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赤と青とエスキース(青山美智子/PHP双/本屋大賞ノミネート受賞作品)

<著者について>

青山美智子さん

‎大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。『お探し物は図書室まで』が2021年本屋大賞2位に選ばれる。


<本屋大賞とは?>

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2004年に設立された、NPO法人・本屋大賞実行委員会が運営する文学賞である。 一般に、日本国内の文学賞は、主催が出版社であったり、選考委員が作家や文学者であることが多いが、本屋大賞は、「新刊を扱う書店の書店員」の投票によってノミネート作品および受賞作が決定される。


<あらすじ>

メルボルンの若手画家が描いた一枚の「絵画(エスキース)」。日本へ渡って三十数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく。一枚の「絵画」をめぐる、五つの「愛」の物語。彼らの想いが繋がる時、驚くべき真実が現れる!


<感想>→少しネタバレです。

オーストラリアにずっと住む画商の息子でデザイン学生のブーと、1年の交換留学でやってきたレイ。期限付きで交際が始まります。その期限が終わる頃、ブーが推す若手の画家ジャック・ジャクソンがレイをモデルに絵を描きます。レイはエスキースだけ付き合うことに。

エスキースとは下絵のこと。「下書き」ではなくて、本番とは違う紙に自由に描いて構想を練る、頭の中にあるものを、このリアルな世界に落とす最初の作業。妄想と現実を行ったり来たりしながら作品が創り上げられていく「始まりの儀式」レイが最愛の人と気付いたブーは、さてどうするのか?プロローグとエピローグまで、一見独立しているような4編の短編は連作で、この1枚のエスキースで繋がっています。

ジャック・ジャクソンが画家として評価されてゆく時間の流れと共に32年、中には赤と青の対比と人の対比も書かれています。そこかしこに敷かれた仕掛けに、絵が語り出す物語に、ページをめくる手が止まらないことでしょう。人間関係に疲れてる人たちも、人生とは人と比較するものではなくて、自分の色で描くものと分かっているけれど。それでも迷ってる人に優しいのが青山さんの物語に思います。作中のエスキース(下絵)を通じて描かれる32年の時の流れによって、人生には完成がないことを見事に表現しています。

私にとって青山さんの作品が上等なサプリといった感じに思えたのはそんな理由からかも知れません。若い人達には、歳をとるのもいいと感じさせることでしょう。欲しがりな私は、同世代の青山さんに、ハッピーエンドじゃない大人の恋を優しく書いてほしいな、とも思いました。


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