好きじゃなくてもいいから嫌いにならないで
「あなたが他の人を好きでも、この気持ちはなくならない」
「私のこと、好きじゃなくてもいいから嫌いにならないでほしい」
好きです、の答えを聞くのが怖くて矢継ぎ早にそう伝えた。
* * *
この言葉は私のオリジナルではない。当時流行っていたテレビドラマ『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』のセリフだ。
ドラマの中で深キョンが言ったそのセリフを、どう控えめに言っても冴えない中学生だった私は使った。自分の告白に。
手作りのバレンタインチョコを持つ手も、口から出てくる言葉たちも、すべてが震えていた。
好きで好きで仕方なかった。
廊下ですれ違うたびに「あぁ今日もかっこいいなぁ」と、頬が緩んだ。彼のことを考えるだけで、愛おしさが込み上げて泣きそうになった。
友人に協力してもらって彼を呼び出すことに成功したその教室には、私の言葉だけが空しく響いた。
* * *
私の中学に、転校生がやってきた。小柄で、目がくりくりとした活発そうな男の子だった。
一目惚れだったんだろう、と今になれば思う。初めて見たときから、惹かれていた。
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