ギリシャ神話 ヘラクレスの冒険 レルネーのヒュドラー退治とタンパク質合成

レルネーのヒュドラー

エキドナとテュポーンの子供。
レルネーの沼に住み、9つの頭を持つ水蛇。
触れただけで生きとし生けるものを絶命させる世界最強の猛毒を有していた。
ヘーラクレースは始め、鉄の鎌でヒュドラーの首を切っていったが、切った後からさらに2つの首が生えてきて収拾がつかない。しかも頭のひとつは不死だった。
従者のイオラーオス(双子の兄弟イピクレスの子)がヒュドラーの傷口を松明の炎で焼いて新しい首が生えるのを妨げてヘーラクレースを助けた。
最後に残った不死の頭は岩の下に埋め、見事ヒュドラーを退治した。

またヘーラクレースはヒュドラーの猛毒を矢に塗って使うようになった。

この物語のキーマンは、イオラーオスであり、イオラーオスはm RNAである。

生命現象の中で重要な働きをするタンパク質の設計図はDNAにあるが、直接DNAからタンパク質を合成することはできない。

DNA上の情報は、いったんメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、翻訳という過程を経てアミノ酸がたくさん連なったタンパク質を合成する。この翻訳で重要な働きをするのがリボソームとトランスファーRNA(tRNA)。

リボソームはmRNAをくわえ込み、 アミノ酸の運び屋であるtRNAは、その中でmRNAのコドンを認識する。 そして、リボソームの酵素作用によって隣り合ったアミノ酸がペプチド結合をし、ペプチド、さらにはタンパク質となる。

このタンパク質情報はコドンと呼ばれコード化されている。このペプチド鎖合成を終了させるのが終止コドン。どのアミノ酸にも対応しないコドンである。

つまりイオラーオスの松明が、この終止コドンとなる。

ヒュドラーが、九つの頭を持ち、一つは不死であるのは、このタンパク質合成のアミノ酸配列の開始コドンが9種あり、最も多い開始コドンのメチオニンが不死に相当。開始コドンによりペプチド鎖が発生するから。

ヒュドラーはつまりタンパク質合成を担うトランスファー RNAであり、タンパク質合成の場であるリボソームがレルネーの沼にあたる。

ヒュドラーがエキドナ(イオンチャネル(タンパク質))とテュポーン(輸送体)の子である意味がわかる。

ヒュドラー(トランスファー RNA)のもつ猛毒は、水素結合を指す。コドンを持つm RNAとアンチコドンをもつt RNAの間には水素結合ができる。

水素結合

電気陰性度の大きな酸素原子や窒素原子に結合した水素原子が分極して、酸素や窒素原子が近づくと強く引っ張られる性質。かなり大きな結合エネルギーとなる。

ヘラクレスがこの猛毒を矢に使うようになったとは、DNAの塩基同士の結合が水素結合である事に結びつく。
つまりヒュドラーの毒は酸のH +(水素イオン)を指す。
ヒュドラーHýdrāつまりhydrogen。

こうしてDNAからタンパク質合成が行われる機能が獲得された。




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