教員がパワハラで自殺に追い込んで「停職3ヶ月」は妥当なのか? ← 他県では免職事例も多々ある
嫌なニュースが有りました。宮城県の県立高校において教員がパワハラで自死に追い込んで停職3ヶ月という処分。
この事件としても許せないことですが、さらに今まさに同じような苦しい状況にある人を絶望させる内容という意味でも腹立たしい限り。
直感的に思ったのが、なんでこんな軽い処分なのだろうというところ。停職3ヶ月。いわゆる罪である懲戒処分ではあるのですが、免職ではありません。直近でコンビニコーヒーのサイズを偽った程度で懲戒免職になった方がいたこともあり、この点について言及されている方も多いです。そんなこともあり、少し調べてみることにしました。
今回の宮城県の事案について
そもそも、処分はどういう内容?
事件の中身についてはニュースの記事をご覧いただくとして、処分の内容について。こちらの宮城県教育委員会の報道発表のとおり。
何に基づいて処分された?
処分の基準となっているのが「教職員に対する懲戒処分原案の基準」というもの。どういうことをしたらどのような処分になるのかについて書いてある文書です。
ここから抜粋したのがこちら。
これを見ると、悪質なセクハラの場合には免職についての記載もある一方、パワハラの場合には「停職,減給又は戒告」まで。
もう少し調べると、これは文科省がテンプレを用意しているようでして、ほぼ同じようなものが文科省のwebサイトにもありました。というか、該当箇所はまったく同じ。
これが最新版かどうかの確証はないのですが、見る限り新しいものは見つけられずでした。
他県でも同様のことが起こり得るのか?
全国での処分の実態は?
納得できるかどうかはさておき、「パワハラでは停職まで」という基準が問題の起こった宮城県、そして文科省のテンプレとしてもあるのが分かった次に気になるのは、それが全国的にそうなのかという点。
この点について、まず実態としてどうなのかを調べてみて見つけたのが文科省の資料で各都道府県での懲戒処分の基準のリスト。パワハラに限らず、飲酒運転やセクハラなどの事案で個々の都道府県でどういう処分をしたのかが一覧で分かります。
そのパワハラ部分の抜粋がこちら。
見ると分かるのですが、けっこう免職もあります。そして、免職が実績としてある都道府県の基準を見てみると、ちゃんと免職も位置づけられています。これは東京都の例。要するに、東京で同様の事例があれば、免職まで行くはずです。
「パワハラでの免職」の基準がない都道府県は?
一方で、リスト上で免職がないケースもいくつか。今回の宮城県がその1つで、以下10県。
ただ、この資料だと2021年6月時点なので、変わっている可能性もあるよね、ということで上記の県の各webサイトを調べてみたらいくつかは変わってました。
ということで、現時点でパワハラの場合に免職の基準がないのは以下の6県。
検証可能にするため、それぞれのリンクを貼っておきます。
宮城県(パワハラという文言はあるが、停職まで)
秋田県(パワハラという文言はあるが、停職まで)
鳥取県(パワハラという文言が基準の中にない)
島根県(パワハラという文言が基準の中にない)
岡山県(パワハラという文言が基準の中にない)
香川県(パワハラという文言が基準の中にない)
「パワハラ」という文言ではないけど、この記述で読むんだ!的な反論があるかもしれないですが、現状としてはこうなってます。
最後に
今回は教員がパワハラで自死に追い込んで停職3ヶ月という処分について、到底理解ができないので、なぜこのような処分になったのかについてちょこっと調べてみました。
今回の事件の起こった宮城県では「教職員に対する懲戒処分原案の基準」においてパワハラが免職処分になりうると明示的に書いてないことが直接の原因と思われます。
ただし、記事で書いてきたとおり、他の都道府県と比較したところそれは決して一般的ではなく、ほぼ全てにおいてパワハラは免職処分にもなりうる旨の記載があり、実態として免職処分にしている事例もあります。
今回の宮城県と同様にパワハラについての基準を定めていない県は秋田県、鳥取県、島根県、岡山県、香川県。問題の当事者である宮城県はもちろんのこと、残りの県についても早急にパワハラが免職にあたりうるという旨の基準に改定するべきと思います。
ついでに言うと、問題の宮城県が文科省のテンプレそのものだったということで、文科省の罪もあるように思います。テンプレそのものの改定とその周知も必要ではないでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?