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アーキタイプ

私の中学時代からの友達は日中ハーフなんだが、年の離れた弟をすごい献身的に、小さい母親のごとく面倒を見ていたひとだ。陳情令みたいな中華ドラマ観てると、友達と同じようなお姉ちゃんがめっちゃ出てくる。弟が可愛い、弟が可愛い、と言ってるような、綺麗なお姉ちゃんいっぱい出てくるの不思議。民族的なアーキタイプとか、そういうかんじなんだろうか。

その民族にありがちな物語というのがあって、繰り返し出てくる元型があるんだけど、中華ドラマでよく見かけるそのひとつが「姉」だ。ネガティブマザーと真逆のポジティブマザーの投影なんだろうか。美しく優しく献身的で世話焼きで儚く、基本的に受容的でひとを恨まない。それゆえに穢れない。聖母に近い。

中国の神話には女媧というグレートマザー元型がある。日本神話には無い。グレートマザー元型がしっかりある民族は、女性性が盤石なかんじがするよね。ゆるぎないわー。河合隼雄は日本は女性原理の民族、と言ってたけど、その割に日本は女神の元型がたよりなく、グレートマザーもいない。アマテラスはギリシャ神話で言うところのアテナだ。父親から直接生まれた父の娘。家父長制と軍国主義の象徴のような処女神だ。

日本神話には山姥というネガティブマザーの元型があるんだ。山奥にひとりで住んでて男の客が来たら殺して喰う。あれはもともとあったその地方の女神の零落した姿、とされる。女神の零落というのは、男性優位社会に飲み込まれてキャラクターの解釈が変化していってしまった、という意味だ。メドゥーサやゴルゴンのごとく。

最近の日本は父の娘が多く、母の娘は稀有だ。軍国主義で父の娘が目立ちやすい社会状況なのだろう。24年組の頃は、圧倒的に母の娘が目立っていた。父の娘の物語は、強烈に景気が悪くなると増えるよね。どちらにも独特の鬱屈がある。

ここのところ韓国Webtoonばかり大量に読んでるんだけど、「恋愛しない女」が主人公であることが多い。悪女ものはだいたいそうだ。元型で言うとどの辺なのだろうか。ネガティブ・マザーの、「女神の復権」といったところだろうか。前世で男に媚びてまったく報われなかったので、今生は全然恋愛するつもりないっす。そのせいでべらぼうに強く、目的を達成していくことに人生を捧げてて無駄が無い。男のせいで目的が果たせない、みたいなことは一切ない。むしろ男は道具。男はすっかり主人公の女性にのめりこんでいても、本人は利用する気まんまんだったり、別に目的があったり、どうでもよかったりして、「なぜそこまで恋愛モードを避ける!!?」という勢いで不自然に避けてくる。たしかに恋愛に入らないと家父長制の文脈にも入らないんだけど、感情のこすれあいみたいなのも無いから、なんかやっぱり物足りないかんじはするのよね。読者として。

まあそんなかんじで、悪役令嬢は、日本の山姥と同じネガティブマザーの元型。

そこまで強くなくてもいいんだけど。みたいにも読みながら思ってるが、どちらにしろ、女神の復権が面白くないわけがない。



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