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夏の狼煙

8/7(火)

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・白ごはん
・玉ねぎとわかめの味噌汁(わかめは南三陸のいいわかめ)
・チキン南蛮
・夏野菜の漬物

18時。

彼は仕事の繁忙期に突入したらしい。つい昨日から。
これまでも、「これからは毎日残業になる…。そんな兆しが…。」と話していたが、ついに昨日からその兆しが現実のものとなったようだ。

「20時コース」
とLINEが来たので、うい!と返してから時計をみる。
ふん。2時間もあると思うな。
わたしは料理をしているときは時間の進みを感じることができないようで、目の前の食材をざくざくと切るだけで気づくと20分経っていたりもする。
だから、料理が完成したあとにはいつもぞくぞくしながら時計をみる。
9時とか10時とか、とんでもない時間になっていたらどうしよう、と思う。もしそうだとしても食べるのだけれど。

チキン南蛮のタルタルソースには、レモン汁を入れた。作っている途中で漬物を入れるレシピを見つけて、とてもおいしそうだったので一瞬レモン汁を信用できなくなりそうになった。結果的には、酸味の王道をゆくレモン汁が入った瓶の背中が大きく見えるほどに、夏にはお前がいなくては…と愛を再確認。つんとしない酸味が卵やマヨネーズの間でよい仕事をしている。とてもおいしかった。

前に彼からレシピが送られて来ていた夏野菜の漬物。
YouTubeの動画の背後には、井上陽水の少年時代が流れている。
夏野菜ならなんでも入れていいそうだが、夏野菜ってなんだろう。
色的に鮮やかであれば夏野菜と認定してしまうくらいの選定基準をクリアした野菜たち(なす、きゅうり、大葉、みょうが、パプリカ)を切って容器に敷き詰める。鍋で一煮立ちさせた出汁を、野菜たちの頭から優しくかける。温かいお湯に浸かるのは、人間も野菜たちもひときわうれしいものなのだ。それまでパリッとしていた表情が和らいで、柔和な湯気がキッチンを覆う。粗熱を取ってから蓋をし、食べるまでじんわりと体を温めてもらうとする。

結局、彼が帰ってきたのは22時。
繁忙期の幕開けの狼煙となる夏の湯気とともに、少し遅めの夕飯を食べた。



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