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台風19号で被災した長野を支援するコラボディナーに参加した話。  「料理人」からのメッセージ

Twitterから広がった#被災地農家応援レシピ。その活動はのちに多くのひとを巻き込み、2020年2/3に持続的な支援を目的とするため、#Cook For Japanとして社団法人を設立しました。

そのひとつの活動として台風19号で被災したりんご農家の徳永虎千代さん含めた若い世代が中心となり立ち上げたクラウドファンディング「アップルライン復興プロジェクト」のリターン品として2/7〜9の3日間、南仏から来日した神谷シェフと日替わりの3人のゲストシェフが信州の食材をピックアップしコース料理を楽しんでもらうという料理人×生産者×支援者が集うコラボディナーが開催され、そこに僕は初日に参加してきました。

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ざっくりと説明しましたが、ここに来るまでに本当にたくさんの奇跡があって、応援してくれる人を増やす為にも本当は色々な情報(今の被災状況や活動内容etc…)を伝えるのが大事ではないかと考えたのですが、僕は料理を作って応援する立場として参加したので何を想い、どんな技術を使って長野(信州)にある食材との向き合ってきたのかを料理人として表現した経緯をnoteに記録として残すことも価値があるのかな?と。

当日出したコースは8皿構成の全てペアリングワイン付き。その中で僕が担当したのは2品。アミューズ(突き出し)と魚料理でした。

料理の担当が決まってからは、まずテーマから決めました。このアプローチはすごく大事だと思っていて、料理は食べてもらうのが前提なのでシチュエーションを始めとした最適なフレームワークが食べる人の口福度を左右します。

普通のレストランであれば不特定多数の人に喜んでもらうように考えるので、旬の食材や季節を感じられるような組み合わせなどを主役とし、料理を構成するのがベターなのですが今回は、アプローチが少し違いました。なぜなら食べてもらう人の目的が「長野を応援したい」と明確な理由があったからです。

なので、まず最初に決めなきゃいけないことは食材ではなくコラボディナーに参加する人がどのような想いでわざわざ長野まで足を運び、僕らの料理の何に期待してくれるのか、そして食べた時にどんな気持ちになれば生産者さんや被災した人達が救われるのかを考える必要があるなぁと。

そこで僕なりに考えた今回のディナーで伝えたかったメッセージは

「生産者との距離」

「信州食材の魅力と可能性」

「ストレスない応援」

でした。

もともと知ってるものも、初めて食べる食材も、料理人が作ることで新しい発見や美味しさを体験しながら応援できて、更にその料理に使う食材を、一緒懸命つくる生産者がサーブしてくれるのは貴重な時間だなぁと思いました。これは生産者側からも同じで自分のつくった食材が料理人によって昇華し、お客さんの反応をダイレクトに感じられるのはとても良い事でした。

もともとある素晴らしい(本当に美味しい)食材。そこに料理人らしいテクニックをプラスしたり、掛け合わせる事でメッセージをより強く伝えられるようにしようと考えました。

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【“長野“を包む生春巻きと信州味噌、みかんのタルト】

アミューズ(突き出し)はコースを物語に例えると序章になります。なのでメッセージを伝えながらも引き込む役割があるのでとても重要です。

ここで僕が大切にしたこと。

それは……

信州から集めた豊富な野菜を食べてほしい。そして農家さんが手で収穫するのと同じように食べる人もできれば手で食べてほしい。今は季節も心も冷えこんでいるかもしれないけど、芽吹きの「春」は必ず来る。

でした。

なので大根を透けるようにスライスし「」巻きの皮として代用。これなら巻いて食べるので手で食べれます。なかにはビーツ(蒸してからマリネ)、雪下人参(グラッセ)、ビーツラヴ(柚子と日本酒のピクルス)を用意し、スライスしたラディッシュ、マイクロセロリ、エディブルフラワー、サラダ水菜をあしらい春を待つイメージを見た目でも演出。

そこにイタリアンシェフとしてエッセンスを加えるためにバーニャカウダーをアレンジしたパウダーを振りかけてあります(アンチョビ、にんにく、トマト、鰹節、塩)このパウダーは野菜の繊細な美味しさを口の中に残す(滞在時間を伸ばす)為に、香りとうま味を意識し調合しました。更に塩分が大根と馴染むことで柔らかくなるので巻きやすくする効果もあります(まさに隠し味!)


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横に添えたミニタルトは実は即興(2日前)に作りました。別のものを用意してたのですが急に虎千代くんが

「みかんも協賛してくださいました!」

へっ????もうメニュー決まってるし、どうしよ…。

でも同じ世代の若いみかん農家さん(善兵衛農園)が和歌山にいて、わざわざ虎千代くんが会いに行って収穫をしたらしいんです。(しかも夜は酒を交わしながら語ってたらしい…青春)

それを聞いたら応援したいなと思い、和歌山×長野ということでみかん×信州みそを組み合わせることに。 

小さなタルトを焼き、下から鬼クルミのクランブル、シードル(リンゴ酒)のキャラメルソース、フォアグラフラン(カステリーナのスペシャリテ)、信州味噌をりんごの皮で作ったジュレで伸ばし、上にみかん。

食べるとまずはサクサクのタルト生地と弾けるような水分を含んだ優しい酸味がある甘いみかん。そこに絡みつくような油分がある滑らかなフォアグラフランにうま味のある信州みそが加わる事で奥深さが出て味の輪郭をハッキリさせる。また鬼クルミのナッツ香がより味を引き立てて、シードルのキャラメルの甘さが全体を包みこむ。

偶然?とはいえ、まさに和歌山のみかんがなければ実現しなかった味で、このタルトの味のバランスのように、育ちも環境も性格も違う若い2人がお互いの良いところを引き出しながらタッグを組むことで、新しい時代を作ってほしいなぁ。と味見しながら願いました。

アミューズはもともと使ったことある食材が多かったので、頭で練った構成をお皿にしてからのチューニングはそこまでありませんでした。なのでどちらかというとテーマに沿ったコンセプト重視で料理できたのです。

そして担当したもう一品の魚料理。実はかなり苦労しました…。

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今回用意できそうなものリストを見た時に2種の魚から選べそうだったのですが、それは

「信州サーモン」と「大王岩魚(だいおうイワナ)」

でした。信州サーモンはレストランでも使っていたので大好きな食材です。お皿のイメージも付きやすいし、長野らしいなぁと思いました。でも使ったことのない食材を純粋に使ってみたい!という料理人としての興味と、まだ知られてない大王岩魚を使う方が、食材の魅力を伝えるのに良いかな?と思ったんです。

まずは試作を作りたかったので大王岩魚を注文して、食べてみる事に。

お刺身で食べたのですが淡白で美味しいしんです。でも思ってたのと違う。これはちょっと時間かかりそうだな…と思ったのが最初の感想でした。

このお皿は料理人ならではのテクニックをふんだんに盛り込んでみたので、別の記事にしてまとめようと思います。




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