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母のことと子ども時代のこと

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夭逝した母にまつわる思い出とか、自分の子どもの頃のこととか。
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#思い出

翼をくださいに思うこと

子どもたちが『翼をください』を歌っている。しかも気持ち良さそうに。それが耳障りで仕方がない。あからさまに歌わないでとは言えないのだが、大嫌いな歌なのでトイレに逃げ込んだりして避けてしまう。 私が中学に入った時には、母の容態はだいぶ悪化していたが、まさか本当に死ぬとは思っていなかった。それが亡くなってしまい、衝撃的な現実に否応なしに向かい合わざるを得なくなった。 『翼をください』は、中学1年の時に学校の全体合唱で歌うものとして、校歌の次に覚えさせられる歌だった。母を亡くした

ばあちゃんのこと

ばあちゃんは、 一年中ぴっちりと引っつめた低い位置のおだんごヘア。 かっぽう着のポケットにはクリップ、輪ゴム、小さなネジなど謎の小物がいっぱい。 痒いところも痛いところもオロナインを塗る。 お腹の調子はすべて正露丸で整え、風邪症状は養命酒でやっつける。 母が亡くなり、家事は父方の祖母がしてくれた。成長期の子どもが4人もいると、食事の支度だけでも大仕事だ。隠居生活から引きずり出されたことを恨む気持ちもあったんだろう。私たち姉妹に対し、いつも厳しく批判的で、決して温かい

呼び名の由来

うっと、という呼び名は小学校の時についた。 名前がゆきこ、なので、ゆっこちゃんと呼ばれていたのだが、ゆっこ→ゆっと、と変化し、しまいには「ゆ」の母音の「う」が残って、うっとと呼ばれるようになった。 うっと、なんてあまり無い呼び名だ。 ゆきこ、から、うっと、を簡単に想像することもないだろう。 だから私はこの呼び名がとても気に入っていて、中学以降看護学生の頃までも新しい友だちに「うっと」と呼んでもらっていた。 さすがに仕事をするようになってからは、職場の先輩に「うっと、