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91. 自分はお金の流れをあまりにも知らなすぎる <アスリートとお金の話>

皆さんこんにちは。三浦優希です。
COVID-19の猛威は日に日に増しています。皆様がどうかご無事でいることを心から願うとともに、現在多くの命を救ってくださっている医療従事者の皆さん、そしてこのような状況でも社会を回してくださっている方々に心から感謝申し上げます。

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ここ数週間、自宅で過ごす時間が続く中、僕はあることに気付きました。

それは、自分はあまりにもお金の流れに関して無知だということです。

先日、父から「企業のPL,BSってわかる?」と聞かれたとき、僕はそれが何かなのか見当もつきませんでした。その後自分で調べた結果、それは損益計算書(Profit and Loss Statement)と貸借対照表(Balance Sheet)だと判明しました。

これはあくまで一例にすぎません。このほかにも、人と会話している時に数字がたくさん出てくるような話になると、急にそれがどれくらいの規模のものなのか、それが何を表しているのか、ということが分からなくなることがよくあります。

恥を承知で話します。
世の中では健康面のみならず経済面でも困難な状況が続く中、「お金の面で大変なことが起きている」ということは分かりつつも、心のどこかでは「自分にはそこまで影響はないだろう」というような意識レベルでした。なんとなく、傍観者でいたのだと思います。

僕は、「世の中が大変な状況になっている」ということは理解していても、それが一体どのように・どこに影響を及ぼしているのかということを全く考えていませんでした。

とあるメッセージ

そんなある日、昔からお世話になっているメンターの方から一通のラインが届きました。その文章を一部紹介します。

今世の中が大変なことになっているのは十分理解していると思いますが、大切なことはその影響がどのようなところに伝播しているか、誰が忙しくなっているか、誰が苦しくなっているか、などを考えられるかです。

今トップアスリートたちは裏で何もしていないわけではありません。所属チームやスポンサーたちのために動いたり、普段お世話になっているスタッフの方々のためにできることを考えたりして、関わっているたくさんの方々に今だからこそ感謝を伝えたり、それらの方々を救うため、日々頭の中が爆発するくらい頭を回転させています。

今の機会に改めて感謝の気持ちを持つことはもちろん、自分を中心としてどんな人が関わってくれていて、その人たちはどう困っているか?や苦しんでいるか?を行動に移さなくとも理解したり、調べておく必要があると思います。そうすることでアスリートとしても上記に書いたようなさまざまなファクターを想定して、自分自身の価値や自分にできることも知ることができるのではないかと思っています。

アスリートであれば人が関わってくれている背景やそれによってどういう影響があるかを瞬間的に理解できないといけません。

こちらはあくまで文章の一部を抜粋したものに過ぎないのですが、これを含むすべてのメッセージは、今の私に強烈に突き刺さりました。

もちろん私は、全くもってこの事柄について考えることがなかったわけではありません。アスリートのスポンサーシップを例に出せば、企業は選手に対して投資をしているわけであって、選手側はただお金をもらうのではなく、もらった分だけ(またはそれ以上)対価として成績・成果を残し企業側にリターンをする必要があります。

こういったいわゆる大前提の部分はある程度分かっていたとしても、ではその企業はどのようにお金を生み出しているのか、生み出したお金はどこに回っていっているのか、なぜ選手をサポートするのか、なぜスポンサー額がその値になったのか、企業がお金を投資するとはどういうことなのか、といったところまでを深く考えたことはありませんでした。これを書いている今も、もっともっと考慮すべき要素はたくさんあるはずなのに、それが浮かんできません。

プロになることを目標に生活をしている以上、このことはもっともっと知っておかなければいけないし、今後自分の中でお金が人生に影響を及ぼす割合が増えてくるのは確実です。何より、今すでに自分がホッケーをこのレベルまで続けてこれているのは、確実に僕の周りで様々な人の理解や協力、そして支援があるからです。競技に不自由なく取り組むことが出来ている今日があるのは、そういった人・物・時間・そしてお金が僕の周りで作用しているからです。

大学での気づき

一つの例として、アメリカにはスカラーシップ制度というものがあります。こちらは、秀でた学力や才能に対して大学側が学費などを負担するという、返済不要の奨学金のことです。

大学である日の授業を受けている時に、先生からこんなことを言われました。

学生アスリートのみんなは特に聞いてほしい。スカラーシップというものは無料じゃない。君たち自身はお金を払わずに大学に来れていると思っているかもしれないが、それは違う。スカラーシップを受け取るということは、君たちの学費を代わりに大学が”払っている”ということだ。

これを聞いた時、「どこかの誰かのお金の負担が減っているということは、つまり、どこかの誰かの負担が増えている」ことを再認識しました。

今僕が大学から防具やスティックをもらえるのも、好きな時にいつでも練習できるのも、授業を受けられるのも、それは僕以外の誰かが僕の「代わりに」負担をしてくれているからです。

だけど僕は、その負担が一体どのように増えるのか/減るのか、そしてその結果どんな影響が社会や個人に起きるのかということまでは理解できていません。

僕が今知りたいこと、いや、知るべきことはその部分です。

なぜ学ばなければいけないのか

僕は、non-athletes(あえてこう呼ばせていただきます)の人が体験してこなかった景色をたくさん見ることができているという自負があります。競技を続けてきた中で、環境を変えることの大変さや海外に挑戦する過酷さを肌で感じ、そこから多くのスキルを修得することが出来たと思っています。

一方で、今自分が社会に出たとしたら、どうなるでしょうか。僕は別に、自分が全く仕事が出来ないだろうという不安を持っているわけではありません。今僕が話しているのは、「アスリートは社会に出たら日常のギャップの大きさにショックを受けたり、仕事が思うように出来なくて苦しむ」といういわゆるセカンドキャリア論の鉄板とはまた違います

僕が言いたいのは、多少のクオリティ減はあれど、与えられた仕事をこなすこと自体はできるとおもっているが、それが一体どのような仕組みで動いているのかということまでは理解できないのではないか、ということです。

僕が言いたいのはここからです。

僕はこの時間を使って本気で学びたい。

メンターの方が伝えてくれた「アスリートは瞬時に人が関わってくれている背景やそれによってどういう影響があるかを理解すべき」というものを体現するためには、いったい僕はどのようなプロセスを踏めばよいのでしょうか。

僕は、この「お金」についてしっかりと学ぶことで、直接的な要因のみならず、そこに関わっている/携わっている人・物・時間を、より理解できると思っています。

僕が思うスポーツやアスリートの大きな特徴は「人と関わらないと成立しない」ということです。個人競技であれ団体競技であれ、対戦することが出来るのも、仲間が出来るのも、勝利、敗北があるのも、全てはそこに「人がいる」からです。アスリートは常に人と関わり続ける存在であるからこそ、そういった世の中の流れを理解しなければいけない。その人には、どんな思いがあり、どんな背景を持ち、どんな負担を背負って自分と関わってくれているのかを察する。このことをメンターの方は伝えたかったのではないかと思います。

僕は、お金がすべてだとは思っていないし、今お金を稼ぎたいという気持ちを強く持っているわけではありません。僕はもっと、その奥にある本質が知りたい。それを知るための第一段階として、まずは身の回りのお金の流れについて学んでいこうと思います。例えば、身近な企業やよく耳にする企業の経営状態が一体どういったものなのか。企業がアスリートを支援するとき、そのバックグラウンドにはどんなお金の動きがあるのか。日常で目にする「数字」は何を意味しているのか。そこから見える世界はどのようなものなのか。

こういった事柄をしっかりと理解できたときに、今よりももっと人に寄り添うこと出来るようになると信じています。

まだまだ至らない点が多くあると思いますが、アイスホッケー選手としても、アスリートとしても、一人の人間としても、さらに成長するために本気で学んでいきます。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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三浦優希

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