【日記】相撲はやっぱり心技体だと思った九州場所
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大相撲九州場所、13勝1敗で並ぶ大関同士の決戦とは、一年納めの一番が良い形になりましたねー。
そして琴櫻の初優勝。
印象的だったのは琴櫻の勝利と同時に砂かぶり席で立ち上がり、両手を突き上げるおばさん。知り合いに「映ってたぞ」って言われてるでしょうね(笑)
そして客席で涙するお客さんもチラホラ。ファンは待ちわびてましたからね。
それに反して涙のない表彰式での琴櫻。いいですね、ここが最終目的ではないという意思が感じられる。
それにしても、今場所は本当に面白かった。
ボクは素人なのであくまでも素人なりの感想だけど、相撲はやっぱり心・技・体だなぁと改めて感じた場所だった。
横綱照ノ富士の休場は残念だったけど、万全とはいかなくても、それに近い状況じゃなければ休場しても良いとボクは思っている。
もう、ラスボスですね。
場所前に話題になっていたのは、新大関の大の里。まだ大銀杏の結えない「ちょんまげ大関」ですからね。
初土俵から1年半で幕内優勝2回で大関。すごいことですよ。
このまま一気に横綱かという声もあったけど今場所は9勝6敗。
新大関の場所は難しいと言われるけど、幕内力士たちも研究してきたというのがあるでしょうね。それで思わず引いてしまったところで土俵を割るという負け方が多かった。
でも来年1月の初場所では修正してくるでしょうね。修正力が高いのもこの力士の良いところだと思う。
もうひとり注目されていたのが、新入幕での幕内優勝を果たした後、怪我で番付を落としていた尊富士ですかね。
幕内に帰ってきて、前頭16枚目での10勝5敗。
普通の力士なら立派なモンですが、やっぱりこの力士としては物足りない。
今場所は鋭さというか、重さが足りなかった感じがしますね。初優勝した時の鉄球のような重さを感じる突進力。あの衝撃が感じられなかった。
怪我の影響じゃなければ良いですけどね。
それでも二桁勝利なので、やっぱり地力はすごいものがある。
この若手の二人、心技体でいえば、体と相撲に対する真面目さでここまで来た気がする。つまり、心技がまだまだなので、それが充実してきたらと考えると恐ろしいですね。間違いなくこれから何度も優勝う争いを繰り広げると思う。
若手で言えば、前頭14枚目の阿武剋もですね。前半は優勝争いの一角かと思われたけど後半で失速。でもこれからですよね。
そして今場所で面白かったのが、やはり優勝争いをした大関二人、琴櫻と豊昇龍。
まず豊昇龍は一皮むけた感じたしました。
今までは、立ち合い張り差しでまわしを狙って投げを打つという勝ち方。
立ち合いも合わせるというより自分のタイミングにこだわり、なんというか「勝ちたい」という相撲だった。
それでも身体能力の高さと反応の速さで勝ってきた。でもそれじゃこの先には進めないと思ったんでしょうね。実際、照ノ富士には全く通用していなかったし。
今場所は立ち合いはあまり変わらないけど、張り差しは減って、まず押して圧力をかけて相手を崩しつつ、回しを取って投げるという形が出来てきた感じがした。
解説で豊昇龍の親方である立浪親方が言っていた通り「負けない相撲」ができてきていた。勝ちたいという気持ちより、ようやく自分の相撲に向き合い始めたのかなと思う。つまり「心」の部分ですよね。体と技はあるので。
この人は、この自分の形が完成すると横綱まで行くかもと思わせるに充分だった。
しかしそれが千秋楽、優勝を決める一番では見られなかったと思う。
琴櫻とまともに組んでは勝てないと思ったんでしょうね。突き押しから勝機を伺ったんだろうけど、すでに気持ちの上で負けていたのかも。
ちょっとバタバタして下半身に重さを感じなかった。
ようやくまわしを掴んで勝ちを急いだ投げで墓穴を掘った感じ。
滑ったと言っていたけど、滑らされたという面もあると思う。
そして優勝した琴櫻。
王鵬に負けた一番以外は、非常にどっしりした相撲。
土俵際に追い詰められた相撲もあったけど、どれも見た目ほどには苦しくなかったんじゃないかと思う。その後の投げや押しに余裕を感じた。
もともと恵まれた体格に柔らかい体、相撲の巧さもあるし、この人も技と体は揃っている。でも、なんというか集中力や強い気持ちが足りない感じがしていたんですよね。
どの解説者も言っていたけど、相撲が優しいというか、まず受け止めてから考えるような相撲。モタモタしているうちに、相手が勝機を見出す。これ、父親で親方である元琴乃若にそっくりだなぁと感じていた。
このままでは三役止まりだろうな、と。
それが前に出る相撲ができるようになってきて大関。それでも先場所は悪いところが出てしまっていたし、中盤あたりからポロッと負ける集中力が感じられない相撲も多かった。
それが今場所は常に集中している感じがしましたね。まわしに拘らず、まず圧力をかけて押す。中身が詰まったからこそ、その相撲の基本が効果的に作用していたと思う。相手にとって厳しい相撲。
琴櫻も一皮むけた感じですね。
そして千秋楽では、その今場所やってきた相撲を貫けた琴櫻が勝ったということでしょう。
この調子で行けば横綱もそう遠くないでしょうね。
まぁ、とにかく面白かった。
この二人の大関の「心」の部分の成長を非常に感じた場所。
この二人に大の里の加わって、来年は誰が先に横綱になるかと楽しみだ。
他にも注目の力士がたくさんいる。
若隆景はどうやら三役に復帰しそうだし、熱海富士も負けた相撲でも良いところ見せていた。この人も一皮向けるとグーンと上がっていくと思う。
負け越したけど王鵬も良くなってきましたよね。
終盤まで優勝争いに絡んだ隆の勝などの実力者や若手の台頭。これに待ったをかけるベテラン勢。
とにかく面白い構図が出来上がっている。
そしてボクが思わず応援していたのが獅司。
ウクライナ出身の力士で、とにかく一生懸命なのが伝わってくるのが良い。
負けた相撲でもとにかく土俵際で粘るんですよね。思わず「頑張れ!」って声が出てしまう。
そしてまだ相撲が出来ていない感じ(笑)
まわしを取って形を作っても、そこから攻めあぐねるというか、「あれ?これからどうしよう?」と考えているというか。そんなことはないと思うけど。
逆に言えば、「心」も「技」もまだまだということで、伸び代はかなりあるはず。
新入幕で負け越したからまた十両に下がるだろうけど、頑張って戻ってきて欲しいなぁ。
言いたい力士は他にもたくさんいるけどキリがない。
とにかくみんな怪我なく上を目指して欲しい。
心技体を充実させて、自分の相撲を完成させる姿を見せて欲しい。
そしてどこでラスボス照ノ富士が出てくるか。
そのラスボスを倒して引導を渡せば、時代が変わるはず。
照ノ富士も心置きなく後を譲れるでしょう。