見出し画像

昔、脚本術を習っていた。結構有名な先生だ。松竹シナリオ学校の教師だった人で、寺山修司とか知り合いで、三島由紀夫とか美輪明宏とかリアルに知ってて、脚本業界の重鎮。脚本業界トップクラスの人だった。水戸黄門とかの脚本ずっとやってた人。すんげえー厳しかった。私は悪い生徒だった。ろくにシナリオを仕上げられなかった。怒られるんで、何書けばいいのかわからなくなったくらいだ。

脚本の技術、というよりも、とにかく精神性をしつこく言われた。

社会的弱者やマイノリティでないと、社会の暗部が見えないんだよ。

すごく頭の良い勉強のできるエリートよりも、社会に虐げられてる人の方が脚本は面白いんだよ。それは、視点が違うからだ。

というのを、しつこくしつこく言われた。

Webtoon見てるとそれすごい思い出すんだ。Webtoonは、いずれ欧米経済が不安定化して衰退し、世界が多極化し、中国の台頭、新自由主義によるグローバリズム&リージョナリズム、長年の異次元金融緩和による日本円通貨価値の暴落などを見越して、早くに外貨を稼ごうとしていためざといエリートがたくさん参入している業界だからだ。ベンチャー企業のエリートが多い場所。簡単に言えば、新自由主義=ネオリベ臭い場所だ。いまどきの社会的弱者はネオリベラリズムに虐げられてるので、ネオリベラリズムには近寄らないから、とにかくWebtoonはエリートの多い場所になっている。

Webtoonはいずれ変化していって無くなってしまうかもしれない文化だ。漫画は細々と残っても、Webtoonは100年後は残らないかもしれない。今、どれほど良くても。そういう視点はいつも必要で、それでもそれが大事な活路の一つになるかも知らんから手を出してるんだけど。というくらいに、ここから数年の経済的な変化はしんどいだろう。経済そこそこ詳しい人は、MMTに引っ掛かってない限り、しんどいことはもうとっくにわかってるんですよ。

脚本術の先生が言ってたようなことが、よくわかってる、もともとの物語業界の人間の参入がないと、日本のWebtoonは興せないのではないか。物語業界って根本的なところでエリートに興すのは難しい。特にサブカルはそうだ。弱い人でないと視点からしてなかなか面白い物語が書けないんだけど、弱い人はWebtoonには近寄りにくい構造になっている。

日本はもうすっかり、金勘定だけすごいして文化面がすっぽ抜けている国だ。韓国ドラマとか、すごい早いうちにジェンダーがよく理解できている人がアドバイザーに入っている気配がしていたんだけど、日本はその頃、「ジェンダーって何?」と言っていた。少女時代が大流行している時に、日本は「アイドルは歌は上手くなくて良い、かわいそうなくらい頭が悪い方が売れる、視聴者がコンプレックスを刺激されるから」と言っていた。他国は商売と文化の兼ね合いやバランスを考えて施策を打ってくる。それが結果的にビジネスの盤石さを産む。日本は文化面の良質さをかなぐり捨てて、金勘定さえしてれば勝てる、といつも思っているような幼稚さがある。文化なのに文化面かなぐり捨ててどーするのか。みたいな気になっている。文化をとって一時的に負けることも大事だ。そういう創る側の矜持も必要だよなあー。金勘定とは別のレイヤーをいつも意識してないといけない。

ネオリベラリズムとは別の文脈。

負けるかな。そんなこと言ってたら。負けそう。そもそも金銭的余裕がないとリスクもとれないし、文化面の良質さをとることすらできない。貧すれば鈍する、か。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?