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【ショートショート】社員管理システム

私は広告代理店を経営している。
政令指定都市であるこの街の地元の広告代理店としては最大手だ。
営業担当の社員は50名。
私はこの営業の社員に頭を悩ませてきた。
営業は顧客や取引先との打ち合わせなどで社外に出て働くことが多い。
しかし奴ら、あ、いや、彼らは本当に働いているのか?
営業車を公園の脇に停め、エアコンをつけっぱなしで昼寝をしているサラリーマンをよく見かける。
我が社の社員も同じように昼寝をしているのではないか?
ガソリン代だって会社持ちだというのに。
勤務中にパチンコに興じているものもいるという。
断じて許されることではない。
そんな時、AIを使った社員管理システムの売り込みがあった。
私はこの話に飛びついた。
システムはかなり高額で、多額の借入れをして導入したが、すぐに我が社にあった管理体制を構築していった。
社員にGPSの持参を義務付け、いつ、どこに何時間いたかということも分かるので、得意先周りと言って遊んでいればすぐに発覚する。
さらに毎日、毎週、毎月とそれぞれの報告書を提出させる。
それについての報告会議も行い、今やサボっている社員はいなくなった。
安心だ。
あまりに報告書などが多くて仕事をする時間がないという意見も聞くが、それは仕方ない。
安心には替えられない。

AI社員管理システム導入から半年。
社員は完全に管理下に置くことができたが、売り上げは下がるばかりだ。
これでは本末転倒だ。
そこで私はシステム開発の会社の担当者に電話をかけた。
「管理できているのは良いのだが、売り上げが下がっているのだよ。どういうことかね?」
電話の向こうで担当者が笑いながら答える。
「社長、そりゃそうですよ。あのシステムは管理をするだけですから。売り上げをアップさせるという目的ではないですから」
どういうことだ?きちんと管理して働かせれば、売り上げがアップするのではないのか?
「それでしたら売り上げアップシステムを導入しますか?ただ、その場合、やる気アップシステムと、社内の雰囲気アップシステムの導入も必須になりますが」

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