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163. 「シュートを打て!」 国内アイスホッケー選手が海外に行ったときに直面しがちな課題

今日は日本人のアイスホッケー選手が海外に行った際に直面しがちな課題について、お話します。今回の話はホッケー色が強い話になりますが、どのスポーツにも共通することでもあるかと思います。

さて、海外に出た日本人選手が苦労しがちな点についてですが、文化や言語の壁等はもちろんですが、プレイ中でいうと「シュートを打つこと」が挙げられると思います。

シュートを打つなんて誰でもできるだろ、と思われる方も多いかもしれないんですが、実は意外とそんなことはありません。チームで活躍を目指す上で、どれだけシュートを打てるかは非常に重要な指標になってきます。

わかりやすく言えば、1試合で何本シュートを打てるか、が評価に直結することがある、ということです。FWの選手は特にです。

例えば、1試合平均5本-10本シュートを打てる選手だとしたら、それだけでもチーム内での価値は高くなります。

もちろん、ただ闇雲に打つだけではダメです。近年では本数だけではなくシュートのクオリティ、つまり質も評価されるようにはなってきています。そのシュートが得点につながる可能性の高いものだったのか、はたまた、ただキーパーに向かってパックを放っているだけなのか、も見られたりします。

それでも、大抵の場合は、チーム内のスコアリングリーダーは、チーム内でシュートを一番多く打っている事が多いです。もし仮にゴールやアシストに繋がらなかったとしても、「シュートを打っている」という事実が評価としてプラスになります。

逆に、シュートを打たない選手は、攻撃に参加していない、ゴールを決めようとしていない、消極的、といったイメージを持たれることがあります。

もちろん、パスを出せることも立派な能力です。周りを活かすことも素晴らしいプレイです。でも、シュートチャンスが目の前にあるのであれば、それは他人に譲るべきではなく、まずは自分が決める、という強い意志を持たなければなりません。Shooting Mindset です。

これがずっとできていなかったのが、僕です。

僕は昔から、どちらかというと、パスを出す側の選手でした。決めるよりも、決めさせたい、という思いが強かったです。

例えば数的優位な状態で自分がパックを持って敵陣に向かっているときに、どうしてもパスを一番最初に考えてしまう選手でした。

これは決して悪いことではないのですが、自分がキーパーを見て打てる状況なのであれば、そこでシュートを打たないと駄目なんですよね。特に、北米ではそうです。

シュートを打たない選手は、敵からしても、怖くないんですよね。

毎回パスを出す選手、最初からパスを出そうとする選手は脅威にはなりません。

自分でも決められる力を持っている選手が攻めてきた時に、キーパーは「打たれる」ことを警戒し、その結果、パスも活きるわけです。

これは、特に日本人の選手に多い傾向だと思います。(もちろん全員ではありませんが)

例えば普段の練習からも、2-0の場面などでは、「自分がシュートを打ったら自分勝手だと思われる」といった感覚を持っている、もしくは、持っていた選手は多いのではないでしょうか。

そういう環境の中で育つと、無意識にシュートを打つことに抵抗を覚えてしまう選手が出てくるのかもしれません。

いずれにしても、伝えたいことは「打てる時に打て!」ということです。もしそれでゴールにならなかったとしても、シュート数はしっかりとスタッツに残ります。

それに、自分が得点を決められる可能性があるタイミングでパスを出すことは、ある意味、自ら決められるチャンスを周りにみすみす流していることにもなります。

得点やシュートに関しては、多少強引になる必要があります。この場面では、ある意味、セルフィッシュにならないといけません。

シュートを打つことに関して、もう少し細かいことを言うと、打つタイミング、つまり先程言った「打てる時にさっさと打つ」というのが実はとても大事になったりします。

これは僕個人の感覚や経験則に基づくものなので全員に当てはまるとは思いませんが、「変に溜めずに、打てるタイミングでシュートを放つ」方が、点数が決まることが多いです。

例えばパスをもらってそこからシュートを打つ時、キーパにかなり近づいてかわして決める、と考えることよくありましたが、経験上、それだと止められる可能性が高いです。

なぜかというと、キーパーに近づく=キーパーに準備の時間を与えているからです。この出来事はプレイ中は1秒にも満たないことかもしれませんが、実はこの差が大きな違いを生むことになります。

特にこの北米では、相手プレイヤーやキーパーのレベルも高くなるので、そもそも自分がフリーの状態でキーパーに近づいてシュートを打てる機会自体、ほとんどありません。かつ、プレッシャーもとても早いです。そんな環境の中で、ドフリーでパスを受け取れる状況は数試合に一回あるかないかだと思います。

では点を決めるためにどうするか。

パスをもらってすぐに打つことが非常に大切になります。自分がシュートレンジ内にいて、かつパックを持っているのであれば、すぐに打つべきです。

とても単純に聞こえますが、これが実はとっても大切なスキルです。そして、このプレイが試合でできるようになるためには、普段の練習から積極的に、素早く、シュートを打つ意識を持つ必要があります。

シュートを打つことに罪悪感を感じる必要はありません。シュートを打つことは、常に、いいプレイです。打たないより100倍マシです。

先ほども少し触れましたが、練習の中では2-0, 3-0, 5-0 といった状況で、パスを繋いで繋いでシュートを打つことがよくあると思います。ただ、試合ではこんな状況はまず起こりません。

だったら、余計なパスをするのではなく、シュートレンジで自分がパックを受け取った段階でシュートを打つべきだと思います。

シュートを打つことが正義、くらいの感覚を持って良いと思います。

ただ、先ほども言ったように、闇雲に打つだけではいけません。その先にはシュートクオリティを高めることや、打ち方をより効率的にしていく必要があります。

今回の話で伝えていることは、そもそもの大前提として「シュートを当たり前に打つことができる選手になろう」ということです。「俺が決める」という強い意志を持つことがとても大切になります。

試合でシュートを打てるようになるためには、とにかく練習からシュートにこだわらなければいけません。それ以外、方法はないです。

この話はまたどこかで詳しく書こうと思いますが、シューターはそのままチームの”戦術”になることができます。

その選手が打てばゴールにつながるかもしれない、となれば、チームにとっては最高の武器だし、敵にとっては大きな脅威です。

僕は今、これまでの遅れを取り戻そうと必死です。

シュートがこれだけ価値のあるもので、スコアラーがどれほどチームにとって必要な存在か、をアメリカに来てから毎日感じています。

もちろん他の部分で強みを活かしていくこともできますが、シュートが打てる選手でいることに損は絶対にありません。

特に、今後海外を目指す選手、現在海外挑戦をしている選手に向けて、このメッセージを伝えたいです。

みんな、シューターになれ!

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希

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