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【スターチスの枯花 〜不変の記憶〜「大園玲」】1話

⚠️閲覧注意⚠️この先ストーリーが進むにつれ、読む人によっては不快な内容が含まれます。

「○○く〜ん......あぁ.....そっか」

○○くんが家を出てから1週間が過ぎた。
ひとまず家事はある程度できるようになったけど、どうしても料理だけが上手くいかない。

「肉じゃが......食べたいなぁ........」

○○くんがいつもしてくれていた事がこんなに大変だったなんて今更気づいた自分が情けないのと同時に気づけなかった事実が悔しかった。

「大学行かなきゃ......」

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『それではペアになって採血を行ってください』
「すみません、先生お願いしても?」
『ええ、大丈夫よ』
「ありがとうございます」
『あなた......もう少し愛想良くしなさい。ナースには愛想も大事よ』
「......すみません」
『......きっと何か理由があるんでしょうがそんな怖い顔してたら患者さんに嫌われてしまうわ』
「気をつけます......」
『悪い子じゃないのは知ってるからちゃんと周りを頼りなさい』

あの日から私は自分の能力が圧倒的に足りてないことに気付かされた。
周りからは当たり前のように「あなたのせいじゃない」と言われるけど、それで終わらせてしまったらあの子に合わせる顔がない。

まだまだ努力が足りない。

『......れでいいでしょ』
『そんなんじゃ足りなくね?』
「なにしてるの?」
『げっ.....』
「........またつまらないことを」
『また澄ました顔して....まじキモイんだよ』
「........」
『無視かよ......』
『もういいよ行こう』

ロッカーに詰まったそれを毎週捨てるのが日課になった。
彼女は○○くんの元カノで彼女たちの中で私が○○くんを奪ったことになってる。
最初の頃こそ訂正しようとしたものの、帰ってくる言葉は「信じられない」だの「気持ち悪い」だの子供みたいな言葉たち。

もう諦めた。

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『いらっしゃい!』
「肉じゃがと....オムライス......」
『.....すごい組み合わせだね笑』
「あ、すみません注文ではなくて......」
『あらそうだったの?』
「......いやすみませんやっぱりお願いします」
『ありがとうございます!』
「......2人前でお願いします」
『珍しいね、今日はお友達と?』
「いえ......今日は大事な人の誕生日で.....その人オムライス好きなんですけどあんまり自分が料理得意じゃなくて.....笑」
『そうだったんだ!てっきり独り身だと思ってたよ』
「えへへ......笑」
『はい!お待たせ!オムライスも帰って温めたらもっと美味しくなるからね!』
「ありがとうございます」
『またお願いしま〜す!』

「誕生日プレゼントなにがいいって言ってたっけ.....」

その時、初めて気づいた。そんな会話してなかったことを。
それどころか今日何があったとかバイト先の話とか今日の実習で何をしたとか、最近そういうのすら話してなかった。

「.........最低じゃん私」

[今どこに居るの?帰ってきてよ寂しいじゃん]

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