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悲しい時はブルーマウンテン 駄洒落で感情を補強する

帰省している。

農地の区画整理中で猛烈に雑草が生えてる
以前ここで拾ったポケモンカードが古本市場で10万円で売られていた


母から「いくら田舎でも暑いで!」と言われていたが、夕方になると丁度いいとしか言いようのない気候になる。湿度が低く、山から冷たい風が吹く。大阪の焦がされるような暑さを思い出し、あんな環境で楽しく暮らす私は本当に偉いなと思う。

先月は単発の取材と執筆がいくつかあり、とても楽しかった。いろんな人の話を聞いた。直接お話を聞いて文字起こしをすると特に、それぞれの日本語の使い方のクセのようなものが浮かび上がり面白い。

「教授とわたし、そして映画」ホン・サンス監督

韓国の俊英ホン・サンス監督が、映画学科の女生徒オッキをめぐって繰り広げられる人間模様を4部構成で描いた作品。30代の売れないアート系映画監督ジングは、大学時代の恩師ソン教授の紹介で映画学科の講師を務めている。ジングは学生だった頃、同じ映画学科に通う女生徒オッキに恋していたが、実はオッキはソン教授と関係を持っていた。ジングはそのことを知らないまま、オッキと結ばれる。やがてオッキは、ジングとソン教授との三角関係を題材にした映画を撮りはじめる。

映画.com


予告編が無かった…。映画監督や教授が生徒に手を出し不倫、三角関係、散歩して酒を呑んで話す、ホン・サンス定番の設定ずっと観ていられる。そんなこと絶対言わないほうがいい…!酒を呑みすぎている!一旦帰ったほうがいい!と思いながら観る。スクリーンを隔てると分かるのに。最後のチャプター、オッキが作った映画もおもしろい。経験を積み語彙力のある中年の方が、若者よりロマンチストであること度々ありそう。
教室での質疑応答のシーンが人生の分からないこと全てだった。
性欲をどう克服しますか?
愛さなければいけない?
なぜ人はお互いを信じないの?
賢明であるとは?
私はよい人間ですか?
楽に生きたいと思う考えをどう思いますか?

「時々、私は考える」レイチェル・ランバート監督

主演のデイジー・リドリーがプロデュースもしている。
音楽が流れてテロップが出た瞬間、これは今の私にとてもフィットしそうだ、と思った。海の近くの郊外で静かだけど、ネオンのついた映画館がある。パーティでやってた「誰にどうやって殺されたでしょうゲーム」?がとても楽しそうだった。オフィスにドーナツを差し入れするシーンも 良かったな。他人とどう付き合っていくか試行錯誤して、ほんの少しずつ成長していく様子。

「めくらやなぎと眠る女」ピエール・ピエール・フォルデス監督

違う映画を観ようと思っていたが、急遽変更して本編直前に滑り込んだ。村上春樹の短編をパッチワークのように繋げてアニメにした作品。
私は全て読んでいるわけでもないし、印象的な場面しか覚えていない。でも、かえるくんの根拠なく信頼してしまう"居て当然"のオーラや、ねじまき鳥の声、裏庭で猫を待っている場面など、本で読んだはずなのに映像で覚えているシーンの答え合わせができたようで嬉しかった。
村上春樹作品、頻繁に女が失踪するのも好きだ。
失踪したいから。
猫は戻ったし、願いも叶えられた。

「怪盗グルーのミニオン大変身」クリス・ルノー監督

魅力的なキャラクターが多すぎる。これを子供用に90分で終わらせるのは無理では。せっかく変身したアベンジャーズでありワンピースでもあるミニオン達の活躍も、過去の悪党達との関係も、引っ越し先で新しい環境に馴染もうと奮闘する子供達も、赤ちゃんとの関係も、もっと観たかったな。前後編にしてくれ。

「ばけ猫あんずちゃん」久野遥子 山下敦弘監督 いましろたかし原作

アニメという括りが無くても、今年最強だったかも。あんずちゃんを自然に受け入れる村の人も、化け猫であることに捕らわれず自由に生きるあんずちゃんも、ただの食卓シーンだけで込み上げてくるものがある。森山未來さんの声と動きを元に作られたアニメで「森山未來すぎ!」との声もSNSで見かけたが、私には完全な化け猫あんずちゃんで森山未來さんのことは忘れていた。
1秒も漏らさず全て良い。笑いながら涙が止まらなかったの、寅さんとかの映画に近いのかも。

「地面師たち」監督・脚本 大根仁

2日間で一気見。毎日少しずつより、勢いで見た方が良さそうな作品。キャストが強かった。実際にあった積水ホーム地面師詐欺事件がモチーフだが、パロディではなく複雑に事実と混ざり合っていて実際起こったことと演出が分からない。
殺すシーンをスマホで録画して興奮する地面師グループリーダー、これはフィクションで合ってる?

「BOYFRIEND」Netflixオリジナル

リョウター!
恋愛ってどうやるか、人間関係を良い状態のまま維持するにはどうすればいいか、のお手本のようだった。とても勉強になった。
最初は、好き、気になる、テンションが合わないなどの理由で相関図が揺れていた気がしたが、中盤からみんな言葉を尽くし想いを伝え合い、より良くなるようにアイデアを出して、失敗したら謝っり、明るく許す、を繰り返し猛スピードで絆を深めていた。あとめちゃくちゃデートに行きたくなる。


この1週間で集中的に観たこれらの作品に私が胸を打たれたのは共通する
愛を伝えるためには
より多くの言葉を知り、使いこなす。
そして、素直でいる。

フランのように、ありきたりな駄洒落を言ってみること
片桐のように、荒唐無稽に思えることも一旦信じること
あんずちゃんのように、いつでも聞いてあげる姿勢を示すこと、拒絶されても肩の力を抜いて諦めないこと
 


ーー愛さなければいけない?
愛なんて絶対するな
絶対しないと決意して、耐えてみろ
でも何かを愛してるよ

様々なフィルターを通し最後に残るのは
きっと痺れるような濃厚な感情だろう。

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