見出し画像

【エッセイ】母のもとに

あわただしく朝のルーティーンをこなしながら、
もう家をでる時間だからと
忘れ物がないかな、と荷物を確認する
パソコン、お財布、衣服など、
でも新幹線に乗り込んだあとに
ビタミン剤や充電して準備してたシェーバーを忘れていたことに気づいた。

今回実家にいくのは帰省でも旅行でもないから
忘れ物なんてどうでもいいな。


少しでも近くで
少しでも何かできることをしたくて──


弟からのLINE──
「近くの駅から実家まで車で送ろうか?」
いつもならありがたくお願いするところだけど
迎えてもらうためにきた訳じゃないから
自力でゆっくりと実家に向かうことにした。


ここんところ、ずっと感じることは
自分を産んでくれた親とは
どこか心がつながっているということ。



物理的な距離とかも関係なくて、
過去や未来の時間もつながって──
いろんな感情や気持ちは一つになる。


ローカル線の電車に揺られながら
昔から見慣れた田舎の風景を眺めていると
駅が進むたびに乗客がどんどん降りていって──
気がつけば車両には自分とあと何人かしかいなくなっている。


いつも迎えにきてもらう駅で
更にローカル線のワンマン電車に乗りかえた。

「この電車にのったのはどれくらいぶりだろうか・・・」


高校生の頃、毎日通学で乗っていた感覚がよみがえる──

たしか、毎日11分ほどの朝の通学電車は満員で
初めての定期券を大切に持ちながら、
田舎から街に出るようになったことが
少し嬉しくて、ちょっと大人ぶっていた自分がいた。


それから三倍くらいの人生を歩んできた。

久しぶりにその通学電車に乗ると、
その頃の自分と同じくらいのやつらが何人か乗っている。
部活帰りの学生たちは途中の駅で降りていった。

買い物袋を持った私服の大人ぶった男子、
iPhone片手に足を組んで、
大きな腕時計、背伸びして薬指に指輪までしている。
昔の自分も、こんなふうに見られていたのかもなぁ、
と、ふと、少し滑稽な気持ちになった。


地元の最寄の無人駅に新しい出口ができていた
少し新鮮な気分になって
駅からの吹きっさらしの田舎道を歩き出す──


小さい頃よりも少し目線が高くなった風景は
懐かしくもあり新しくもある。

キックボードをしながら
楽しそうにしてはしゃいでいる小学生くらいの三姉妹とすれ違った。
田舎ならではの遊びかな。

寒い日でも外で楽しくて走り回っていたな、と
時代はかわっても、ひととひとの”遊び”は変わらないように感じた。


実家について
何をするわけでもなく
家族の時間を過ごしている。

少しでも近くで
少しでも何かできることをしたくて──


明日から入院して手術になるけれど
近くにいて少しでも安心を届けられたらと心から思う。



©️2024 Mahalopine


記事執筆のための、いろいろな本の購入費用として活用させていただきます!