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文学フリマ香川をふりかえって

2024年7月28日、四国初開催となる文学フリマ香川1に出店者として参加しました。

ブースをシェアしたのは、書肆ミモザの茉莉亜まりさん、とし総子さん、城水めぐみさん。ブース確保後、SNSで「落選してしまった」と悲しみにくれていたまりさんにお声がけしたのがきっかけでした。

普段、家庭が中心のあまり代わり映えしない日常を送っているわたしにとって、まりさん、としさん、めぐみさんと一緒に熱い(しかも暑い)高松の一日を過ごせたことは、大変心地よい非日常でした。

普段わたしが何気なく通りすぎている場所を「ここ、おしゃれですね」と目を輝かせながら眺めるとしさん。何度も「うどんを食べて帰りたい!」とおっしゃっていためぐみさん(なのにスパゲッティを食べさせてしまいごめんなさい…香川県民なのにうどん屋の営業時間をなめていました…スパゲッティはモチモチで美味しそうでしたが!)。わたしは「あら、四国って結構いいところなのね」と密かに鼻高々。

みなさんのゆったりした雰囲気に油断してしまい、もっとこうすればよかったんじゃないか・・・と後になって色々恥ずかしくなったことは、既にお三方にもお伝えした通りです。

撤収後、喫茶店でまりさん、としさん、めぐみさんと語らいながら「高校時代にやらなかったことをわたし今やってるんだな、女学生っぽいな」などと思いつつノホホンと飲んでいたクリームソーダの、ソフトクリームが微妙に溶けかけた色、あれこそ文フリ香川当日のわたしそのものだったんじゃないか、などと。

実は、こうしてどなたかに声をかけて一緒にイベント出店する、というのは、創作活動を始めてから初めてのことでした。

2020年に出店した文学フリマ東京には、店番を頼んだ気のおけない友人との二人参加。四国で文学フリマが開催されると聞いた時、また誘おうかとも考えたのですが、彼女には新しい生活が始まっていたし、何より、関東↔️四国の距離が一番のネックでした。

しかも、家族が変則的な勤務の仕事をしていることや、子供がまだ小さいこともあって、無事当日を迎えられるかどうかは綱渡りの状態にありました。「そこは休めるよ!」と言われ、新幹線やホテルまで確保していた大好きな芸人さんの単独ライブチケットを「ごめん、やっぱり休めなかったわ」の一言でお譲りに出した悲しみは忘れられませんでしたし、子供が一時保育からもらってきた様々なタイプの風邪には、この春以来、幾度となく心を折られてもいました。

「どうせ行けないもんな」と、イベント参加や展覧会、コンサートのための遠征を諦めてしまう機会も、最近では増えてきました。

家族が中堅どころで忙しいから、子供がまだ小さいから、だから今我慢すればそのうちまた行けるようになる、と頭では分かっていても、やっぱりじわじわ心を削られるんですよね。


「このチャンスを無駄にしたくない」と思った時、「せっかくだから誰かと一緒に楽しみたい」、「万が一の時は代わりに楽しんでほしい」という気持ちが強くなりました。そんな時に浮かんだのが、今年始めの岡山のZINEフェスで初めてお会いしたまりさんのことでした。

SNS上でお互いの創作活動に興味を持ち、作品を読み、同じ一箱古書店の企画に出店し、しかし一度もお目にかかったことはなかったのに、初めてお会いしてみたら、なぜだかずっと前から知り合いだったような、そんな不思議な感覚になったまりさんとの出会い。「みんなに分かってほしいけれど、簡単に分かったと思われたくない、でも、やっぱり分かられたくて」と禅問答みたいな会話で笑い合ったこと。その思い出に安心しきってお誘いしたところ、すんなりオーケーが!しかも、まりさんのご友人も一緒に参加してくださる、と。嬉しかったです。


高校時代、大学時代、そして会社員になって大分たつまで、わたしは何事も「ひとりでやる」ことに慣れっこになっていました。

高校時代は、授業が終わったら一刻も早く帰って一人になりたかったので、最終時限が終わると同時に教室を飛び出し、セーラー服にリュックサック、入学早々になくしたローファーではなくスニーカー履きで、駅まで全力疾走するのが常でした。

大学時代は、学食でお昼を一緒に食べるような関係の同級生もいたのですが、賑やかすぎてお互いの会話をはっきり聞き取れない環境で、何度も聞き返し確認しながらご飯を食べることに疲れてしまい、やがて授業にもお昼にも一人で行くようになりました。サークルもアルバイトも、一度も経験しなかった青春。

勉強すればするほど大人に認められやすくなっていったことも、極端な生活に拍車をかけていました。

「わたしは一人で生きていくからいいんだ」、「座右の銘は『独立自尊』だ」、本気でそう考えていた時期もあったのです。


そのせいで(と気付くのは大分後になってからなのですが)、友達との距離感の取り方が全く分からないまま大人になりました。最近どうしてる?と気軽に連絡を取ることも知らず、今度これ行かない?と誘うこともできず。会社員になってからは、とにかく「世間話」というものが全くできずに困りました。誰かに頼るのも下手でしたし、それどころか、抱え込まなくていいものまで抱え込む性格が、後年体調を崩して休職してしまうところまで繋がったと思います。


そんなわたしが、文学フリマに新しい仲間をお誘いしたなんて・・・!

自分でも驚きました。もちろん、まりさんはじめ、みなさんのお人柄あってこそのことだと思うのですが、自分でも知らないうちに、自分の知らない自分になっていたのですから。


会社員時代の苦い経験もあってか、わたしにはまだ、どこか「人間」を怖がっているようなところがある気がします。「全くそんな風には見えない!」という方が多いのではないかと思いますが、働いている頃に比べたら恐ろしく凪いだ日常の心地よさは、狭く苦しくはありつつも、相当に心地よいものであることを、認めざるを得ません。

久しぶりに「人間」はそんなに怖くないものだよ、楽しいものだよと感じさせてくださった茉莉亜まりさん、とし総子さん、城水めぐみさん。お隣さん同士で何度も「袖振り合」った湊圭伍さん、佐藤文香さん。そしてブースに関わってくださったみなさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。


45センチのブース幅は、四人でシェアするには正直かなり手狭でしたけれど、正面から見たわたしたちのブースは、本を開いたところのような、蝶が羽根を広げたような形をしていました。

心から、ありがとうございました。

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