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私がつくりたい染物とは

私がつくりたい染物とは一言で言えば

「染でしか出来ないことをする」

ということです。

(手染めの場合は手づくりでしか出来ない、ということも加わります)

もう少し付け加えるなら

「白生地の時には観えなかったものを観えるようにする」

ということです。

生地素材では絹や麻や綿、ウール、イラクサ、紙、その他いろいろなものがあります。

また糸の太さや撚り、織の組織、さまざまなものがあり、それぞれの魅力があります。

その素材感を、そして、その生地が染められる前には観えなかった魅力を染や文様で視覚化すること、開花させることです。

また、生地の素材感によって、文様はより魅力的で重層的なものになります。

そこに等価に私の個性が存在する、そういう染物を理想としています。

生地と染と制作者の個性が完全に一致している状態が理想です。

決して「自己表現のために布を使う」ということではありません。

素材と制作者は対等の関係です。

しかし、素材を開花させることが出来るのは制作者です。

それゆえに生地によっては「染めない判断・決断」もまた染めの仕事の一つです。

染めることによって、生地の素材感を失うと判断すれば、それは、染めないことが仕事をしたことになるのです。

もちろん、最初につくりたい文様があって、それからそれに合う生地を探すということもします。

しかし、目的は同じです。

素材を開花させる者は、同時に素材に開花させられているのです。

(写真・タペストリー「老木」)


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