人事担当が「自社の文化」を褒める難しさと第三者視点の重要さ

人事担当が「自社の文化」を褒める難しさと第三者視点の重要さについて書きたい。

先日、某社の採用担当が、好きな社内用語を並べ話題になっていた。

内容については敢えて触れないが、どの言葉を見てもいわゆる「いい会社感」が伝わってくる素敵なフレーズだったように思う。ツイートの拡散に伴い、同社で採用担当を務める他のメンバーからも次々と新しい言葉が呟かれた。

と、ここまでであれば微笑ましいエピソードである。ただ、本件をキッカケに様々な意見が飛び交った。これが友人や「友人の友人」しか見ていないFacebookならばよかった。

Twitterとこの手の話題は相性があまり良くないし、そのままの意図で伝わる保証もない。

「何が言いたかったのか?」と言われれば“働いている会社が大好き!もっと知ってほしい”だったに違いないが、そうじゃない情報の方が広がってしまう結果を招いたように思う。

会社の顔としての視座

人事担当者という目線であれば、自社は「売り物」でありそれを褒め称えるのは当然のことなのである。それは決して非難されるようなことだとは思えない。

ただ、人事部というポジションを考えると(会社について)思ったことをそのまま発信することはあんまりオススメできない。

このバランスを掴むには、一度人事部門から外れてみるのがいいかもしれない。同社のメンバーが冷や水をかけた理由。その背景が理解できるようになると思う。

会社の中で人事部がどんな立ち位置にいるのか。社内(外)からどんな見られ方をしているのか。そこを俯瞰して見なければならないのだ。

人事部が切り離された部門である場合、組織によっては「天上人」として見られているケースがある。これは尊敬というケースもあれば、やや冷ややかな見られ方をされている場合もあると思う(これは会社や個人差が大きくあると思う)。

耳馴染みのいい言葉だけではなく、それがもたらした実績を並べてみる。ただ発信するのではなく、講師としてこういった言葉を発していれば状況は違ったはずなのだ。

人それぞれで感じる魅力は違う

形のない文化(もの)を褒め称える。この行動を他に当てはめてみたら、何が一番近いのだろうか。社会人としては、ここを俯瞰して見ることができなければならない。

サービスの顔がセールスであれば会社の顔は採用担当になる。この背景があるからこそ、ベンチャー界隈だけでなく、セールス部門で期待された人材が採用担当にコンバートされるトレンドができたのだ。

公で発信するのであれば、己が好きなものを発信するのでなく、「第三者的にここが具体的に素晴らしい」という情報を明確に伝えることが大切だ。

ただ、一年中候補者や社内の人間(加えて人材系企業)とやり取りする中でその目線は薄れていくだろう。

「自分の会社の魅力は自分が思っているものとは限らない」かもしれない。疑ってかかる目。これが大切なのだと思う。

ただし、あくまでも「かも」だ。自分が感じている魅力は自分だけの魅力で会社の魅力に他ならない。それは尊いものなのだ

身の回りの人や会社のメンバー、候補者だけに伝えればいい内容に尾鰭がついて予期せぬ結果を呼ぶこともある。

いつ、どこ、どのタイミングで伝えるのか。今回の件でなくとも意識していきたい。

自分の会社を褒める。その褒め称える裏で、どんな顔をしている人がいるのか。「人(の)事」を担うポジションであるならば、そこまでの考える想像力と覚悟が必要なのだと思う。

具体的に言えば、「人事担当に『あなたと働くことを期待しています!』と言われ続けた結果、最終的に面接で落ちてしまった人間」が今回のメッセージを見たときにどう感じるのか。

そこまで踏まえて考える想像力を持つことで、発信の内容、発信の方法が変化してくると思った。

2020年1月26日、11時9分。最初のツイートを行った方は鍵垢になっていた。

表現の仕方には少し違和感があったものの、人の人生、生き方を他人が否定できるものではないさらに嘘を言ったわけでも悪意があったわけでもない。

おそらく会社から何かの指摘があったと憶測するが、一抹の寂しさを感じた次第だ。

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