116. 「ファン」という存在
つくづく、すごいことだなあと思う。なんてありがたいことなんだろう。
僕はアイスホッケーを初めてもう20年以上になる。ただ「自分が好きだから」という至極個人的な理由で続けてきたわけだが、時間が経つごとに、僕の周りには応援してくれる人たちがたくさんできた。ただ好きなことをひたむきに続けた結果、多くの人から温かい言葉をかけてもらえるようになった。今まで全く僕のことを知らなかった人も、これまでに一度も直接会ったことのない人でも、僕の背中を押してくれている。
これは、人生の中でも本当に特別な経験だとおもう。味わいたくて味わえるものでもないだろう。「ファン」はスポーツ選手には存在して当たり前のように感じることもあるかもしれないけど、決してそんなことはないはずだ。全く別の人生を歩んできた者同士が、同じ競技を通じてつながる。何がきっかけになるかはわからない。それは選手の競技中のパフォーマンスかもしれないし、はたまた日常の何気ない様子なのかもしれない。出会いの形は人それぞれ違うかもしれないが、「この選手を応援したい!」と思ってくれる人たちが自分の周りにもいてくれることは、本当に恵まれたことだと思う。
僕は「応援されるため」にホッケーをしているわけではない。最初にも言ったように、一番は「自分が好きだから」この競技をこれまで続けてきた。自分がやりたい、という至って自己中心的な考えでアイスホッケーを続けている。そこはきっと変わらない。これからもそうだ。にも関わらず、僕の挑戦を温かく見守ってくれる人がたくさんいる。声をかけてくれる人がいる。メッセージをくれる人がいる。応援してくれる人が僕の周りにはたくさんいる。これがどれだけ素晴らしいことか。どれだけ特別なことか。
ファンの人は、僕の挑戦を見て勇気が出たとよく言ってくれるが、真実はその逆だ。僕が、皆から勇気をもらうことで、日々チャレンジを続けることが出来ている。僕がなんとかして応援してくれている人にパワーを届けたいと思っているのに、結局はいつも支えられっぱなしだ。
「応援してくれる人」のパワーは本当にすさまじい。これは断言できる。よく、スポーツ選手が「ファンの方の声援が力になりました」とインタビューで言ったりするが、あれは間違いなく本物の言葉だと思う。少なくとも僕にとってはそうだ。劣勢の時の観客席からの声援とか、調子が悪いときにもらう何気ない一言とか、試合後に声をかけてもらえることとか、活躍したときに自分のことのように喜んでくれることとか、こういった温かく愛のある行動が、いつも僕を奮い立たせてくれるし、苦しいところから抜け出すきっかけになったりする。
僕は、「誰のためにプレイするのか」と聞かれたら、迷いなく「自分自身」と答える。今後もきっと変わらない。ただ、「誰を喜ばせたいか」と聞かれたときに、僕の口から出てくる答えは、間違いなく「応援してくれている人たち」になるだろう。
例えば地位が上がったり、知名度が大きくなっていったり、いつしか「こんなことは当たり前だ」と感じるようになったときほど、本当に大切なものを忘れがちになってしまうと思う。だからこそここでしっかりと心にもう一度刻む。
僕は、自分がどんな場所でプレイしていようが、どんな実績を残そうが、どんな立場になろうが、これからどんなことが起きようが、応援してくれている人たちにとって常に身近な存在でありたい。中には、「選手が身近でいることが結果的に競技全体の価値を下げることにつながってしまう」と考える人もいるかもしれない。でも、そもそも日本のアイスホッケー界はそのフェーズにまだ達していないのでは、と思う。
僕は常に、上手くなりたいと思う人たちの一番の理解者でありたい。応援してくれる人が気軽に話しかけられる選手でありたい。どんな環境でも、誰とでも、アイスホッケーを一緒に楽しむ人間でありたい。ホッケーに関してでも、日頃のことについてでも、なにか聞きたいことが思い浮かんだときに、抵抗なく質問できるような選手でありたい。出来る限り、一人ひとりと向き合い続けたい。
ここで書いていることは、「このようにファンの方と接することが選手としての理想像」と主張するためのものではない。単に僕がそういう性格なだけなのだと思う。威張ったり、目の前にいる人に対して粗末な態度をとることは、それが良い悪いという議論以前に、そもそも自分には合っていないものなのだろう。
僕は常に、周りの人とは対等な立場だと思っている。「選手とファン」というと、どうしてもファンの上に選手が立っているようなイメージを持つことが多いかもしれないが、僕はこの考えには大反対だ。出会うきっかけになった場所がたまたまアイスホッケーであり、たまたま僕がその競技が得意な人間だったというだけ。そこに優劣はない。だから、僕らは常に対等の立場であるべきだと思う。もちろんそこに、相手への尊敬を持つことは大切なことだ。どちらが偉いとかはなく、常に同じ目線でいたい。
だからこそ、応援してくれる皆さんにも一つお願いがある。それは、何か僕が正しくないことをしていると思ったときは、遠慮なく伝えてほしいということ。もちろん、今後も自分がやりたいと思ったことを僕は続けていくし、自分の考えを信じて行動を起こしていくと思うけど、時折間違うこともあるだろう。そういう時は、遠慮なくいってほしいと思う。
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なかなかこういったことは伝えられる機会が少ないので改めてここで言わせていただきたいです。(本当は直接伝えたいのだけれど)
本当に、本当に、皆さんからの日頃の応援には、感謝してもしきれない思いでいっぱいです。アイスホッケーを好きになってくれたこと、僕のことを知ってくれたこと、応援しようと思ってくれたことに心から「ありがとう」と伝えたいです。
さあ、初試合まであと15日。
今年も頑張りますよ!これからもよろしく!
三浦優希
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