見出し画像

台湾的音楽 MUSA 明馬丁 ブエノスアイレスと台湾をピアノで結ぶアーティスト

11月5日に台湾で金音奨(Goleden Indie Music Award)が発表されます。
こちら、英語表記にもあるように、台湾のインディーズ音楽の作品に贈られる賞です。

ノミネートされたアーティストの中で、最初に目がいったのは、MUSA 明馬丁。

明馬丁は、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ、台湾在住のアーティスト。作曲、編曲家であり、ピアノ奏者でもあります。これまでも、素敵だなと思うアーティストの楽曲のアレンジに、彼が関わっているともあったので、アレンジャーという印象が私の中では、強かったのです。

金曲奨でも、明馬丁はノミネートされているじゃん!と思った方。
すみません。見落としていました…。言い訳をすれば、コロナ感染後、後遺症みたいなもので、1ヵ月くらい不調だったんです。ちょうどその頃に、金曲奨のノミネートがあったもので、ほぼチェック出来ていませんでした。

言い訳はさておき、ノミネートされているアルバム『ON』は、明馬丁のソロアーティストとしての魅力が詰まっています。
彼の奏でる、ラテンやジャズをベースにしたビアノの音色に、エレクトロ要素が入った11曲が収録されています。ゼロ年代のクラブジャズの気持ち良さ、実験音楽のような歪んだ音色、二胡との共演など、各曲の個性が光っていて面白い作品です。

「On Love」Musa明馬丁 feat. 9m88 & Liso

9m88の歌声もしっとりと響いて、大人な楽曲は、何度でも聴きたくなります。王道なジャズな雰囲気もありますが、単に王道っぽさを真似ているということではないからこそ、何度も聴きたくなるんでしょうね。
何と言うか、ものすごく濃厚で重いダークチョコレートで出来たクラシックなケーキよりは、濃厚なチョコレートケーキにも関わらず、食べた時にある 軽やかさがアクセントになっていて、濃厚だけど何度でもリピートして食べたくなるような…。秋の夜長に良く似合う曲だなと思っています。
この楽曲、歌詞はとろけるほどに甘い愛情が表現されていて、それがまた素敵です。

「On Friendship  (feat. 阿爆 (阿仍仍) 」

note記事でも、たびたび登場している、パイワン族をルーツに持つアーティスト、阿爆をフィーチャリングしている曲です。
ピアノの音色とエレクトロの打ち込みの音がカッコ良く響き合っています。エレクトロの打ち込みが多いところもあれば、今度はピアノが主役になる、その緩急がカッコいい。ラテンを感じるリズムに、パイワン族の言葉が乗り、音楽、言葉、楽器、それぞれが異なる背景を持つ文化が混ざり合っていて、一言で言うとボーダレス。多様性を音楽にするなら、こういうことかもしれないと思いながら聞いています。

この曲は、金音奨(Goleden Indie Music Award)では、最佳電音歌曲獎(エレクトロ楽曲賞という感じですかね。)に、ノミネートされています。

ちなみに、明馬丁は、阿爆の楽曲「Thank You」ではオルガンを演奏しています。

「Thank You」
この曲は、彼女の代表的な曲のひとつですね。

明馬丁のアルバム『ON』は、コラボするアーティストによって、曲の雰囲気も個性も変わっていき、とても面白いです。彼のピアノを軸にして、各曲の強い個性が、どんどん広がっていくようで、次はどんな曲が出てくるんだろう?とワクワクしながら聴くことが出来るのが良いなと思っています。

収録曲に中で、"カッコ良さ" を強い個性にしているのは、次に紹介する曲だと、私は思います。

「On Violence (feat. 梁文賓)」

収録曲順に再生する際、この曲の前曲は静かに終わり、次の曲は静かに始まります。だから、「On Violence」は、静寂を破るような感じのアップテンポと鋭さをより感じて聴き始めることができます。終わった後も、まるで嵐が去っていた後のような、呆然としてしまう感じがあります。
二胡とのコラボレーションも本当にカッコいい。二胡って、のんびりゆったりと印象があったので、激情型の演奏があることを知り、とても驚きました。(よく考えてみれば、そりゃ弦楽器なんだから、どんな音色でも雰囲気でも出せますよね。恥ずかしい話です。)

少し余談ですが、アルバムの収録曲の順番って、CD全盛期の頃は、聴くときの楽しみのひとつだったように思います。アルバムの世界観を、曲順で体験するというか。そういったことは、デジタルに移行してから減っているように感じています。
それは単純に、CD全盛期に、私は学生だったから、時間もあり、そういうことを1日中考えることができたけれども、音楽がデジタル化して、自身も社会人として忙しくなっているから、当時のような聴き方が出来なくっているのかもしれませんが…。

どちらにしても、アルバムのコンセプトや、曲の展開も、全てを楽しく味わい尽くすことが出来る作品だと思います。

金音奨(Goleden Indie Music Award)の発表は、11月5日。
彼は、作品賞の他にも、収録曲でもいくつかの賞にノミネートされています。結果はどうなるのかも楽しみです。

明馬丁の作品は、Spotifyでも聴くことができます。
ぜひチェックしてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?