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残してくれてありがとう ー札幌日記3ー

札幌市内にある「北海道開拓の村」に行く。新札幌駅から乗り換えたバスはやがて山(丘?)の中に入り、紅葉がまさにピークで美しい。
小さな観光地と思っていたけれども、最初の建物から大きくてめちゃくちゃ立派なので「さすが北海道」などと意味不明な感激をする。

開拓の村の市街地ゾーン

「開拓の村」は、同ない各地から移築復元された明治から昭和初期の建物が敷地に50棟以上並ぶ博物館。開拓当時の生活が見られる。ただの復元された建物ではなく、当時の本物の建物なので、歴史というか存在感がビシビシ伝わってくる。そしてその建物全部、中に入ることができ、中も当時の生活を再現している。全部を見ることはできなかったけど、中を見ていくとこれが本当に面白いし、外ヅラを眺めるだけの何倍ものことが体感で伝わる。

「敷地内は4つのテーマに分かれてるんですよ。入り口から最初に歩くのが市街地、こっちが漁村で今いるここが農村、奥に山村。それぞれ当時の集落を再現してるんです」と、ボランティアで案内をしている方が教えてくれた。なるほど、ただ置いてあるだけでなく、街とか村をできるだけ感じてもらおうと再現している。手が込んでいる。

建物の移築は、新築よりも解体よりも、いちばんコストがかかるはず。それをできる技術を持つ会社も少ない。1棟の古民家とかを移築するだけで大変なことだと知っていたので、これだけの数を移築したとなると一体いくらかかったのかどうしても気になってしまう。

最後に学芸員さんにそのことを聞いてみると、「一気にではなく何年もかけて合計で80ほど移築してきたので、全部でいくらかかったかはちょっとわからないんですよ。調べるとなると、何年もの道の予算を調べていくしか…」とのこと。なるほど、そこまで調べる気力はない。

木造だったら解体して運ぶという移築の景色がなんとなく思い浮かぶけど、中には石造り、煉瓦造りの建物なども結構ある。本当に大変だろう。

なんでもそうだけど、今の時代、現存するものを残し続けることがいちばんコストがかかる。古くなったら捨てて(壊して)新しいものを買った(作った)ほうが安い。だから何もしなければ必然的に全てなくなっていく。

私は現在福島で震災を記憶する建物を残す活動に少し関わっている。もうほとんどが残っていないし、今後もほとんどが壊されて行くだろう現実がある。大きな理由のひとつは維持管理してくコスト。福島では別の大きな理由もあるのだけれど。だから残し続けることの大変さがわかっているつもりだ。

人は自分が経験したこと以外は、歴史からしか学べない。福島で、遺構を残したいと思っているのは、そういう理由から。これだけの建物を残してくれて、知らない人にも伝わるような「村」を作った北海道に感謝。

「〜村」という観光地に「がっかり」した経験をした人もいるのではないだろうか(私も)。でもここはびっくりするほどおすすめです。村内散策するだけでも気持ちのいい場所だった。

夜のすすきの


(了)

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