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負債としての「金」 ~貨幣における資産·負債の二面性を、「金」を通して考える~


市中銀行は銀行預金を発生させることができ、国民に渡した資産としての銀行預金と同額の銀行預金が市中銀行の負債に計上される。つまり資産としての銀行預金が0の状態から銀行預金を発生させ 国民に渡すことができる。もちろん法律で定められた付随する手順に則る。

同様に、中央銀行は日銀当座預金を、政府は国債を発生させることができ、それらを他の経済主体に渡すとともに、それぞれの負債にそれぞれの勘定科目を計上する。

それでは「金」の場合、資産としての金は存在するが、負債としての金を考えることはできるのだろうか?

金は、宇宙空間で中性子星の衝突(など)により発生するという研究があるようだ。

もちろん、中性子星の衝突の現場に負債が計上されているわけではない。

「宇宙」という経済主体

こんなことを言い出すと気でもふれたかと言われるかもしれないが、経済主体としての政府、中央銀行、市中銀行、国民の他に、「宇宙」という経済主体を想像するのはどうだろうか?
その「宇宙」という経済主体にも貸借対照表を設け、その負債に金を計上するという考え方だ。
その宇宙という経済主体には、既存の政府、中央銀行、市中銀行、国民はいずれもアクセスできない状態を想定する。また話を簡略化するために、「地球に存在する金」は前述の既存の経済主体である政府、中央銀行、市中銀行、国民のいずれかに資産として計上されている状態を想定する。
これにより、既存の貨幣である銀行券、銀行預金、日銀当座預金、国債のような、複数の貸借対照表上の資産と負債の二面性が構成される。

「宇宙」の貸借対照表

さて、現実の宇宙には地球に存在する以上の金が存在する。「宇宙」という経済主体の貸借対照表はどのようになっていると想像できるだろうか?

パターン1
資産には金は計上せず、負債に 「地球に存在する金」の分だけ計上する。

パターン2
地球以外に存在する金」を資産として計上し、その負債には、「地球以外に存在する金」と「地球に存在する金」を計上する。

ここで貸借対照表への計上方法を考えるために中央銀行での銀行券の取扱いについて述べる。
造幣局で印刷された銀行券を 中央銀行の金庫に保管しているとき、今の会計基準では、中央銀行の貸借対照表上の資産および負債に、その金庫で保管されている銀行券は計上されない。
この今の会計基準に沿って考えると、資産としての「地球に存在する金」に対応する負債のみを計上したパターン1の方が 今の会計基準に沿っていると思われる。
ここで以下の 小栗(2015, p. 104) を参照する。

(1) 流通せず中央銀行内に保管している銀行券の取扱い

中央銀行内に保管する銀行券はオフバランス シートの形で完全に在庫管理が行われている。 し かし、こうしたオフバランスシートの在庫状況は、 一般にディスクローズされていない。 かつては、 未 発行銀行券および対応する同額の相殺科目をオンバランスシートに資産、負債両建ての形で計上 する慣行もあったが、この方法は現在の会計標準に適合しない。

小栗(2015)

これを踏まえると、パターン1においては、「地球以外に存在する金」は、オフバランスシート上での管理対象とされ、その資産および負債双方に「地球以外に存在する金」を同額計上している(のだろう)。

一方パターン2における「地球以外に存在する金」の資産および負債は、かつての会計基準での貸借対照表での取扱い方法に対応している(のだろう)。

宇宙の支配者は、今の会計基準に則って「地球以外に存在する金」を オフバランスシートで管理しているのだろうか?

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