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私のフォローはゼーバルト

車の運転中、卒中に見舞われて不慮の死を遂げなかったらノーベル文学賞だっただろうといわれるゼーバルト。

呪われた人、虐げられ見捨てられた人、そして無名のまま闇に葬られ歴史に抹殺された人、そうした人々の塚という塚をその筆致でもって丁寧に掘り起こし、今一度光で照らそうとした稀有の作家。一文の息はきわめて長く、入れ子式に絡まった間接話法は難解だが、それゆえに読み手を歴史の彼方に連れて行ってくれる。ひとつひとつ丁寧に読み、ずっと大切にしまっておきたい。

歴史の連なりの最先端に立つわたしたちだが、いつかは泉下への孤独な旅に赴く。しかし運がよければ、あるいはこの同時代人たちもまた、1世紀後か10世紀後に、ゼーバルトのような慧眼に再発見されるかもしれない。


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