宗教2世(3世)」の声は、長いこと、行政からも、地域からも「ないもの」として扱われてきたからです。

 当事者ではない方には耳慣れない言葉だと思います。
 「宗教2世(3世)」とは、なんでしょうか。
 「宗教2世ホットライン」開設を伝える、キリスト新聞のニュース記事では下記のように紹介されていました。

”自ら信仰を獲得したわけではないが、親がある教団の信者であり、出生時あるいは幼少期から教団の影響を受けて成長した人”

 生まれたときから、あるいは成長過程で親が宗教に入信することで、自ら望んだわけでもないのにその教団の信者にさせられ、信仰を強要されている子ども(または、成長した大人)という意味で使われています。
 自らが望んで宗教に入信する人たちを「宗教1世」、その子どもや孫を「宗教2世(3世)」といい、区別をしています。

2. 宗教2世(3世)って何が問題なの?

 親の信仰を、何の抵抗もなく受けついた子どもや孫にとっては、何の問題もないことだと思います。また、家庭内で信仰する・しないを自由意志で決めることができる場合も問題にはならないでしょう。しかし、無宗教な国と思われがちな日本でも、親や親族から信仰を強要されて苦しんでいる、宗教2世(3世)がいることも、また事実なのです。

 宗教2世(3世)、特に”カルト宗教”と呼ばれる”新興宗教団体”では、以下のような問題が起きており、悩み苦しむ子どもたち(成長して大人になった虐待サバイバー)は後をたちません。

 これは、ほんの一例です。

● 友達の誕生会・学校行事・地域のお祭りなどに参加できない
● 輸血やワクチン接種を禁じられる
● 子どもだけを残して、親や親族など養育に責任を持つべき大人が家に帰って来なくなる
● 宗教の伝道(勧誘)・礼拝などの活動に頻繁に参加することを強要される
● 宗教の教えに従わないと地獄に落ちるなどと脅迫される
● 子どもが宗教の教えに従っていないと親が判断した場合、暴力を振るわれたり、外出を禁じられたり、食事を与えられなかったりする
● 個人の幸せを追求する行為・思考は悪だなどと言われ、思想や信仰の自由を侵害される
● 宗教の教えに背いていないか親が心配するあまり、子供に対して過干渉になる
(スマホや日記を勝手に見る。交友関係に干渉する。バイト先に乗りこんで辞めさせる。夏休みなどの長期休みに修行場に行かないとお母さんは死ぬなどと脅す等)
● 私的に物を所有することを禁じられる・捨てられる(お金、服、嗜好品など)
● 宗教を脱会すると親や親族から縁を切られる
● 宗教を脱会したことによって、学校や職場などに嫌がらせをされる
● 進学先や結婚相手を、子どもの希望を無視して宗教の都合で決められてしまう
● 高額な献金を要求されるため、家が常に貧しい。奨学金やバイトの給与等を献金するために使い込まれてしまう。

 幼少期から、心身に暴力を受け続け、逃げようとするたびに更にひどい暴力を受けるなどが続くと、学習性無気力(長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象)になってしまい、大人になってからも「どうせ、何をやっても無駄なんだ」という認知に囚われ、自分の人生を取り戻すことが難しい状況になります。

 また、幼少期から受け続けた「逆らうと地獄に落ちる」「悪いこと(病気になる、受験に失敗する、事故が起きる等)が起きるのは、お前の信仰心が足りないからだ(教団の教えに逆らうからだ)」といった脅迫は、大人になってからも人生に暗い影を落とします。
 「お前の大事な人が、お前の行いのせいで傷つくんだ」というような呪いのような言葉で、他人と関われなくなった宗教2世(3世)も少なくないのではないでしょうか。
 前述したケースとは逆に、「他人に対して逆らえなくなり、奴隷のように言いなりになってしまう」「自分を尊重してくれる人よりも、ひどいことをする人といるほうがなぜか安心する」といった歪な人間関係のなかで更に傷ついてしまったり、「本当に私を受け入れてくれるの?」という不安感や猜疑心から、他人に対して試し行動を繰り返して人間関係が破綻してしまったりといった苦労をする人もいます。

 幼少期に社会と隔絶された特殊な環境で育つことや、脱会=親や親族との関係断絶となってしまうことは、脱会後に「進学・就職・家を借りる際の保証人がいない」「緊急連絡先として書ける人がいない」「長年、強いストレスを受け続ける環境にいたため、病気や障害を発症してしまい働くことが難しい」といった問題を抱えることになりがちであり、何とか生き延びて大人になり脱会をしても、その後の生活を難しくします。

 公的な支援としては、生活保護などが考えられますが、窓際作戦や扶養照会の際の親の嫌がらせ(扶養する気もないのに「子どもには私がお金を送ります」と答え、受給を妨げるなど)によって、受給できなかったという話は、枚挙にいとまがありません。
 宗教によっては、教団内での結婚を重視している団体もあるため、18歳前後の子どもが「なんとか逃げたい。でも逃げられない」と悩んでいるケースも多いです。大学生の場合、生活保護が受けにくかったり、奨学金の受け取りが親になっているなどの理由で家から出ることができないケースもあります。そういったケースは、役所のケースワーカーなどに相談すれば、世帯分離などの方法で解決することもあります。しかし、役所によってはいまだに陰惨な窓際作戦をするところもあり、勇気を振り絞って相談に行ったのに乱暴な言葉で傷つけられるだけで、もう怖くて相談にはいけないという話もよく聞きます。

次回は、「信教の自由」と、子どもの権利について書きたいと思います。

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