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イギリスの学歴ビザ政策に思うこと

イギリスが世界大学ランキングトップ50の大学の卒業生に2-3年の滞在ビザを出す、というニュースを見てイギリスらしいなと思いました。日本人の反応も日本人らしくて面白かったので私の個人的な意見と共に少し記録しておこうと思います。

そもそも大学ランキングは卒業生の能力を担保するものではない

まず最初に疑問に思ったのが世界大学ランキングを基にビザを発給することについて。世界大学ランキングは大学の国際的競争力(研究力、国内外での評判、教育の質など)を総合的に評価したものです。一番メジャーでよく知られているのはTimes university rankingsでしょうか。このランキングは論文の引用数、留学生の数、在校生の評価、大学院進学率、研究の外部資金の割合などをもとに作成されています。このランキングはもしかすると大学の評判を気にする受験生などには重宝されるかもしれませんが、ビザを発給する基準とするとなるとあまり納得がいきません。

まず、大学の研究力というのは論文の引用数云々以前に予算が多い方が圧倒的に有利です。そのためこのような大学ランキングで上位を独占するのはお金のある大規模大学ばかりです。さらに研究に予算をつけるにはお金がかかるため、国外から留学生をたくさん呼んで外貨を獲得する必要があります。留学生は莫大な授業料を払ってくれる貴重な財源なのです。このようなことをしてお金を稼ぐのは主にアメリカやイギリスなどの英語圏です。そのため、これらの世界大学ランキングも多くがアメリカやイギリスの大規模校がほとんどを占めています。

一方、他の多くのヨーロッパの大学は高等教育を国のための将来の投資として国内の学生には無料か格安の授業料で提供しています。研究にもそこそこ力は入れていますが資金力はイギリスアメリカなどの商業化された高等教育にはなかなか及びません。その代わり、教育の質保証には力を入れていて、国内のどの大学に入っても学部や院を卒業する頃にはどの学生もある一定程度の能力が身についていることを保証しています。むしろその能力が一定に達していないと卒業が出来ません。アジアにも小規模ながら高い教育の質を確保している大学は恐らく複数ありますが資金力や規模の問題でランキングには載りません。

資金を獲得し研究に力を注ぐ英米の大学と質保証に力を注ぐヨーロッパの多くの大学のどちらの卒業生の能力が担保されているのか。一概に世界大学ランキングだけを見て卒業生の資質は見抜けないのではないかと思う理由の一つです。
私個人的には卒業生の成績や何を勉強したかの方がよっぽど頼りになる判断材料になるのではないかと思います。

日本もやるべき?

Twitterを見てて多く見かけた意見はいいぞ、日本もやるべきとの意見でした。おそらくイギリスやアメリカのトップ大学から日本に好き好んで移住して就職する人は少ないでしょうから(給料が母国に比べて激減+奨学金返済するには高給が必要)おそらく来てくれるのは中国、韓国のトップ大学を出たエリートかアジアから英米のトップ大学に留学していた人たちでしょう。彼らも母国で同条件かそれより良い待遇の仕事がもらえればすぐに帰ってしまうでしょうし、今の日本がその優秀(?-ランキングだけでは質保証は微妙なため)な人材を活かせるかというといささか疑問です。このような人材をうまく活かせるのは多くは外資系の大手企業でしょうが、このような優秀な人材が集まれば日本の学生が外資系の大手企業に入社するのは困難になるでしょう。

最後に

日本や中国、韓国などはイギリスアメリカと同様、大学のランキングにこだわりすぎな気がします。それよりももっと何を勉強したか、どんな能力を獲得したかなどを参考にすべきであるし、どの大学も明確な基準を設定して卒業生の質保証をする必要があると思います。ランキングにこだわりすぎると教育を商業的なものにしてしまい質保証ができなくなるという本末転倒なことが起こりかねません。

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