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【スターチスの枯花 〜入院の記憶〜「藤吉夏鈴」】23話

⚠️閲覧注意⚠️この先ストーリーが進むにつれ、読む人によっては不快な内容が含まれます。

『お待たせしました!いちごパフェとミルクシェイクです!』
「ありがとうございます」
「もう帰るのかぁ......」
「残念だけど明日からシフト入ってるからね......」
「寂しいなぁ.......」
「そうだね」
「でもいっぱい写真撮れたね」
「夏鈴がカメラ持っててほんと良かった」
「感謝しなさい?」
「夏鈴さまありがたき〜」
「苦しゅうnゴホッゴホッ」
「調子乗るから笑」
「え.....」
「どうかした?」
「ううん、なんでもない」
「夏鈴....それ」
「え?」
「ちょっと待てそれイチゴじゃないよな?」
「......うそ」
『お客様大丈夫ですか!?』
「すみません、お手洗い借ります」
『は、はい!』
「それと可能なら薄い食塩水をコップ2杯分ください」
『かしこまりました!』
「待って!そこまでしなくても大丈夫だよ」
「ダメだ!!!!小さいことがきっかけで大きな症状に繋がるから黙って言うこと聞いてくれ」
「わ、分かった.....」
「喉とか口の中に血液がある感じする?」
「......たぶんする」
「吐き出せそう?」
「......いけると思う」
「痛いところはない?」
「ない」
『すみません、食塩水お持ちしました』
「ありがとうございます。近くに消化器内科はありますか?」
『南にちょっと進んだ所に内科ならあります』
「看板に消化器とか書いてました?」
『調べてみます!』
「すみません」
「ゴホッ.....ゴホッ.....」
「夏鈴、大丈夫だからな」
「うん.....」
「喉の乾燥を感じることあった?」
「まぁタバコ吸ってるから基本的に乾いてる」
「そうだった.....もしかすると気管に傷が入っててそこから出血してる可能性もあるし、前に鼻血出したことがあったろ?あれが再発して鼻からじゃなくて喉に入って血を吐き出した可能性もあるから、落ち着いたら近くの内科に行くよ」
「なんか分かんないけど分かった」
『消化器内科ありました!』
「ありがとうございます」
『その....大丈夫ですか?』
「一旦は大丈夫かと.....落ち着くまでどこか他のお客さんや店員さんの邪魔にならない所で座れたりしますか?」
『個室があるのでそちらにご案内します』
「何から何までありがとうございます......夏鈴、喉の違和感は取れた?」
「ゴホッ......取れた」
「よしじゃあ移動しようか」
『個室はこちらです』
「分かりました」
「○○ありがとね」
「気にしないで、当たり前の事だから」
「分かった.....」
『こちらお使いください』
「ありがとうございます。支払いとか済ませておいてもよろしいですか?」
『かしこまりました』
「レジ行きますね」
『いえ!こちらに伺いますので付いててあげてください』
「すみません.....ありがとうございます」

ーーーーーーーーーーー

『すみません....えーっと彼氏さんですか?』
「はいそれで容態は?」
『落ち着いて聞いて頂きたいのですが、肺がんです』
「stageは?」
『stage3まで進んでます』
「そう......ですか......」
『その聞き方をされるという事はご存知かもしれませんが入院が必要です。そして.....』
「えぇ、分かってます......」
『.....かしこまりました。もしかして旅行中でしたかね?』
「えぇ、転院が可能なら希望します」
『かしこまりました。後ほど担当のものに説明に来るよう伝えておきます』
「よろしくお願いします」
『......杞憂だとは思いますがお気を強く持ってください』
「お気遣い助かります......」
『それでは待合室でお待ちください』

以前、鼻血を出した時に気づくべきだったが途中で夢を諦めた分際が気づけるはずもなかった。
これほどまでに自分の無力さを恨んだことはない。

「○○くん久しぶり」
「.....え!?田村さん!!?」
「名前見た時にまさかとは思ったけどやっぱり○○君だった」
「配属ここだったんですね.....」
「うん、今日藤吉さんの担当するよ」
「夏鈴をお願いします」
「......玲ちゃんとは別れたんやね」
「まぁ.......はい」
「あぁ!ごめん!今する話じゃないよな.....」
「いや!少し気分転換になりました」
「うん.......分かってると思うけど思ったより深刻やから何かあったらすぐ保乃とか他の看護師さんに言ってな?」
「ありがとうございます......」
「.....○○くんの方は元気そうでなによりやわ」
「穏やかではないですが.....」
「そうやんな......あともうちょっとしたら藤吉さんに会えるようになるはずやから今のうちに1階のカフェで休んどき」
「いえ、ここで待ちます」
「そっか......無理だけはしやんでね」
「分かってます」

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