クリスマス
クリスマスイブの夜.
昨年はどうすごしていただろうか.一人でいたこと以外は覚えていない.
今年もお義母さんからクリスマスプレゼントが届くようだ.
去年は小さな絵本だった.僕たちが息子に読んであげるように.笑ってくれるように.
カードには,パパを見守っていてねと.死後の世界などあるのだろうか.
あるならどれほどの人が救われるのだろうかと,呟いたときの気持ちなどすっかり忘れていた.
旅行に行ったり,食事をしたり,ホテルに泊まったり,ミュージカルを観たり,家で過ごしたり.妻とのクリスマスを思い出す.
妻が好きだったミュージカル. 五年前のクリスマスに観に行った. 主題歌は今もよく聴くプレイリストに入っている.愛の季節.
東京の街のイルミネーション.白いコートを着た妻の,瞳に映る光.
長い時間を過ごしたと思っていたが,二人のクリスマスは両手で数えられるくらいだ.何年もすれば,妻がいないクリスマスの方が多くなるのだろう.
三人のクリスマスは,一度もない.
一人のクリスマスを何回過ごすのだろう. 案外何回もないのだろうか.
誰かと過ごすこともあるのだろうか.
妻が通ったキリスト教の学校での,聖歌や洗礼やクリスマスをきいたことを思い出した.信仰などまるでない.それでも写真の中の息子を抱いた妻は,キリストを抱いた聖母のようだ.
僕が知っているのはこの国のクリスマスだ.
たとえば僕と妻が,息子の眠る顔を見ながら,喜ぶ顔を想いながら,飾りつけたツリーの前にプレゼントを置いておく.もちろん妻にも.
そんな夜を想像する.
雪が降ればいいと思う.
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