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【ショートショート】穴の向こうへ

(617文字)

地球に隕石が衝突することが分かった。
回避する術はない。衝突すれば、間違いなく人類は滅びるだろう。
そこであらゆる生き延びる方法が検討された。
宇宙船で運ぶには人類は多すぎる。地下に広大なシェルターを作っても、壊れない保証はない。
そんな時、T大学のM博士がこう提言した。
「時空に穴を開けて隣の世界に逃げれば良い」
そんなバカなとみんな笑ったが、なんとその理論は立証され、ついに各国でその穴が完成した。
しかし日本政府は、せっかく新しい世界に行くのに、必要のない人間は連れていくわけにはいかないと宣言。穴の入り口にはゲートが設置され、高性能AIが新しい世界にふさわしい人間かを判断することになった。
誰もが、自分が通れなかったらどうしようと不安だったが、予想に反してブザーが鳴ることはなかった。
こうして全ての国民がその穴を通って、新しい世界へと向かった。

「それでは首相、我々も行きますか」
「文部科学大臣、今回はご苦労だったな」
最後に首相をはじめとした政治家たちがゲートを潜ろうとすると、けたたましくブザーが鳴って扉が閉まった。
「どういうことだ!?」
「私たちこそが必要な人間じゃないのか!?」
騒ぎ立てる政治家たちにAIが答える。
「アナタタチガイナケレバ、ヒトビトハ幸セニナルトイウ計算結果ガデマシタ」
「なんだと!それじゃ私たちはここで死ねと言うのか!?」
「心配アリマセン」
「何が心配ないんだ!?」
「アナタタチハ、抜ケ穴ヲ作ルコトガ得意ジャナイデスカ」

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