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【詩】「発光」他2篇

(2023年金澤詩人賞落選作品)

「発 光」


アークライトとほうき星の間から生み落とされた
私は名も無きひとつの発光体
そして都会を漂うさみしい孤児である

街灯からは冷笑されて
プラズマからは無視されて
イルミネーションからは見放された

私は名も無きひとつの発光体
そして都会を漂うさみしい孤児である

それ以外にはなりえずに…

私は教会の燭台へ救済を求めた
しかし、
私がいくら光ろうとも
燭台の瞳には、
蠟燭の淫靡なゆらめきしか映っていなかった

終ぞ…
私は全ての温度を知らぬまま

私は名も無きひとつの巨星となりて
全ての灯りを抱きしめ、心中した


「霧 雨」

この世界は濃淡である
あざやかさは いつも わたしを きずつける

 かつて わたしの心は霧のなかに在った
 かつて わたしの胃は眼前の晩餐に飢えた

この世界は濃淡である
あざやかさは いつも わたしを きずつける

 こうして わたしの精神は眠りについた
 こうして わたしの口は霞を食した
 
この世界は濃淡である
あざやかさは いつも わたしを きずつける

 わたしだけの桃源郷に生きる
 わたしは今日も終電を見送る
 わたしはぼやけた街灯の下
 わたしの分の霞を食べた

 やがて
 わたしの淡い救いは今日も新参の朝のひかりに切り刻まれる

この世界は濃淡である
あざやかさは いつも わたしを きずつける


「白 銀」

冬のはじまりは
ギムレットの色したスカーフ

わたしのこころは うつむいている 歩きながら
土のにおいをつけるため 毬つきをはじめている
それはひそかな 愛憐 覆いつくされる季節への

銀色の空に、霜柱に、
わたしの目はつぶされてゆく

わたしは なきだしている 歩きながら
かなしい わたしを なぐさむように
ギムレットの色したスカーフは漂いながら
わたしの吐息にからみつき
すり切れていた わたしの頬を
われていた わたしの唇を
ギムレットの色したスカーフはなでる

わたしの目は凍りゆく
わたしの泪はたちゆかず

されるがまま…

冬のはじまりにさらされて
銀色の空に、霜柱に、てらされて
ギムレットの色したスカーフは揺れている



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上記の作品にて金澤詩人賞2023応募しましたが、落選しました。
公募に挑むって、折れない心が大事だなと改めて痛感しました。

ココア共和国4月号にも落選してました。
その詩は別の機会にnoteに掲載します。

「絶望するな。では、失敬。」(太宰治)
失敬しません、続きます。

この記事書くまでは、ほんともう、詩なんぞ書けない方がよかったとすら思ってました。トホホ。

畢竟、文芸という分野に、そこまで自分を剥き出しにして、無防備で立っているとは、自分でも思っていなかったのでした。

むしろこの歳で、こんな気持ちになれるってある意味良い体験かもしれませぬ。

などと強がっていても、最近、結構自分で気に入ってる詩を応募して見事玉砕してるので、笑いながら鮮血の雪の上!弁慶の仁王立ちみたいな出立ち…!

それはもう結果なんだから仕方ない。
これからは、毎回毎回大往生でいくしかない。
そして、毎回生き返ってしぶとく書いていきましょう、私。

行くとこまで行ったら、全力でぶつかって駄目だったのなら、それはそれ。現実って受け止められる。その過程が苦しいだけ。自分の中の結論ってシンプルなのに、そこに行くまでが大体大変なんだよなぁと、思う今日この頃。

また書いて、駄目だったらそれは結果なんだから、そしたら、また書けばいい。
私の詩情が搾りカスすら出なくなった時に終わればいい話。

筆を引っ込めるな。と、思いながら、生きて生きて、ひとつでも多く。書いていきます。起き上がり小法師の気持ちで。


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