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オープンDの音色を追って 24

(約5分半で読めます) 

 酷暑の中、高校野球が始まり、各地の祭りや花火大会も制限なしで開催されていて、音楽フェスも数多くあります。
 レコードデビュー前のGAROが初めて大々的に姿を現したのは、1971年8月7日『第3回全日本フォーク・ジャンボリー』でのことです。52年も前か……。

 前回、渋谷パルコでのGAROの個展について書きました。
 個展というよりグループ展だろ、とか、GAROのメンバーが「撮った」写真じゃなくて「撮られた」写真じゃないか、とか、いろいろツッコミたい部分はありますが。
 追加情報です。
 写真展タイトルは『サーカス』。
 開催期間は1973年10月20日~26日。フォトグラファーは田中哲夫、おおくぼひさこ。
 渋谷の他、北海道・札幌、大阪・心斎橋でも開催。
 翌1974年5月25日には6枚目のアルバム『CIRCUS』が、同6月1日にはソングブック『ガロ・サーカス』(ケイブンシャ)が出ます。
 写真は、展示会、アルバム、本に連動して使うように撮られたとみられます。

古書店の商品画像より。
同じく古書店の商品画像。パルコでの展示にも同じ写真が使われていました。

『CIRCUS』はGAROにとって初めてのコンセプトアルバムで、複数の曲が強いつながりをもって作品としての体をなしています。
 ですから、全アルバムの中で唯一シングルカット曲がありません。

 話は変わって、2023年7月10日に出た「YOUNG GUITAR」8月号。
 100ページ超えの大特集『Fender Experience』があったので買いました。
 果たしてトミーのことは載っているのか?

YOUNG GUITAR 2023 8月号


 ……ざっと見たところ、ありませんでした。がっかり。
 でも、美しいギターがたくさん載っていて見ているだけでも楽しいし、これから隅々まで読むつもりです。
 この際なのでトミーのギターについて改めていろいろなネット記事を読み直してみました。

 GAROのメンバーが初めて海外に行ったのは、1973年6月12日~23日のことでした。
 行く先はロンドンとパリ。
 海外公演ではなく、旅行です。
 ビートルズが設立したアップル・レコードへ見学に行ったり、ジェフ・ベックのコンサートを観たりと勉強の旅だった模様。
 ロンドンでトミーが買ったのがギブソンのレスポール。

「2年前に20台しか作らなかったやつでハンブルパイがつかっていたやつなんですよ。それと、あと、ジョン・レノンと同じリッケンバッカです」

1973年ファンクラブ会報より

 トミーの弟さんによれば「兄貴は洋楽が好きでベンチャーズとグループサウンズからギターに入った。フォークソングをやっているつもりは毛頭なかった」ということです。
 GAROがフォークグループだという誤解はいまだに根強いですね。企画もののCDセットに収録されるときも、『学生街の喫茶店』が『ベストヒット青春フォーク』的なタイトルの商品に入るのばかりを目にします。
 かく言う私もコロナ禍の自粛期間がなかったら、誤解したまま一生を終えるところでしたが。
 トミーはこのロンドン行きだけではなく、アメリカにもギターを買いに行っています。

 1974年9月8日、東京・新宿厚生年金会館でのコンサートの控え室でインタビューがあり、トミーがギターについて答えています。
 なお、控室には「同じ田辺エージェンシーに所属している『夏しぐれ』でデビューした4人組、アルフィーのメンバーが訪ねて来たり」したそうです。旧アルフィーって4人組だったんですね。

Q:ギターは何本位持ってますか?

トミー:30本位かな。

Q:一番気に入っているギターは――

トミー:これ。(と言って、さっきから片時も離さずにいるギターをさし出
    しました。)

Q:そのギター、何?

トミー:Fender(フェンダー)のStratcaster(ストラットキャスター)と言って、
    製造番号08 95、 1954年型です。

(ギターの話になると、とたんに生き生きとした瞳で話し始め、いつでも関係者をつかまえては、ギターの話に花を咲かせ、一日がギターに始まり、ギターに終わるという「ギター●●い」。この名の通り……)
          (※コンプライアンスでアウトな部分を伏せました)

Q:自分の作った歌の中では、何が一番気に入ってる?

トミー:一人で行くさ。それと、ずっと前、元タイガースの加橋かつみに作っ
   てあげた「ある夏の終わりに」

(最近ではいろいろなタレントのために作曲活動にも忙しい。かまやつひろしや、かわったところでは、浅田美代子のLP用にも作っている。)

Q:どんなStage(ステージ)を創りたい?

トミー:例えば、渋谷のジャンジャン(音楽喫茶)のような所でのリラックス
   したムードのステージや、 野音みたいな所で、いろいろなミュージ 
   シャンとも演ってみたい。最近の郡山でのワンステップフェスティバ
   ルみたいの良いよね。

Q:ミュージシャンの中で尊敬する人――

トミー:エリック・クラプトン。
   彼の生き方、好きだナア。この間のRolling Stone(ローリングストー
   ン)誌に、エリッククラプトンのこと書いてあったんだけれども、迫
   力あるんだよね、彼。
   ヘロインやってメタメタになったのに、また立ち上がって……ステー
   ジなんか、お酒飲んでフラフラになりながらギター弾いて、作り上げ
   ちゃう。
   すごいと思うよ。

(インタビューを受けながら、一瞬たりともギターを離さず、ダメダコリャ。)

1974年ファンクラブ会報より。※小劇場 渋谷 ジァン・ジァンは2000年4月25日に閉店。

 同じ日のインタビューの中で、マークは「楽器の中では何が好き?」と訊かれ「やっぱりギターが好き。ピアノも好きなんだけど、あんまり弾けないからね」と答えています。
 以前雑誌のインタビューでボーカルが「ギターをしっかり磨いていたのはトミーの方。マークは意外とほったらかしで弦もそんなに替えない。という違いがあったかなあ」(「スローハンド」vol.2)と言っていて、マーク自身も「物に頓着しない」とblogに書いていました。
 同じギタリストで腕前も抜群な二人ですが、ギターに対する熱量には違いがあるようです。

(つづく)
(文中敬称略)

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