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仁平幸春の創作姿勢

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仁平幸春の基本的な文化や創作への考え方です。
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#工芸

私が考える日本的感性とは

私は自分が日本人であるということ、また、日本人の感性をもって制作することを大切にしています。 私が考える「日本的な感性」とは、一言で言うと 「常に緊張感のある調和」 です。 それは非常に洗練された文化だと思います。 融和でも迎合でもなく、もちろん戦いでもありません。その本来の日本人の絶妙なバランス感覚は大変高度なものだと私は思っています。 日本文化の特質はいわゆる「花鳥風月」の「形式」のなかにあるのではありません。 なぜなら、花鳥風月というのは、砂漠なら砂漠の、

私がつくりたい染物とは

私がつくりたい染物とは一言で言えば 「染でしか出来ないことをする」 ということです。 (手染めの場合は手づくりでしか出来ない、ということも加わります) もう少し付け加えるなら 「白生地の時には観えなかったものを観えるようにする」 ということです。 生地素材では絹や麻や綿、ウール、イラクサ、紙、その他いろいろなものがあります。 また糸の太さや撚り、織の組織、さまざまなものがあり、それぞれの魅力があります。 その素材感を、そして、その生地が染められる前には観えな

美はモノにではなく関係性の間に訪れる

私は 「美はモノにではなく関係性の間に訪れる」 という姿勢で制作をしています。 何かを観る時、関わる時にもそういう姿勢です。 作者とモノとの関係、作品と受け手との関係、受け手と社会との関係、使われる場所、飾られる場所との関係。 美はその関係性のなかに「訪れる」のです。 作品が社会へ発信され、関係性が連鎖することは美の増幅を産みます。 作者の制作意図とは違う美が発見される場合もあります。 それは美は関係性の間に訪れるからです。 何かの理由があって美があるのでは

2013年田中公平氏による “ 仁平幸春論 ”

*2013年に田中公平氏に書いていただいた「仁平幸春論」です。 +++++++++++++++ 仁平幸春の創作姿勢は大変シンプルである。 仁平は 「自分の内部の感覚も含む、自分を取り巻く環境全てを‘’素材‘’として捉える」 そして、 「素材と、それに対面する自分の間の“関係性”によって訪れるものを形にする」 ただそれだけだと語る。 彼は基本的に染色による作品を中心に制作しているが、時に染色だけに収まらず、絵画やその他の表現方法によっても制作する。自分の感覚を文