カクテル〜一日をこんなに長く感じるのに 一年がこんなに早く過ぎてしまう〜

「かわいたノドに 流し込んだ甘い香り 心が次から次へと 溢れ出す...」

音楽。この年齢(37歳)になると、新しい曲を聴くよりも青春時代やそれ以前、それ以降に聴いた楽曲をよく聴いていることが増えた。

世間が、オリコンチャートからビルボードチャートへ変わったように、僕の中のランキングもオリコンチャートから“オレ流チャート”へと気付けば移り変わっていた。

そんな“オレ流チャート”、“私のチャート”で何年連続ランクインのロングヒットを魅せている楽曲があなたにもあるのではないでしょうか。今日はそんなお話です。

5年前心の底から欲しかったあなたの子どもに私の面影はない

2002年11月7日。今回紹介する楽曲がリリースされて来年で20周年にななる。

3人組のロックバンド「Hysteric Blue」。1999年にリリースした「春〜spring〜」がスマッシュヒットを記録。

年相応(当時メンバーは10代)のフレッシュさ溢れる雰囲気とは裏腹な、どこか哀愁漂う作品性が当時高校生だった僕のココロを貫いた。

中でも2002年にリリースした「カクテル」はTVアニメ「スパイラル〜推理の絆」のEDテーマでありながら、シングルのカップリングとしてリリースされた。

この「カクテル」が僕の中の“オレ流チャート”で何年にも亘りランクインし続けてる。

何回聴いたのかはもうカウントできない。500回と言われればまぁそんなものかとも思うし、2000回と言われれば、まぁ半日流して日も沢山あったからねと思う。

僕はその曲が気に入ったらずーっと聴いていられるタイプ。それこそずーっとだ。

朝から晩まで同じ曲を聴いてることもあるし、酔っ払って「この曲が聴きたい!」となれば、帰りの電車の中はずっと聴いている。心の中で熱唱している。

「カクテル」がリリースされた2002年に僕は福岡を飛び出し、東京へ出てきた。そんな人生の転換期に聴いていたからなのか。それとも楽曲のテーマ性がそうさせるのか。

僕はこの曲を今も聴き続けている。

恋だって夢だって沢山あるのに

「カクテル」のイントロなしでtamaさんのボーカルから幕を開ける。

かわいたノドに 流し込んだ甘い香り 心が次から次へと 溢れ出す...

学生時代、ヒロインは楽しく充実した恋をしていた。

だが、社会人になると必然的に変わることを求められる。

三年目のオフィスはとっくに慣れきって
代わりにあたしは何かを失くしたの
結婚を罰ゲームみたいに言う大人達
そんなんじゃ夢さえ見れない子供だし
あたしが好きになったくらいの人だから
あなたが選んだ彼女はきっとステキ

元カレと久しぶりに会ったヒロインは、1人「カクテル」を喉に心に流し込む。

きっと今の自分に不満があるわけでもないのだろう。

ただ、甘い「カクテル」は彼女の心を溶かす。

現実を変えたいわけじゃない。ただ、今の状況の自分を俯瞰して見ているだけ。「カクテル」はそういう物語の楽曲だ。

みんな幸せだといいな願うほど
旦那とふたり撮ったハガキ増えてくる
五年前心の底から欲しかった
あなたの子供に私の面影はない

作詞・作曲を手掛けているのは「Hysteric Blue」のリーダーたくやさん。当時、23歳である。

切なく淡い、自分の過去と向き合うラブソング。3分31秒の楽曲は以下の歌詞で締め括られる。

一日をこんなに長く感じるのに
一年がこんなに早く過ぎてしまう
一年をこんなに早く感じるのに
一生をどんなにうまく生きれるでしょう

大人になると1日がどんどん早くなる。今年もあっという間に11月下旬。1年がこんなにも早く過ぎてしまう。

1年をこんなに早く感じる僕は、そろそろ38歳を迎える。大人も大人。自分ではりお兄さん」と面の皮を分厚くして貫いているが世間一般では中年男性である。

ひょっとすると、一生をうまく生きることはできないかもしれない。既にできていなかもしれない。

ただ、自分だけの人生を自分らしく生きることだけはできている。

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