見知らぬ人との密着

見知らぬ人とぴったり密着するということが、最近あまりないなあ、と思ったのだった。


一昨年地方に引っ越してきて、満員電車とは全くといいほど縁が切れてしまった。

ローカル線もそこそこ混んでいる時はあるものの、ぎゅうぎゅう詰めには決してならない。

入り口から呼吸ができなくなるほどぐいぐい押され鞄から出し忘れたあんパンみたいになる、という経験はもはや記憶の彼方にある。


思い出してみれば、そもそも地元にいた頃も、東京へ行った時を除けば、見知らぬ人と密着しなければならない機会はまず、なかった。

思い出されるのは小学校や中学校の運動会、あるいは高校の文化祭で行われたクラス対抗の合唱コンテストで金賞に輝きみんなで肩を組んだ時くらいだ。


見知らぬ人との密着は、地方では祭りや学校行事などの非日常的な経験の一部としてある。

一方、東京などの大都市では、駅や電車を使う際に見知らぬ人と密着しやすいため、日常的な経験と言える。


また乗りたいかと言われたら嫌だけれど、東京の満員電車はちょっとだけ懐かしい。

見ず知らずの人と何分かぴったりくっついた時の、基本的に居心地は悪いけれど、伝わってくるその温もりに自分が生き物の間で生きていることを悟るようなあの感覚。


これは地方と都市、どちらがいいという話ではない。

だが、地方と都市について考える時に必要な視点なのかもしれない、とは思う。


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