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台湾的音楽 珂拉琪 Collage 耽美でダークな世界で響く多言語歌唱

先月に出演したJ-WAVE「SONAR MUSIC」のネタを引っ張るつもりもないのですが、前回に書いた記事で実は台湾音楽でもう一組OAしたかったアーティストがいると言いましたので、その件をお話しできれば。

紹介したかったアーティストは、珂拉琪 Collage (日本表記:コラジ)です。実は、OAでは時間の関係で、ラストのあたりでBGMで流してもらっていました。台湾音楽好きの方の中では、すでに知らせている存在ではありますが、私も紹介記事を書かせてもらえれば。

珂拉琪 Collage (日本表記:コラジ)は、男女ユニットで、ボーカル夏子とギターのHunter Wang(王家權)で構成されています。ボーカルの夏子、名前は日本人のように感じますが、家族が日本人など日本にルーツがあるという訳ではありません。

音楽としては、メタル寄りのロックが根底にありつつも、打ち込みや焦燥感があり、色でいうと黒。ダークさ強めな感じ、といったところかなと思います。

彼らの特徴は多言語での歌唱。台湾の音楽は多言語である、ということはよく知られていますが、彼らは台湾語、英語、アミ語、そして日本語など多くの言語を使います。1つの曲の中にいろんな言語が入り混じるので、台湾語やアミ語かと思って聴いていたはずなのに、急に馴染みのある日本語が飛び込んでくるという不思議な体験をします。

例えるならば、彼らの作り出す音楽の迷宮に入ってみたら、急に聞き馴染みのある言葉に出会う。でも、それが迷宮の出口になるのではなく、より深い世界に引きずり込む手立てになっているような。抜け出すことができない怪しさがあるのに、喜んでそこに入りたくなる。耽美な雰囲気が漂っているような音楽です。

1つの曲の中で2つ以上の言語が入るのは面白いなと思いつつも、J-POPも途中で英語が入ることもありますので、よく考えたら1つの曲で2つの言語が入っていますね。耳馴染みのない言葉の響きを楽しんでいたら、急に自分たちの理解できる言葉が飛び込んでくるという不思議な経験は、英語を母語にしている人たちが、J-POPを聴く時の経験と近いものなのかもしれない、と思っています。

さて、珂拉琪 Collageが、アミ語も選択しているのは、夏子がアミ族のルーツがあるのも理由かと思います。台湾語も、やはり自分たちのアイデンティティであるのだと思いますが、なぜ日本語と英語をチョイスしているのかを疑問に思いながら、楽曲を聴いていたのですが、その答えになりそうなことが、自分のポッドキャストにありました。自画自賛のようで大変お恥ずかしいのですが、そちらも紹介させてください。

ポッドキャストでは、台湾最大規模の音楽アワードである、金曲奨(Golden Melody Award)のことやトレンドについて、授賞式にもアーティスト関係者として参加した台湾人の友達に聞いています。
そもそも金曲奨は、賞の部門が音楽ジャンルではなく、歌っている言語によって分かれています。私にとっては、原住民語で歌うアーティストの存在も知るきっかけにもなりますし、アーティストは自分にルーツのある言語を選んで楽曲を発表しているのかと思っていましたが、最近のトレンドは少し違う、ということでした。

《要約》
自分のアイデンティティやルーツのある言語を使って音楽をすることは、中国語での歌唱と比べると競争も少なくて安泰と考えている人は、ほとんど居なくて、常に新しい音楽を作りたいと思っている。アーティストは、他の言語を使ってチャレンジをしてみたい、とにかく良いものを作りたいと考えている。自分の作った音楽には、ニュアンスがピッタリだと思う言語があったら、それを使う。特に、今の若者はその意識がある。例えば、夏子もそう。

Podcast「你好你好」#023 台湾音楽 金曲奨 授賞式に行った人から詳しく聞いたこと


(上のリンクは、タイムコード20'50"くらいから聴くと、最短で上の引用箇所のところに辿り着きます。)このポッドキャストは、2022年のインタビューなので、少し古くなっているかもしれませんが、その翌年の2023年に珂拉琪 Collageは、第33回金曲奨で最佳新人奨(新人賞)を授賞していますので、そのトレンドが下火になっていることはないと思います。今年も珂拉琪 Collageは、台湾の大型フェスにも参加しています。

日本語が混じる、英語が混じるということも、自分たちの表現したい世界に対して、ピッタリとくる言葉として選んでいること。個人的には、日本語をチョイスしてくれているのは、有り難いことだなと思っています。

ちなみに、最新楽曲は、Spotifyなどの世界規模の配信サイトでは無く、「StreetVoice 街聲」に先行して公開されています。台湾のインディーズ音楽のシーンで非常に重要なサイトで人気を博していることからも、台湾での支持具合が分かります。

「StreetVoice 街聲」ってなに?という方は、過去の記事でご紹介しておりますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

もちろん、Spotifyでも珂拉琪 Collageの音楽はお楽しみいただけます。


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