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【グラジオラスの花束 〜何度LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう〜「村山美羽」】11話


「うぃ」
「今日も来たの?」
「うるさいなぁ、なぎがバイトとか部活とかで忙しくて暇なんだよ」
「そっか」

美羽が入院してから結冬は毎日顔を出していた。

「先生から宿題もらってきた」
「え"」
「いやまぁそうだよな笑」
「沢村くんがやってよ」
「なんでだよ」
「まだ昏睡状態ってことにできないかな」
「無理だろ、鏑木先生も来てるんだから」
「うぅ.....たしかに」
「笑笑」

花瓶の水を替え、新しく買ってきた花を挿す。

「そういえば沢村くんの演奏観れなかったなぁ....」
「たしかに」
「もうやらないの?」
「あ〜.....そういえばなんかバンドに誘われたんだよね」
「バンド?」
「うん、元軽音楽部の人に」
「すごいじゃん」
「でも迷ってるんだよね」
「どうして?」
「自分がそこまでの人じゃない気がして」
「.....珍しいね」
「え?」
「いや普段あんまり悩まなさそうだから」
「そう?」
「やってみたら?沢村くんが弾いてるとこみたいし」
「う〜ん.....」
「かっこいいと思うけどなぁ.....」
「そんなこと言ったら僕だって村山のパフォーマンス観たかったのに」
「.....そっか」

いつもと違い、思い詰める美羽の目線に気づいた結冬はこれ以上聞くことが出来なかった。

「沢村くん、ここ座ってくれる?」
「なに.....?」

村山のベッドの足元に座る。

「これお姉ちゃんにも話してないんだけど.....私、たぶん視線恐怖症なの」
「.....視線恐怖症」
「知ってる?」
「聞いたことはある」
「昔からずっと可愛いとか美人さんだねとかずーっと注目されつづけてさ」
「うん」
「小学校に入って嫉妬の対象になったり、中学生になったらストーカー紛いなことされたり、それこそ.....」
「村山.....」

美羽の目に涙が浮かんでいたのに気づき、結冬はハンカチを渡す。

「.....だから人の視線が怖いの」
「そうだったんだ.....」
「.....でもね」
「うん」
「沢村くんとなぎと瞳月は私の中身まで見て接してくれるからさ.....」
「.....」
「すごく嬉しくて.....」
「分かってるから...その...もう大丈夫だよ」
「.....うん」

結冬は優しく美羽の手を握る。

「沢村くんの手暖かいね」
「.....なぎが小さい頃ほんと泣き虫でさ」
「うん.....」
「よくこうやって手を握ってたんだよ。そしたらすぐ泣き止んで『結冬の手暖かい』って笑うんだよね笑」
「そっか.....笑」
「ほら泣き止んだ」
「え.....?」
「村山にも効果あるなんてもしかして才能あるかな僕.....笑」
「なにそれ笑」
「笑笑」
「美羽ちゃ〜ん、採血の時k、あらこんにちは」
「こんにちは.....じゃあまた明日」
「うん.....ありがとね」
「宿題ちゃんとやれよ」
「もう...忘れてたのに.....笑」

結冬は優しく笑って病室をあとにした。

「沢村くんだっけ?」
「はい」
「彼氏?」
「え!?違いますよ!」
「そうなの?毎日来てるからてっきりそうなのかと」
「.....ただの優しい友達です」
「ふ〜ん.....じゃあ採血するね」

さっきまで握ってた手に少し暖かみが残ってる気がして嬉しかった。

「で?いつ告白するの?」
「はぁ!?」
「ちょっと!動いたら危ないでしょ!」
「いや!だって大園先生が!」
「冗談よ冗談、笑」
「もう.....笑」
「でももしほんとに好きなんだとしたらちゃんと伝えてあげてね。別れたらそこで終わりだから.....」
「.....もしかして経験あったりしますか?」
「昔のことだから忘れちゃった笑」
「そうですか.....」
「暇な時、相談にも乗れるから気軽に話してみてね」
「ありがとうございます.....」

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