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花色に金箔、真冬の夜空--建礼門院右京大夫集より

浅葱色(あさぎ)といえば、水色がかった薄い鶯色だと思っていたが、色見本によるともう少し暗くて青っぽいことを初めて知った。

「建礼門院右京大夫集」にはこの浅葱色が登場する。眠れない12月の真冬、午前2時ごろ空を眺めると浅葱色だったと綴る。それまで月ばかりに関心を寄せていた作者は、ここで初めて星の美しさを発見する。

「花の紙に、箔をうち散らしたるに」とある。

この花の紙とは折り紙のことだが、しかし浅葱色にはいくつかの色相があり、そのひとつに花浅葱という色があるそうだ。明るめな藍色といえばいいか、やや鈍い明るめな紺といえばいいか、総じて「花色」というらしい。そんな花色の折り紙に金箔を散らしたらそれはきれいなことだろう。

しかしはて、12月の深夜の空はそんな色をしているだろうか。どんなに晴れていて星が輝いていても背景は真っ暗なはずだ。が、作者はこれをもってして「星合の歌人」と称され、星の第一発見者として歴史に刻まれた。なるほど、「美はそれを見つめるものの目のうちにある」という通り、きっとそうした心と鋭い感性の持ち主だったのだろう。

平安末期から鎌倉初期を追憶の日々に過ごした右京大夫が、凍てつく寒さのなかに見た、花色に金箔を散らした真冬の夜空が、およそ800年の時を経た現代を生きるわたしたちにも見えるだろうか。

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