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20年同じ講義をして飽きないのか

僕は2006年以降、アカデミックの世界で社会人、大学生に対して、MBA、経営学の講義を行ってきた。しかしそれ以前にも、外資系コンサルティング会社で経営コンサルタントをしていた頃から、若手コンサルタント育成の責任者として、社内で講義を行い、グロービスなどでMBAの教壇に立っていた。なので、教壇に立つようになってから、すでに20年を超えている。

したがっていくつかの科目は、教え始めてから20年を超えた。その間、何度もテキストを改訂しているが、コンテンツの本質は同じである。そういう話をすると、こう聞かれることが多い。

「20年間同じ講義をして飽きませんか?」

その答えは、以下の通りだ。

「20年間同じ科目を教え続けていますが、一度も同じ講義をしたことはありません。だから、全く飽きないですね」

単なる双方向講義は、インタラクティブ講義ではない

講義には、一方向講義と双方向講義がある。一方向講義とは、大学の大教室で行われている、教授が淡々としゃべり続ける講義である。僕も京都大学でこういう講義を受けてきたが、教授の講義が非常にへたくそなので、2週間で受ける気が失せ、京都大学での講義は2週間しか受けていない。(それでも学年末試験をパスすれば、京都大学は卒業できる)双方向講義とは、教授と受講生が、質問、返答などコミュニケーション、やりとりが発生する講義である。しかし、そのやり取りがどの講義でも定型的に同じようになされているのであれば、それはインタラクティブな講義ではない。

インタラクティブな講義とは、教授が受講生の表情、しぐさなどを観察し、その理解度を推し量り、教授法、コンテンツを変幻自在に変え、受講生の理解度、納得を最大化する講義である。だから、講義内容は、その時々の受講生により変わる。受講生は毎回変わるので、インタラクティブな講義で同じ講義が行われるということは、ありえないのである。

講義の中心は受講生であり、受講生により提供する講義が変わる

講義の目的は、受講生の理解度、納得を最大化し、受講生の行動が変わるきっかけを提供することである。受講生は毎回変わり、同じ受講生でも日々成長するので、教授が伝えるべきメッセージもまた毎回変わる。だから、講義の中心には受講生がいる。

講義の中心は、受講生⇒⇒講義をしながら、教授は受講生の表情やしぐさを観察⇒⇒何が受講生に刺さるのか、メッセージを変え伝え続ける⇒⇒受講生の表情が変わる、目の色が変わる⇒⇒講義をしながら、教授は受講生の表情やしぐさを観察⇒⇒以下、ループ

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このように講義を行うと、同じ講義を行うことなどあり得ない。ある科目は20年以上、年間10回以上講義をしているので、これまでに200回以上講義をしているが、同じ講義をしたことは一度もない。毎回この講義はどういう講義になるのか、受講生と会うまでわからないので、僕自身もワクワクし、講義の開始を楽しみにしている。だから、20年間同じ科目を教えても、飽きることなどないのである。

オンライン遠隔授業により、インタラクティブは更に進化する

このようにインタラクティブな講義を行うとき、教授の仕事の8割は受講生の観察である。教えることは、教授の仕事の2割に過ぎない。様々な環境変化の中、4月から僕の講義はすべてオンライン遠隔授業化した。大学にもオンライン遠隔授業スタジオが完備されているのだが、凝り性なこともあり、2か月かけて、自宅に大学以上のオンライン遠隔授業スタジオを構築した。そのハード面についても別途紹介したいと考えているが、ハードより大切なことは、教授のソフト、マインドである。

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教授の仕事の8割は受講生の観察であると述べたが、オンライン遠隔授業になり、この観察がグッとやりやすくなった。受講生の表情が一覧でモニターに映るからだ。予想以上に表情やしぐさを細かに観察することができ、理解度を推し量りやすくなった。そのため、理解が足りないところを繰り返し、理解したところはさっと進めることができるようになり、講義の効用はリアル集合講義に負けず劣らず、場合によってはそれを超える状況になっている。

このようにオンライン遠隔授業は、インタラクティブ性をリアル集合講義以上に進化させる可能性を大きく秘めており、極め続けることでその効用を更に拡大させることができると考えられる。

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