デジタルで漫画を描くのは今はすごく当たり前だしマジョリティになってるんだけど、もちろん20年前は超珍しかった。私が早めにデジタルに参入したのは、もともと父がパソコンオタクだったから馴染みがあったことに加え、その頃すでに景気が悪く、経費や固定費がかからない方向にビジネスが進んでいくだろう、という、予想からだった。時代の変化によって、ビジネスモデルは変わる。特に、この急激な新自由主義による貧困格差の影響は大きい。そんなわけでビジネス戦略的に、当時は珍しく、女で30歳前後から徐々に、デジタルで漫画を描いていた。クリスタの前のコミスタの競合のコミワクからだ。コミワクは無くなったからコミスタに移行、コミスタが存続しなくなっちゃったからクリスタに移行。移行する際のデメリットはもちろんあるが、それでもいずれはクリスタに移行せねばならぬのだろう、と思ってクリスタに移行した。
コミワクで描いてた頃は、「デジタルで描く漫画なんか漫画じゃない」と言われた。「デジタルで描いた漫画にヒット作は生まれない」と言われた。とは言っても、ここまで不況になったら昭和時代の漫画業界のビジネスモデルは、維持できるひとは稀有であろう、と思って、黙ってデジタルに移行していた。
とにかくこんなかんじで、新しいことをすると常にいじめられるんだわ。いろいろと言われるのが普通。
スクリーントーンが発明されたときも、「スクリーントーンは手抜き」と言われたと聞いたことがある。文字が発明された紀元前にも、「文字なんか手抜き」と言われた文献が残ってる、と聞いたことがある。
もうこれは人間の当然の心理なのだろう、と思って、まったく気にせず、その後も同じようにBlenderをとっとと学んだ。Blenderを学んでいるときは「3Dで描いた漫画背景なんかダメだ」と言われた。そして今はWebtoonを学んでいる。Webtoonも今、「あんなの漫画じゃねえ」と言われている。今後も、私はずっとそう言われ続けるのだろう、と確信している。
じゃあデジタルが絶対正しいか、というわけでももちろんない。これからデジタルが全面的に普及するにしたがって、アナログは稀有な特殊技能として価値が上がっていくだろう。それももちろん理解している。だから、デジタルが正しいとかアナログが正しいとか言えない。所詮、当人の選択に過ぎないのだ。
それはなんでもそうだ。どんなことでもメリットとデメリット、両方の面があって、すべてを選択することが出来ない以上、ひとはどれかをとってどれかを捨てて生きている。どちらがいいとは言い切れないのが普通だ。自分でも迷うのに、ひとさまに、これは絶対正しい、とかなかなか言えない。それを言えるときというのは、にっちもさっちもいかないような危機が迫っているときだ。この道はデメリットが大きすぎるので気をつけろ、と、危険を警告するときだけだ。
最近PTAやってるんだが、改革することが良いこと、という価値観に、まるでせかされているかのような印象を受ける。改革にもメリットとデメリットがある。保守にもメリットとデメリットがある。それを考えずに改革はとにかく良いことである、という価値観は危うい。ものごとの一面しか見えていないからだ。
特に最近は、なにかの危機に煽られているかのような、急激な動きが気になって、私は逆に、動きを止めるほうに回りがちになってしまう。人間、歳をとると保守的になるってこういうのなのね💦みたいな気になってるのだ。むやみな変化はデメリットのほうが大きく見えるのよね。
安定していて、省エネで、小さい。みたいなほうが、今の時代はいい。改革というのは、わりと安定していてエネルギー(資金と気力・体力)がたくさんあるときにやるものだ。今やるものではない。今改革をするのであれば、なんらかのかたちでみずからのエネルギーを溜める行動を、先にしなければいけない。なるべく足場を固め、盤石な状態で改革をするべきだ。転んだら再チャレンジもできない、みたいな状況でやってはいけない。今ほど、「小さくて、軽くて、省エネで、安定しているうえに、変わらないこと」の価値が高くなっている時代は無いと思うんだが。世の中がものすごい勢いで変わっているので、【変わらないための努力】がむしろ必要だ。
なぜこの人はそれほど【改革をせかされている】気になっているのか。
その原因を、目をこらして探ってしまうのだ。
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