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GARO オープンDの音色を追って

その1
(約5分で読めます)

私がGAROにはまってから半年以上が経ちました。
日本の音楽史に残るスーパーグループのはずなのに、活動した時期が早すぎたせいか、思いのほか資料に乏しいGARO。
なんとかGAROのことが知りたい。
「GARO」「ガロ」「マーク トミー ボーカル」「堀内護」「日高富明」「大野真澄」等、検索ワードを変え、端末もPC、タブレット、スマホと変えると、見つかる情報が違うのでいろいろと調べてみました。
画像検索、動画検索も加え、しまいには「堀内麻九」「幹竜一」「大野轟二」とメンバーの別芸名まで入れています。
どんな小さな情報でも欲しいですからね。

そうこうするうち、徐々に資料も手に入れ始めました。
今日ご紹介するのは、古書店の通販で買った2006年の雑誌『スローハンド』。
トミーが敬愛したギタリスト、エリック・クラプトン。そのニックネームであり、アルバムタイトルでもあるのがスローハンドなのですね。このことは後で調べて知りました。
この雑誌には大野真澄(ニックネーム・ボーカル)インタビューが掲載されています。2006年には10CD+1DVDの『GARO BOX』が発売されており、その監修をつとめたボーカルに話を訊くという企画です。
トミーはともかく、2006年にはマークはまだ存命のはず。なんで関わってないんだろう。まったく音楽から離れていた時期だったのかな?
そう思って、マークのホームページの年表を見てみました。
GARO解散後のマークは、ざっくりいうと、ソロ活動→オートテニス場の経営→トミーと組んでのライブ活動→音楽学校講師→ライブ活動……といろいろで、まったく音楽活動の記録がない年もあるのです。
2006年のマークは、と見ると、各地のライブハウスに11回出演していました。ほぼ月一のペースです。
旺盛に活動をしているのに、なぜ『GARO BOX』にはノータッチなのか。
また謎が増えてしまいました。

さて、話をボーカルのインタビューに戻しましょう。
私がGAROを聴いていていちばん戸惑うのは、変幻自在すぎるところです。
主旋律を歌っていた人が突然ハモるパートに行ったりする。いちばん高いパートは大体マークが歌うものだと思っていたら、時にはボーカルがいちばん上に行ったり。
アルバム『GARO2』のラストの曲は、ミュージカル『HAIR』のナンバー『Good Morning Starshine』。マークのblogによると、トミーが主旋律、マークが下を歌っています。
どうなってるんだろう?
それについての答えが記事にありました。

「曲によっては途中でパートを交代したりしてたんだよね。『青い眼のジュディ』だったらずっと三声で組曲風になってるじゃない? A~A`~B~A〃~C~C`~D~Eみたいな構成だよね。一番最初は僕は下の部分を歌ってる。で、最後の“トゥルルルル~”の部分は一番高いところを歌ってるんだよ。結局、僕ら三人の声が最も効果的に響くように工夫してた。それで途中でパートを代えてたんだね」

「効果的にタイトに厚く聞こえる感じを目指してた。それからリズムと長さをきっちり合わせることに労力を割いたよね。音程も勿論だけど、長さとかシンコペーションの位置を揃えることが大事なんだよ」

「トミーとマークは二人とも裏声が出るんだよ。僕は裏声が出ない。でもトミーとマークの繊細な声だけだと細い感じになるから、そこで僕が地声で高いパートを歌うとハーモニーが強くなる」

ハーモニーの面でもそうですし、ソロで歌うところでもボーカルの異質な声はすごく効いていると思います。
私はシングル曲の中では『ロマンス』が大好きなのですが、特に最後にあるボーカルのソロがスパイシーでいかしていると感じます。
必要に応じていかようにもなる三人の歌声。今では失われてしまった高い技術ではないでしょうか。

昨今、音もデジタルで切り貼りや追加ができる時代です。
私もアニメのアフレコやダビングの現場で、音を自由自在に操る音響効果担当者の仕事を見て、感心することしきりです。
でも、GAROの活動時期にはそんなツールはありません。
レコード音源では声をダブルトラックにしたりしてはいますが、そういった加工のできないライブでもへっちゃら。GAROのハーモニーは素晴らしいのです。
どんな条件下で歌ってもその時々の最適解が出せるなんて。
かっこいいにもほどがあります。

ああ、それなのに。
インタビューによると、マーク、トミーとボーカルとの間には溝があるのです。
それは坂崎幸之助(THE ALFEE)が同じ雑誌で証言しています。

「GAROは喧嘩でしょ(笑)、楽屋は」
「GAROの楽屋はすごかった。今だから言っちゃうけど」
(音楽性に関する喧嘩ですか? と訊かれて)
「もう、なんか根本的な(笑)。その日のメニューが出て、俺が1曲多いとか少ないとか。ボーカルさんがあいだに入って大変だったみたいですよ」

ボーカルがいかにたいへんだったかは本人の口からも語られます。
『学生街の喫茶店』がヒットしている最中、ボーカルは十二指腸潰瘍で入院していました。そのせいでシングル『君の誕生日』のレコーディングに、ボーカルは参加していないのです。

「ただね、〈学生街〉のヒットがなかったら、もう『GARO3』を出した後に解散してたんじゃないかな。それぞれ別々に音楽をやり始めてたと思うな。僕はそう思う。3枚目のアルバムの頃は、かなりバラバラだった。結局グループのバランスを保つのが僕の役目だったような感じでしたね。そんなもんですから十二指腸潰瘍にもなりますよ(笑)」

(つづく)
(文中敬称略)

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