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【読書感想文】ぼくと本の「あいだ」より

こんにちは、いぬつかゆうきです。
親知らずを抜くために歯医者に来たものの、思うように麻酔が効かず治療が中断になりました。
一体何のために今ぼくのくちびるはぷよぷよになっているのでしょうか。
しょんぼりしながらも、読書感想文を書いていきます。

読んだのはこの本↓

田中泰延著「会って、話すこと。」(ダイヤモンド社)

1.出会い

この本は半年くらい前に気になって買っていたのだが、しばらく本棚に眠ったままだった。
ぼくは読むスピードが遅いくせにすぐに買っちゃうから、本棚に本が眠りがちなのだ。

この間、東京に行くことがあったので、旅のお供にこの子を連れて行くことにした。
読み始めてみると、ビュンビュン読めた。
ページを捲る手がやめられないとまらない。

内容がどうとかいうより、真面目なのかと思いきやおちゃらけたネタ混じりの文章がシンプルにおもしろい。
かっぱえびせんより中毒性がある。

勘違いされそうだから説明しておくけど、もちろん内容もおもしろい。
ざっくりと要約してみようと思う。

2.要約

この本は会話について書かれている。
だけど、よくある会話法の本とは違う。
いかに相手の話を上手く聞いて、自分の話を上手く話すか。
そこを解くのがよくある会話法の本だとするなら、この本は根本から違っている。

まず基本的に、自分は相手の個人的な話にはあんまり興味がないし、相手も自分のことにあんまり興味がない。
なのに「相手の話を聞かなくちゃ」「自分の話を聞いてもらわなくちゃ」と思うから会話が苦しくなるのだと。

だから自分でも相手でもなくて、外部の話をしようというのが、著者の考えだ。
例えば「今日の天気はいいですね」とか。
だけどそこで「そうですね」と言ったら、会話はそこで終わってしまう。

ではどうやってそこから楽しい会話を続けるのかというようなことが、説明されている。
これ以上は、実際に本を読んだ方が面白いだろうから要約はこれくらいにしておいて、感想に移ろうと思う。

3.感想

この本には一貫して「会話は楽しむためにある」という曲がらない信念を感じる。
そこが好きだった。
この信念はぼくももって生きていきたい。

会話の本だからということで、本の中では各章の初めに著者と編集者の対談コーナーがある。
そこに会話の楽しさが見えてくるし、この人は本当に会話が好きなんだなぁと伝わってくる。

フランクな会話をしながら「会話ってこういうものだよな」ってのを考えていく。
それそれ!ぼくのしたい会話もそれ!ってなる。
だからあの人との話すのが楽しいのか!ってなる。
そして著者は本の終盤にこんなことを書いている。

会話とは、会って、話すことだ。漢字でそう書いてある。その時、「わたし」を知ってもらわなくてもいい。「あなた」のことも説明してくれなくてもいい。話す「わたし」と「あなた」の間に、意味がないことでもいい、意味があることでもいい、「なにか」が「発見」され、「なにか」が「発生」する。その「なにか」こそ、人間の向こうにある「風景」であり、それを共に見たことが人生の記憶になる。だから人は、会って話すのではないだろうか。

「会って、話すこと。」p262より

あえてこの本の結論はどこかというとたぶんここ。
この「あいだ」に発生するなにかを感じることという言葉の表現に出会ったことが、ぼくにとっては一番おおきかった。

ぼくとあなた、2人の「あいだ」に生まれる空間を感じたくて、風景を見にいきたくて、会話する。
その「あいだ」にある記憶こそ、その人と過ごした時間と空間で、相手が恋人の場合、ぼくが愛しく思うのはそこなのかもしれない。

また、これはぼくの好きな料理(dishじゃなくてcookingね!)にも通じるところがあった。

まな板の前に立ったとき、そこには自分と食材の一度きりの出会いが生まれる。
野菜たちは何もしゃべらないけど、相手のことを心で想いながら包丁を握ると、彼らと対話しているような感覚になる。

その感覚もまた、ぼくと食材の「あいだ」に生まれる何かなのかも。
ひとつひとつが出会いだなって。
そんなことを思った。

4.読書は続く

「会って、話すこと。」はおもしろかったから2回読んだ。
ぼくが続けてもう一回読もうなんて思える本は滅多にない。
おそらく「ミッケ!」とこの本くらい。
「ミッケ!」の二周目は、「はいはいここでしょ」と得意げな気分になれるのでおすすめ。

今回ぼくは1つの本を2回を読むと、意外と新しい視点で読めておもしろいってことを知った。
なんてってたって、まだ読んだことのない自分と一度読んだことのある自分は、違うんだから。

さて、次のホンダ。じゃなくて本だ!世界のトヨタ!
ふっと一息ついて、ぼくが次に手にとった本が、友だちが一年以上前にお勧めしてくれたこのHONDA!

土井善晴さんと中島岳志さんの共著「料理と利他」(ミシマ社)

なのだが、ここで土井さんは言っていた。

(料理を)つくるということは、「自然・地球」というものと「食べる」というもののあいだにある。

「料理と利他」p23より

美しいものというのは、ひとつだけでは美しく輝かない。人間と物と自然のあいだにある「と」のところに大切な美が生まれます。

「料理と利他」p43より

まいったまいった。
本を読むとこういうシンクロがよく起きる。
読む順番とタイミングって誰かに測られてる?!と思っちゃう。

さて、次は何を読もうか。

p.s. 麻酔もとれ始め、削りかけの親知らずが痛みを覚えはじめる季節になってきましたね。
では、よい週末を!

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