認知症

ふと、この繁華街の写真をみたとき、思い出すのは、認知症を患った方が、県外をまたぎ、大阪の繁華街に紛れ込んで、おどおどと不安な様子をみせていた、あの日。

私は、不思議と、仕事ではなく、本当にプライベートな時間だのに、いわゆる、徘徊、という認知症の核の部分の障害ではなく、周辺症状により、困ってしまう結果となる行動で、不安そうな高齢者に出会うことがある。

別に意識している訳でも、じろじろみている訳でもない。わたしは、どちらかというと、根暗だし、俯くか、一点をみつめてがむしゃらに歩くので、余裕がない。

だからかもしれない。大多数の人間には、怯えてしまうが、同じ怯えている人間の匂いは感じやすいのかもしれない。

カバンをもたず、飲食店街をキョロキョロしてあるく高齢の女性。わたしは、「こんにちは」とはなしかけた。「どうしましたか？」とはいわなかった。わたしなら、そのほうが、いいからからかもしれない。

認知症の方に対して、高齢者分野に、20代は全ての職業人生をついやしてきた、わたしが、おもうことは、主に短期記憶はうすれやすいが、感性は鋭い。そりゃ、認知症だからと、オムツを使用するようになったからと言って、人生の荒波をのりこえてこられているのだ、もちろんプライドだってあって然り。

その女性の肩をそっとなでた。
彼女は、どこかの地名を言った。
帰りたい、ともらした。
わからない、と困惑した。
わたしは、彼女が、ポケットからとりだした紙をみた。そこには、福祉事業所の連絡先が、かかれていた。

大丈夫ですよ。

大丈夫。

わたしも、丁度、同じとこにかえりますから。
と話すと彼女は、やっと笑った。

警察に連絡して、安全確保が第一なんだろうけど、とりあえず、事業所に連絡した。
先方も探していたらしい。
すぐに電車で家族と迎えに来てくれるとのこと。

名前もしらないし、出会うことも、もうないけど、元気でね、と心の中でつぶやいた。

そんな少し前、わたしは、出勤途中に、頭から少し血をながして、タオルでおさえながら、あるいている高齢の男性とすれ違った。あきらかに、異様であるし、まず、心配が先にくる。だれかが、タオルをかしてあげたのだろう。男性に、こんにちは、とはなしかけると、大丈夫ですから、と足早に去ろうとする、わたしは、とりあえず、職場がもう近くだったので、一緒にすわろうと、声をかけた。背中をさすった、手当て、という、手のぬくもりは、ほんとうに、時には会話の代わりをしてくれる大きいもんだ。彼は頭をおさえながら、座ってくれた。まず、傷のチェックと、上司に確認と、救急車か、警察に連絡を検討する。

彼のバイタルはまずまず安定。彼とはなしをすると、ニコニコと昔話をする。昔すんでいただろう家や、家族、そんななかで、名前がわかった。あとは、心配されているだろうご家庭の連絡先がわかれば、、。そのとき、ふと、記憶を活用しようと思った、どうなるかわからなかったが、わたしが、市外局番をリズミカルにいうと、かれは、少し数字をつづけた。これなら、もしかしたら、わかるかも、誰からも教えてもらった方法ではないが、数回、リズミカルに番号をいうと、彼はつづけて、最後まで自宅番号らしきものを言ったのだ。すぐに、警察に連絡している、救急車に、連絡している上司のとこにいき、その長い、リズミカルな、大切な数字を伝えた。

ご家族がとんでこられ、怪我も大事にはいたらず、本当によかった。

徘徊、、

本人には目的があって、外出するものの、わからなくなる。
家族は、毎日毎日、見張らないといけない思いと、きがやすまらない疲れと、リアルなADLの介護面で、本当に大変だ。こんな一言にはおさまらない。発狂してしまうことさえ日常な家庭もある。現実だ。

わたしが、一番最初に実習したときは、措置の時代。今の介護保険とは、全くちがう。介護は家族がするもの、レスパイトケアなんて言葉が日本には全くなかった。

若年認知症、このことにも、また、ふれたい。

これからも、たくさんの、徘徊の方と偶然に出会える自分でありますように。無力だからこその足掻きです、笑。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました！